■副腎ケアのため、なるべく避けたい食材
(1)グルテン、カゼイン
龍介副院長によると、副腎ケアのためには体内の炎症を減らすことが大切。そして、腸の粘膜の炎症の引き金になりやすい食品成分の代表的なものが、グルテンやカゼインだという。
グルテンは小麦や大麦、ライ麦などに含まれ、カゼインは乳製品に含まれる。副腎疲労の患者にはグルテンやカゼインに過敏な人が多く、そうした人がこれらの成分をとると小腸の粘膜が炎症を起こすことがある。その場合、グルテンやカゼインを避ける「グルテンフリー」「カゼインフリー」といった食事法を実践することで、体の炎症を減らし、副腎への負担を軽くできるという。
ただ、グルテンフリーやカゼインフリーについては、多くの場合、小麦や乳製品など特定の食品をばっさり抜くことになるため、栄養バランスの偏りを招きやすいとの指摘もある。自己判断で行うのではなく、必ず医師の指導のもと行う必要がある(グルテンフリーについては「最近よく聞く「グルテンフリー」の食事法 何にいい?」もご覧ください)。
(2)カフェイン
最近は健康にいいと注目を集めているコーヒーだが、カフェインには副腎を刺激してコルチゾールの分泌を促す働きがあるため、とり過ぎは副腎の負担になる。本間夫妻はカフェイン入りのコーヒーは避け、肝臓に負担をかけるアルコールも週末に1~2杯程度に控えているという。
「健康な人は朝にコルチゾールが最も多く分泌されますが、副腎疲労の患者の場合、コルチゾールを分泌する力が弱っているため、朝からずっとコーヒーが手放せない人が多い。カフェインをとると一時的に元気になるからです。でも、効果が切れるとコルチゾールの出が悪くなり、逆に疲労感にさいなまれてしまいます。どうしてもコーヒーを飲みたければ量を減らしたり、1杯をお湯で薄くして分けて飲むといいでしょう」(龍介副院長)
(3)血糖値を急上昇させる甘い菓子など

おなかが減ったら間食はしてもOK。ただし、急激に血糖値を上げる甘いお菓子や炭水化物を間食にとることは極力控えたほうがいいそうだ。また、副腎が疲れていると消化・吸収機能が低下するため、一度にたくさん食べずに少しずつ分けて食べるのがお勧めだという。
「血糖値が急上昇すると血中のインスリンが急激に増える。すると血糖を安定させるため、副腎ではコルチゾールのほか、アドレナリンやノルアドレナリンなどのホルモンが大量に消費され、副腎疲労を進行させてしまう。またお菓子や炭水化物をとると、リラックス効果のあるセロトニンが分泌される。副腎疲労の人は感情が落ち込んでいるので、お菓子を食べると幸福感を感じやすく癖になりやすい。空腹を感じたら、果物やナッツなど血糖値が上がりにくいものをつまむといいし、どうしてもの場合は、和菓子ならOKです」(龍介副院長)
(4)添加物や化学合成物質
農薬使用や遺伝子組み換えのもの、添加物、化学合成物質などを含む食べ物は、副腎に負担をかける恐れがあるため避けている、という本間夫妻。ソーセージ、ハムなどの加工食品、ジャンクフード、スナック菓子なども控えているという。
すべての人に当てはまる正解の食べ物はない
以上、副腎ケアのための食品選びについて教えてもらったが、「すべての人に当てはまる正解の食材はないことも、知っておいてください」と本間夫妻は強調する。
「例えば、胃腸が弱くて便秘や下痢を繰り返している人は、たんぱく質は控えめにしたほうがいいし、逆に消化器官が丈夫な人なら、朝から肉という選択肢もあります。我が家でも、夫と子どもは朝から肉や雑穀米を食べますが、私は炭水化物をとると低血糖症を起こしやすいので、朝はシラスをのせた冷や奴にサラダ、果物といった内容。ご飯を食べないようにしています。世の中で良いといわれているものや、ある人にとって良いものが、自分にも良いとは限りません。盲信せずに自分の体調や体質に合わせてとることが大切です」(良子院長)
もう一つ、「がんばり過ぎず、何事も60点を目指すこと」も大事なポイントだと本間夫妻は話す。
「日本人はきちょうめんで真面目、がんばり過ぎの人が多い。副腎疲労研究の第一人者であるウィルソン博士も、『サムライ魂は副腎疲労そのものだ』と言っていましたが、完璧主義も度を過ぎると心身の負担になります。がんばり過ぎで体をこわして薬を買うよりも、シンプルな生活を心がけるほうがいい。副腎ケアにしても、世の中には良いとされる食品や、薬やサプリが溢れていますが、まずはあれもこれもと『足す』のではなく、余計なものを『引く』生活を意識してみてほしい」と龍介副院長は提案する。


(ライター 渡辺満樹子)