「子どものほうが蚊に刺されやすい」ウソ・ホント?
この記事では、今知っておきたい健康や医療の知識をQ&A形式で紹介します。ぜひ、今日からのセルフケアにお役立てください。
(1)ホント
(2)ウソ
正解は、(1)ホント です。
夏といえば「蚊」。うっかり刺された後のかゆみは本当に不快です。寝苦しい夜に、耳元でうるさく鳴り響く羽音に起こされた人も少なくないでしょう。よく血液型によって蚊の刺されやすさが違うなどと話題になりますが、蚊は人を選んで吸血しているのでしょうか?
蚊の生態に詳しい国立感染症研究所・昆虫医科学部主任研究官の津田良夫さんは、「蚊は様々なセンサーを使って、血を吸うか判断しています」と話します。
血を吸うのはメスだけ、1回の吸血で体重が2~3倍に
そもそも、蚊はなぜ人間などの動物を刺して、血を吸うのでしょうか。
「たんぱく質などの養分から卵をつくるためです。したがって、血を吸うのはメスだけで、オスは花の蜜や果実の汁などの糖分を摂取してエネルギー源としています」(津田さん)
津田先生によると、蚊は1回の吸血で、体重が2~3倍になるそうです。「うまく血管を刺してスムーズに吸血できると20~30秒程度、刺す場所や血液の出が悪いと数分間とまっていることもあります」(津田さん)
「血を十分に吸ってお腹が一杯になると、消化して卵をつくるまでの3日ほどは、動物に見向きもしなくなります。その後、4~5日で卵を産んだ途端に、また血を吸うようになります」(津田さん)
多くの蚊が使うのが、二酸化炭素ガスのセンサー
蚊は、どうやって人の存在に気付き、近づくのでしょうか。視覚だけに頼っていると暗闇では分からなくなりますし、聴覚だけを頼りにしていると騒がしい場所では分からなくなります。ですから、いろいろな状況に対応するため、様々なセンサーを使っているのだと津田さんは説明します。
「長距離では二酸化炭素を感知するセンサーや、気圧のセンサー、視覚、聴覚などを使って、あのあたりに吸血源動物がいそうだなと感知します。吸血源に近づいたときには、体から発散される熱やにおいのセンサーなどが使われ、皮膚に乗ったときには、汗に含まれる水分や化学物質、体温や湿度などのセンサーが使われます。蚊はこうした様々なセンサーを使って、吸血すべきかどうかを判断しているようです」(津田さん)
よく、蚊は人間の体温や、体が発する二酸化炭素などを感知して近づくという話を聞きますが、これは本当だったわけです。中でも、「多くの蚊が使っているのが、二酸化炭素ガスのセンサーです。感度は蚊の種類によって違うようで、人をよく刺すヒトスジシマカは、人の周囲3~6メートル程度でも感知できるといわれています」(津田さん)
血を吸う蚊は好みの血液型がある?
では、どんな人が多く刺されやすいのでしょうか。実際、同じ場所にいても、「蚊にたくさん刺される人」と「ほとんど刺されない人」がいると感じる人は多いでしょう。津田さんによると、「大人よりも子どものほうが刺されやすい」そうです。それは「子どもは新陳代謝が活発で、汗をかき、体温が高いなど、蚊が感知しやすいサインが皮膚から多く出ているためと考えられます」(津田さん)。また津田さんは、これまでの自身の調査経験から、男性よりも女性のほうが刺されやすいと考えているそうです。
また、「O型の人は刺されやすい?」などといわれますが、実際はどうなのでしょうか。
津田さんによると、「それが正しいとも、間違っているとも一概にはいえない」のだそうです。「どういう状況で、どのように調べたかによって、結果が異なってくるためです。例えば、血液型による違いがあったとしても、年齢や性別といった違った要素も入ってくると、どの要素を蚊が重視しているか分かりません。血液型によって蚊を誘引する力が違うという論文が発表されたこともありますが、その後、分析方法に誤りがあったと訂正する論文も出されています」(津田さん)
[日経Gooday 2017年6月26日付記事を再構成]
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