何をしても疲れが取れない、気力や体力が出ない。でも、健康診断の数値に異常はない……。そんな人は、ストレス過多による「副腎疲労」の可能性もある。副腎疲労の専門家である本間良子院長・龍介副院長夫妻は「食生活を少し変えることで副腎が元気になり、症状が回復することも珍しくない」と言う。本間夫妻も実践する、副腎を元気にする食事法について聞いた。
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取材当日、午前の診察を終えて明るい笑顔で撮影現場に現れた本間良子院長・龍介副院長夫妻。そのはつらつとした姿からは想像できないが、龍介副院長は学生時代からつい6年ほど前まで、時折原因不明の疲労感や気分の落ち込みに悩まされ、ベッドから起き上がれないほどの状態になることも何度かあったという。

いくつもの病院に通って、検査を受けたが、数値に異常はなし。うつ病と診断されたこともあったが、抗うつ剤はまったく効かず、症状は悪化するばかり……。そんなどん底の状態の中で知ったのが、米国人医師、ジェームズ・L・ウィルソン博士が治療・研究に携わる「副腎疲労(=アドレナル・ファティーグ)」だった。
その著書には、ストレスの強い仕事や生活習慣、偏った食習慣など、様々なストレスの積み重ねが副腎疲労の原因になることが多いと書かれてあり、夫妻は、龍介副院長の状態はまさにこれにあたると確信したという。その後、治療により、症状は徐々に回復。副腎疲労に苦しんだ経験を生かし、本間夫妻は2005年、川崎市に日本初の副腎疲労外来があるスクエアクリニックを開業した。
副腎疲労は「万病のもと」
副腎とは、左右の腎臓の上部にあるホルモン分泌器官。ストレスに対処するホルモン「コルチゾール」をはじめ、生命の維持に欠かせない様々なホルモンを分泌する器官だ。
「ここでいうストレスには、精神的なストレスだけでなく、大気汚染や食品の添加物、気温の変化、食生活の変化、持病や感染症など、体内で炎症を起こす恐れのあるもの全てが含まれます。ストレスが多く、コルチゾールが過剰に分泌される状態が続くと、副腎が疲れて必要なときに十分な量を分泌できなくなり、ストレスと闘えなくなる。この状態を『副腎疲労(アドレナル・ファティーグ)』と呼びます。正式な病名ではなく、欧米や日本のような先進国でもまだ多くの医師が認識していない病気ですが、副腎疲労になると、炎症を抑えられず疲労感や様々な不調が出やすくなります」(良子院長)
例えば、副腎から分泌されるコルチゾールは血糖値や血圧のコントロール、免疫機能や神経系のサポートをつかさどるため、副腎疲労を起こして分泌がうまくいかなくなると、生活習慣病やうつ症状、花粉症などのアレルギー症状、橋本病やバセドウ病などの自己免疫疾患を発症することもあるという。
また副腎は、やる気を高めて生理作用をコントロールするアドレナリンやドーパミン、性ホルモンなども分泌するため、副腎の不調は性欲の後退、女性ではPMS(月経前症候群)や更年期障害などの症状にもつながるという。「米国の抗加齢医学会では副腎疲労は『万病のもと』といわれ、甲状腺の病気や感染症、喘息、うつ病、糖尿病、高血圧など様々な疾患を治療するにあたり、まず副腎疲労の治療を優先的に行うよう指導しています。副腎を疲れさせないようにすることは、体のベースを整え、パフォーマンスを高めることにつながると考えられています」(龍介副院長)
食生活の改善がカギ
では、副腎を疲れさせないようにするにはどうすればよいのか? 「副腎から分泌されるホルモンの材料となるのは『食べ物』。そのため、副腎に良い食べ物を選んでとると同時に、負担がかかるものは避けることが大切です」と龍介副院長。以下に、副腎ケアのために積極的にとりたい食材と、避けたい食材を紹介する。