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結婚500万円、出産50万円 晩婚・晩産で費用は増加 ライフイベントとお金(1)

2017/7/9

PIXTA

 夕食後の筧家のダイニングテーブル。ファイナンシャルプランナー(FP)の幸子が仕事でキャッシュフロー表を作っていると、恵が友人の結婚式から帰ってきました。引き菓子のバウムクーヘンにお茶の準備を始めると、良男もめざとくそこへやって来て――。

  すてきなウエディングドレスだったな。式はおしゃれなチャペルでね。流行のベールダウンもしていたよ。

 幸子 花嫁のベールを母親が下ろして式に送り出す儀式ね。恵の式でも私がベールダウンをしてあげて、パパと一緒にバージンロードを歩くのかな。

 良男 ううっ、想像しただけで涙が出てきた。

  私はもうちょっと先かな。まだ貯金も少ないし。

 幸子 FPとして言っておきたいのは、長い人生にはお金のためどきや支出がかさむ時期、蓄えを取り崩して生活するときがあるということ。いつどんなイベントがあり、お金の出入りがどれぐらいあるか考えておけば、計画的な家計の運営ができるのよ。結婚はその最初のイベント。貯金も含めてしっかり準備して臨んでほしいわ。

  結婚すれば、やがて出産、育児、そしてマイホームね。

 良男 結婚式って、いったいいくらかかるんだ?

 幸子 リクルートマーケティングパートナーズ(東京・中央)の結婚情報誌「ゼクシィ」の「結婚トレンド調査2016 首都圏」によると、結婚式と披露宴・パーティーの費用の平均は385.5万円。結納や新婚旅行など前後のイベントも含めると500.4万円だったわ。調査をまとめたリクルートブライダル総研の鈴木直樹所長によると、総額で500万円を超えたのは調査を始めた1994年以降、初めてだそうよ。

 良男 500万円! 以前は「地味婚」なんて言葉がはやったけど、今や遠い昔か。

  最近のトレンドは「ありのまま婚」というらしいの。決まった形はなく自分たちの価値観に沿ったスタイルでやりたいようにやる。豪華にやる人はお金をかけるけど、一方であまりお金をかけない人もいるわ。金額の裾野が広がって、結果として平均も上がったのね。

 良男 結構詳しいじゃないか、恵。もしかして決まった相手がいるんじゃないか?

  それは内緒。私もベールダウンだけじゃなく、映像の演出や、新郎新婦がケーキを食べさせ合うファーストバイトもやりたいな。パパには手紙を読んで花束贈呈もしてあげる。

筧幸子(かけい・さちこ、48=上) 良男の妻。ファイナンシャルプランナー資格を持ち、家計について相談業務を手掛ける。 筧良男(かけい・よしお、52=中) 機械メーカー勤務。家計や資産運用は基本的に妻任せ。最近、親の相続が気になり始めた。 筧恵(かけい・めぐみ、25) 娘。旅行会社に勤める社会人3年目。自分磨きと"コスパ"にはかなりこだわっている。

 幸子 それはさておき、結婚費用は地域によってばらつきもあるの。例えば、披露宴の会費制が一般的な北海道は286万円と、首都圏の6割弱。16年は首都圏が最も高かったけど、以前は豪華結婚式で知られる名古屋を含む東海地域が首都圏を上回ったこともあったのよ。

 良男 ふ~む。出身地で相手を選ぶのも妙案だな。

 幸子 いずれにしても費用は増加傾向。それに新生活の準備に家具や家電を買うお金も必要よ。こちらは以前より減っていて「必要額は70万円程度」(鈴木所長)。結婚式やその前後のイベントと合計すると570万円程度になるわ。誰もがこれだけ必要というわけではないけど、かなりの出費が見込まれるわね。結婚資金の3本柱は2人の貯金と親・親族の援助、参加者のご祝儀といわれているの。ちなみに貯金の平均は331.2万円よ。

  えっ、そんなに……。そのときは援助をよろしくね。

 幸子 無理をしてブライダルローンを借りる人もいるけど、やはり返済の必要のないお金で賄いたいわね。親・親族の援助の平均は194.5万円。これは両家の合計だから、一方なら単純計算で約100万円。うちは満の教育費もかかるし、老後資金の準備もこれからが本番だけど、恵の結婚のときにはできるだけのことはしてあげたいわ。パパも頑張って長く働かなきゃね。結婚の次には孫の世話という役目が待ってますから。

 良男 えっ、ま、孫!?

 幸子 結婚の次のイベントは出産よ。出産にいくらかかるかというと、入院料・分娩料を中心に全国平均は16年度で約50万円。最高の東京都で約62万円、最も低い鳥取県で約39万円とこれも地域差が大きいの。ただ、子ども1人につき加入している健康保険から出産育児一時金が42万円出ることに加え、妊婦検診費なども最寄りの自治体から助成があるわ。働く女性なら、産休期間中に健保組合などから出産手当金も支給されるの。

  出産のときも100万円ぐらい用意しないといけないかと思っていたけど、自己負担は少なくて済みそうね。

 良男 中には全室個室や豪華な食事のセレブな病院で産む人もいると聞いたぞ。

 幸子 万が一のトラブルに備えて大きな病院で出産したいという人もいるわ。そういう病院を選ぶと自己負担が膨らむ可能性があるの。また、出産前後には妊婦用の服や赤ちゃんのグッズ、ベビーベッドやベビーカーといった関連の出費も見込まれるわ。「出産の自己負担も考慮して、50万円ぐらい用意しておくのが安心」(FPの氏家祥美さん)だそうよ。近年は晩婚化もあって、1人目の子どもは早くほしいというカップルが増えているらしいわ。というわけで、パパ、頼んだわよ!

 良男 おいおい、私はそんなに早くおじいちゃんになるつもりはないからな。

■親は資金援助の準備を
 ファイナンシャルプランナー 氏家祥美さん
 晩婚・晩産が進み、一般にライフイベントにかける金額は増えています。結婚で無理をすると、出産や育児、入学や進学、住宅購入などに響きます。以前は結婚から第1子の出産まで間隔があって、お金のためどきだったのですが、今はイベントが集中し、ためる期間がほとんどない人もいます。自分たちで賄える範囲で式を挙げ、披露宴などでもらったご祝儀(2016年の平均は232万円)はその後の新生活の資金に充てるのが理想です。
 結婚資金は男女とも毎月決まった額を積み立てて準備します。就職したら自宅暮らしは手取り収入の2割、ひとり暮らしなら同じく1割などと決めて備えましょう。近年は親の資金援助も一般的です。年ごろの息子や娘を持つ親御さんなら、まとまった金額をあらかじめ準備しておきたいものです。
(聞き手は土井誠司)

[日本経済新聞夕刊2017年7月5日付]

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