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定年楽園への扉

若者だけじゃない iDeCo・NISAはシニアも利用価値 経済コラムニスト 大江英樹

2017/7/13

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 個人型確定拠出年金(愛称iDeCo)や少額投資非課税制度(NISA)がスタートして以降、セミナー講師をしているとたびたび質問を受けることがあります。それは「自分は50歳代だけどiDeCoはやるべきでしょうか?」あるいは「60歳からでも積み立て投資はやったほうがいいですか?」といった内容です。

 これらの制度はいずれも若い人が活用するものだと考えているのでしょう。控えめに質問してくるシニア層の人たちは、どちらかというと及び腰な感じがします。そこで、今回はこれらの制度をシニア層が活用する意味とその方法について考えてみたいと思います。

■iDeCoは70歳まで受給せず運用できる

 まずはiDeCoです。いうまでもなくこれは年金ですので60歳以降は加入できません。多くの人は60歳になると掛け金の積立期間が終了し、以後は受給者として年金をもらうフェーズに入ります。新規の積み立てはできず、「運用指図者」といって残存資産を運用するのみとなります。

 微妙なのは50歳代です。60歳までわずかの期間でも加入したほうがいいのでしょうか? 結論からいえば、私は加入しても構わないと思います。なぜなら、所得控除や運用益に対する非課税などの優遇措置はたとえ数年であっても利用できますから、加入することで少しでもプラスになる要素があるからです。

 運用期間が短いと価格変動のリスクが高いという問題がありますが、iDeCoの場合、最長は70歳まで年金を受け取らずに運用を続けることができます。ある程度の長期投資として十分活用し得ると考えていいでしょう。

 ただし、注意しなければならないのは加入期間が10年未満の場合、60歳の時点では年金を受け取ることができないという点です。例えば、加入期間が2年未満の場合は、65歳まで受給開始が延びることになりますので、この点は気を付けておく必要があります。

 一方、NISAについては年齢に制限はありませんから、60歳以降のシニア層でもおおいに利用すべきだと思います。高齢者はリスクは取らず、投資はほどほどにすべきだとよくいわれます。これはその通りともいえるし、そうではないともいえます。

 確かにまとまったお金を大きなリスクにさらすのは高齢期には避けたほうがいいと思います。退職者にとって最も恐ろしいことは、将来のインフレによって自分の持っているお金の購買力が低下することです。フローとして受け取る公的年金はある程度物価上昇への対応も可能ですが、ストックの資産については預金だけでは必ずしも十分とはいえません。ある程度投資をすることは、一定の合理性があるといっていいでしょう。

 だからといって、まとまったお金を一気に投資に回すのは避けたほうがいいでしょう。多くの人にとって、それは自分が負えるリスクの限度を超える可能性が高いからです。むしろ退職後の投資は積み立てでやったほうがいいかもしれません。私は現在65歳ですが、グローバルに分散投資できる投資信託を毎月積み立てで少しずつ購入しています。

■つみたてNISAは介護費用づくりにも

 来年から始まる積み立て型のNISAである「つみたてNISA」もシニア世代の運用として注目です。先日、あるファイナンシャルプランナーの方とお話ししていてヒントをいただいたのが、自分の介護費用づくりを目的として積み立てをするということです。

 つみたてNISAの場合、年間の積み立て上限額が40万円です。利用できる期間は20年になるようですので、元本の総額は800万円になります。仮に定年と同時に60歳から積み立てを始めたら、80歳の時点で800万円、70歳時点でも400万円です。

 生命保険文化センターの調査によれば、介護の自己負担は月額平均約8万円、年間だと100万円弱となります。介護期間の平均年数は5年弱だそうですから、500万円程度を準備しておけばおおむねカバーできるということになります。介護費用づくりは通常のNISAでももちろんできるテーマです。

 iDeCoやNISAはどちらかといえば若い人の資産形成に向いた制度と思われがちです。しかし、シニア層にとっても利用価値があると知っておくべきでしょう。

「定年楽園への扉」は隔週木曜更新です。次回は7月27日付の予定です。
大江英樹
 野村証券で確定拠出年金加入者40万人以上の投資教育に携わる。退職後の2012年にオフィス・リベルタスを設立。著書に「定年男子 定年女子 45歳から始める「金持ち老後」入門!」(共著、日経BP)など。http://www.officelibertas.co.jp/

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