MEN'S FASHION

リーダーが語る 仕事の装い

ニュースがカジュアル化、だからタイは外さなかった フリーアナウンサー 古舘伊知郎氏(中)

2017/7/30

 「ネクタイを取らなかったのは、実直にニュースを伝えたかったから。自分のキャラクターなんか関係なく、おもしろいこと言わなくていいから。実直に強い思いを伝えたいときに、ファッションというのは強いメッセージですよ。ファッションは哲学だと思うし、武装する鎧(よろい)、甲冑(かっちゅう)なんだ。内側のアイデンティティーを外部化したものがファッションだと思う。実直なニュース、イコール、ネクタイです」

 「ダークスーツにも渋い極め方がありますよね。ただし(イタリア高級ブランドの)ブリオーニなんかで出ようものならえらいことですからね。『なんでおしゃれなスーツ着てるんだ』って。ファッション好きな人はオーダーにいくけど、番組ではオーダースーツを1回も着ませんでした。立って大きなパネルを説明する時に、しわの寄り方が違います。オーダーはいい意味で自分の第2の皮膚みたいで、体にまとわりついてくるんです」

大好きなアンティーク時計も報道キャスター時代は封印したという

 「お仕着せだとスーツに引っ張られて、よれそうになる。指し棒を持って『ご覧ください。こちらがイランとイラクの国境線ということになるんですが』と言ったときに、合わないスーツだと、肩口ががきつくて引っ張られる。プロとしてこれはだめです」

 「価格帯でいったら『国内のこのくらいからイタリアや英国製のこの程度まで』と大まかな目安はあります。悲しいニュースばかり伝えているんですからね。最高に着心地の良いスーツも、服に着せられているようなのもだめです。ちょうど真ん中あたりです」

 「時計もそうです。アンティークが好きです。最初の頃は、番組の内容や自分のファッションに合わせていろいろと選んでました。高いものではないんですよ。でも、やはり視聴者から意見がくる。途中から目立つ時計はやめました」

■唯一のお洒落、ポケットチーフは震災で外した

 ――東日本大震災をきっかけに、ファッションを変えたそうですね。

 「はい、ポケットチーフを外しました。それまでダークスーツに白いシャツで、唯一のポイントはチーフ。これはダークスーツに身を包んだサラリーマンの一輪の花だと思うんです。究極をいえば胸にバラの花を挿してもいい。ハンカチをシュッと入れるのは、女性のブローチじゃないけど胸元の一点豪華主義。それにはずいぶんこだわっていた」

 「だけど、東日本大震災は僕にとって非常に重い出来事だった。災害や事故でこの人が旅立たれたとか、ご遺族もご本人も悲しみはいかばかりかといったときに、自然と黒いネクタイしてるでしょう。それはその人の思いじゃないですか」

 「真摯に向き合うなら、お悔やみを示すときにネクタイしないできてもいいし、してもいいし。自然と数珠を持ってくる人がいて、それはそれでいいじゃないですか。そういう自分の気持ちを表現したかったから大震災後はポケットチーフを外したんです」

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