ドコモの新料金プラン 格安SIMより安くなるケース
格安SIM最前線
NTTドコモが2017年5月に投入した、新料金プラン「シンプルプラン」。従来の通話定額プランとは違って通話料金は従量制だが、月額料金は1058円(税込み、以下同)と同社の他プランよりも安い。家族間で通信容量を分け合えるパケットパック「シェアパック」を利用しているユーザーだけが使えるプランだが、「家族全体のスマートフォン(スマホ)代を節約したい」と考えている人にとっては検討する価値はある料金設定になっている。
「一人だけ格安スマホ」を防ぐ
通話料に関して、これまでドコモは2種類の基本プランを提供してきた。国内宛ての通話料金が無料の「カケホーダイプラン(スマホ/タブ)」(以下カケホーダイプラン、月額2916円)と、各通話最初の5分間が無料の「カケホーダイライトプラン(スマホ/タブ)」(以下カケホーダイライトプラン、月額1836円)だ。
だが最近、連絡は音声ではなくメールやLINEが中心という人が増えている。音声通話もLINEの無料通話で済ませている人も多い。そういった人たちの中には、たとえカケホーダイライトプランでも「ほとんど使わない通話のために毎月1836円を支払うのは割高感がある」と考える人もいるだろう。
今回、ドコモが用意したシンプルプランは、通話料を従量制にする代わりに、月額料金を1058円とカケホーダイライトプランより778円安い料金設定を採用した。通話を従量制にして、月額料金を抑えるのは格安スマホと同じ手法だ。
ただ、ドコモのシンプルプランは利用できる人が限られる。
利用できるのは家族でドコモに契約している人たち。シンプルプランは、家族間で通信容量を分け合えるパケットパック「シェアパック」専用の基本プランなのだ。ここからシンプルプランの狙いが見えてくる。
家族全体のスマホ代を節約したいと考えた場合、家族の中で通話をほとんどしない人がいれば、その人を格安スマホへ移行させることで、家族全体の月額料金を下げることができる。ドコモはシンプルプランによって、家族内にそんな「はぐれ格安スマホ派」が生まれるのを防ごうとしているのだ。
シンプルプランと格安スマホを比較
シンプルプランと格安スマホを比較した場合、シンプルプランは本当に安いのか。「毎月30ギガバイト使う3人家族」をモデルケースとして、4パターンの月額料金を試算してみた。もちろん、家族一人ひとりが必要とする通信容量や料金割引の適用状況によって金額は異なる。一つの参考例として見てほしい。ちなみに格安スマホは、家族で通信容量を分け合える「IIJmioモバイルサービス」(以下「IIJmio」)を選んだ。
まず、夫と妻はそこそこ通話をするが、子どもはほとんど通話をしない場合で試算してみる。夫はカケホーダイライトプラン+ウルトラシェアパック30、妻はカケホーダイライトプラン、子どもがシンプルプランの場合、月額料金は2万1362円になる。
ここから子どもが1人だけ格安スマホに移行するとどうなるだろう。両親2人がカケホーダイライトプラン、子どもが格安スマホの場合は2万1880円になる。子どもがシンプルプランになったケース1よりも518円高い。
「音声通話をほとんど利用しない子どもだけ格安SIMにしよう」と考えて、一人だけ格安SIMに移るよりも、ドコモに残留してシンプルプランに切り替えたほうが、家族全体の通信コストは安くなった。
家族3人のうち2人が通話をしない場合はどうか。
下に示したのは、夫がカケホーダイライトプランで妻と子どもがシンプルプランの場合と、妻と子どもが格安スマホに乗り換えた場合。後者のほうが4000円以上安くなった。
ただ、ここで忘れてはいけないのは、シンプルプランのほうが安定した通信ができること、そして大手キャリアならではのサービスが利用できることだ。
大手キャリアのメリットも踏まえ比較を
大手キャリアに比べ、格安SIMは、利用が集中する時間帯の通信速度が遅くなる。また、記事「消費者相談から判明 格安スマホを選んではいけない人」で解説したように、キャリアメールや手厚いサポートなど、大手キャリアでは当たり前のサービスでも、格安スマホでは利用できないものがある。
両親や親戚との連絡にキャリアメールが必要という人もいるだろう。そんな大手キャリアならではのサービスを利用しながらも、家族全体のスマホ料金を抑えたいと考えている人にとって、シンプルプランは検討する価値がある料金プランといえる。
(ライター 松村武宏、イラスト 三井俊之)
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