マニュアル人気のルノー・カングー 限定車60台発売
ルノー・ジャポンは多目的車(MPV)「カングー」の限定車「カングー オーセンティック 6MT」を60台限定で発売した。名前にあるように、6速のマニュアルシフト車だ。ベースとなるのはブラックバンパーなどが特徴のプレーンなエントリーグレード「カングー アクティフ 6MT」で、スチールのように見えるのにアルミの「クラシックアロイホイール」と、ルーフにキャリアベースを取り付けられる「マルチルーフレール」という約17万円相当の特別装備を追加しながら、税込み価格はベース車と同じ235万円だ。
また「カングー ゼン」などで標準の防塵フィルター付きオートエアコンディショナーなど高機能な装備は非搭載だが、BluetoothおよびUSB接続対応のCD付きラジオ、防塵フィルター付きマニュアルエアコン、ヒルスタートアシスト、アイドリングストップ、クルーズコントロールなどは標準装備となる。
ボディーカラーはベース車同様にグレーの「グリメタン」とホワイトの「ブランミネラル」の2色。ファブリックシートを持つインテリアの色はダークカーボン。
パワートレインもベース車同様に1.2Lターボエンジンと6速MTを組み合わせた実用性の高いもの。最高出力は115psと控えめだが、190Nmの最大トルクを2000rpmという低回転で発揮する。
ところでなぜ今回の限定車はAT車ではなくMT車なのか。理由を同社に尋ねたところ、カングーはMTが売れるからなのだという。
6速DCTが出ても約25%がMT仕様
カングーのMT仕様は常にカタログモデルに入っており、一定数のニーズがあった。そのMT人気がグッと高まったのが2014年5月、それまでは5速MTと4速ATに自然吸気の1.6L直列4気筒エンジンという組み合わせだったものが、1.2Lダウンサイジングターボに6速MTという新しいパワートレインになってから。2015年にはMT率がカングー全体の50%に迫る販売数になったというから驚かされる。
2016年、1.2LダウンサイズターボにAT感覚で運転可能な6速DCTを組み合わせたモデルが登場してからは数を減らしたが、それでもカングーの販売数の約25%がMT車だという。これはAT車主流の日本において、特にファミリカーとしては異例のことだろう。
同社の顧客調査によれば、カングーを購入したユーザーは、AT派もMT派も個性的なデザインを支持するのは共通している。ただしAT派はMPVらしい実用性や高い着座位置に注目している人が多いのに対し、MT派はクルマの走行性能を重視。クルマへのこだわりが強く、自ら自動車趣味人(エンスージアスト)だと認識している人にマニュアル派が多いという。
そこで走りを楽しめるMT仕様にフランスらしい装いを纏わせた限定車を投入することにしたという。
カングー公式ファンイベント、今年も1243台が集結
カングーはルノー・ジャポンの屋台骨であり、毎年5月には「ルノー カングー ジャンボリー」なる公式ファンイベントが開催される。今年も山中湖畔で開催された同イベントには、1243台ものカングーが集結。愛車がMT車であることをアピールする装飾を施したクルマも多く見かけられた。これほど熱烈なファンを持ち、しかもMT仕様がこれほど人気を集めるMPVは他にはない。
もちろん今回のMT仕様のオーセンティック 6MTだけでなく、AT、MT両仕様があるボディーカラーにこだわった限定車「カングー クルール」も人気だ。定期的に導入されるクルールは日本専用の限定車で、新色やカタログ非設定色の投入を楽しみにしているファンも多い。ルノー・ジャポンの年間販売台数は5000台程度と大きくはないが、フランスらしさを強調するブランディングが功を奏していると言えるだろう。
(ライター 大音安弘)
[日経トレンディネット 2017年6月20日付の記事を再構成]
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