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カンガルー肉、赤身のアスリート系 高たんぱく低脂肪

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NIKKEI STYLE

「クラッシックなナポリタンって、ソーセージが入っているでしょ。そのイメージでゴロゴロと肉を入れてみたんです」。

オーストラリア・ニュージーランドワイン専門ダイニングの草分けとして知られる東京・渋谷の「ZOOGUNZOO(ズーガンズー) 渋谷店」。この店のメニューにちょっと変わったナポリタンを発見した。「作り方は普通のナポリタンと一緒ですよ」と先の説明を始めた総料理長の米澤茂樹さんは笑顔を見せるが、皿に盛られたナポリタンに使われていたのはカンガルーの肉だ。

フォークでくるくるっと軟らかめにゆでられたスパゲティを巻きながら食べてみると、なつかしいケチャップ味のソースとも相性がいい、牛肉のような味わいが口に広がった。ほどよく食感がしっかりした肉は食べでがある。大人のナポリタンだ。

今、カンガルー肉の人気が高まっている。ジビエや肉バルなど「肉食」人気の中で新しい肉が求められる中、低脂質、高たんぱく質の赤身肉であるカンガルー肉に注目が集まっているのだ。オーストラリアの有名シェフが使い始めたことから現地で注目を浴びるようになったこの肉は、元々は先住民アボリジニの伝統的な食材。食生活が西洋化した結果増加したアボリジニの生活習慣病が問題となる中、アボリジニの伝統食が見直されたことも、カンガルー肉が食用として広まるきっかけとなった。

食用となるカンガルーは野生のカンガルー。約60種のうち5種が食用となり、4種が商業的に輸出されている。カンガルーというのはオーストラリア大陸やタスマニア島、ニューギニア島に分布する動物で、最初に食用の話を聞いた時は「保護動物ではないの?」と思った。

しかし、カンガルー肉輸入大手バセルの常務取締役・長友隼人エリックさんによれば、天敵となる動物が絶滅寸前の状態に追い込まれたことやこれを食料としていたアボリジニの人口減、干ばつ時には繁殖しなくなる習性を持つカンガルーが農業用灌漑の整備で常に繁殖するようになったことから、オーストラリアでは頭数が増加。今は政府が捕獲頭数をコントロールしながら食用に利用しているという。肉は約70カ国に輸出され、ドイツ、ベルギーなどが主な輸出先だ。

「カンガルー肉は1980年代にも日本に輸入されましたが、事業者が肉質管理を徹底するようになり飛躍的においしくなったのは最近のこと」と長友さんは説明する。「地元オーストラリアで、広く食べられるようになったのは2000年以降。今ではスーパーマーケットにも並ぶ食材です」。日本ではこの2、3年で急激にニーズが伸び、バセルが取引する飲食店は14年の約15店から今年は現時点で100店を超えるまでになった。

カンガルー肉は、今年に入ってから女性誌でも次々に話題の食材として取り上げるようになっている。首都圏を中心に全国で人気カフェダイニングを運営するエスエルディー(東京・渋谷)では、今年7月5日から9月中旬までの期間限定で、女性客の多い傘下の「kawara(カワラ) CAFE&DINING」と「atari(アタリ) CAFE&DINING」の全26店舗で、カンガルー肉を使ったメニューの提供を始めた。

提供ラインアップには、定食の肉じゃがや、ヤムウンセン、クリームリゾットなど、和食からエスニック、洋食まで全11品ものカンガルー肉料理が並ぶ(提供料理は店によって異なる)。「鴨や鹿のようにクセがある肉かと思っていたら、カンガルーはクセがなく調理しやすかった。赤身なのに筋っぽさや硬さがない肉で牛肉に近いため、メニューの幅が広がりました」(広報・IR部の安本菜緒子さん)。

エスエルディーがカンガルー肉に目を付けたのは、健康を意識したメニュー開発を考えていたためだ。バセルによれば、カンガルー肉に含まれる脂質はどの部位でも1~2%。脂質の少ない和牛ヒレ(赤肉)は15%、若鶏ムネ肉(皮なし)でも1.9%だから、いかにこの肉の脂質が少ないかが分かる。一方、たんぱく質も23.6%と和牛ヒレの19.1%、若鶏ムネ肉の23.3%を上回る(和牛、若鶏の数値はいずれも「日本食品標準成分表(第7訂)」を基に算出)。

レストラン運営のバルニバービ(大阪市)と鹿屋体育大学が手を組み、同大の講師が監修した健康メニューが売りの「鹿屋アスリート食堂 本店」(東京・千代田)では、14年のオープン時からカンガルー肉を使ったハンバーグをメニューの一つとして取り入れている。

ハンバーグは毎月アレンジを変えながら出しているが、常に上位人気。当初は1日10食限定のメニューだったが、「最初は恐る恐る頼む人も多かったのですが、開店して1週間もすると店がオープンして30分で売り切れるようになった」(バルニバービ広報・藤井菜央さん)と、半年後には限定を解除。

アレンジにより増減はあるものの、現在1日200人ほどの客が訪れる同店で平均4人に1人はカンガルー肉ハンバーグを頼むというほど人気だという。皇居に近く、ランナー向けの施設を併設する店であるため、特に30代男性やランナーの人気が高い。 

「鹿屋アスリート食堂 本店」に常駐する管理栄養士・畠山綾菜さんは、カンガルー肉は脂質の代謝を助ける働きがある共役リノール酸が多く含まれることも人気の理由として挙げる。体脂肪の燃焼や筋肉増強効果が期待される成分であるといい、「近くの高校の運動部の学生さんも食べにきてくれるんですよ」と嬉しそう。

また、バセルの長友さんによればプロスポーツ選手にも注目されており、プロバスケットボールBリーグや山岳マラソンの選手なども、体作りのためにカンガルー肉を食事メニューに取り入れているそうだ。

では、この健康的な肉はどんな食べ方をすると最もおいしいのだろう。個人的にはナポリタンはかなりおいしいと思ったが、「やはり、肉をストレートに味わえるステーキですね」とは「ZOOGUNZOO」の米澤さん。部位で言うと一番は、最も肉質が軟らかいランプだという。ランプとは腰と脚をつなぐ部位のことだ。ひと蹴りで約10メートルもの距離を飛ぶらしい発達したカンガルーの下半身が頭に浮かんだ。

「焼き過ぎるとおいしくないんです」という米澤さんがステーキを焼くところを見ていると、本当にさっと火が通る程度の絶妙なレア加減に焼き上げていた。合わせるのは赤ワインとイチジクのソース。乾燥イチジクを白ワインで煮くずしてから赤ワインに混ぜ込んだものだ。とろりとした甘めのソースが、さっぱりとした赤身の肉によく合う。

「僕は牛肉とカンガルー肉だったら、迷いなくカンガルー肉の方が好きです」との米澤さんの言葉に驚いたが、牛肉のグリルもメニューにラインアップする中、「ZOOGUNZOO 渋谷店」では圧倒的にカンガルー肉を頼むお客が多いそうだ。

「これはもう少し、肉の味わいが出るようにしたいんですよね」。最後に米澤さんは、変わった一品を出してくれた。カンガルー肉の自家製ジャーキーだ。しょうゆベースの自家製調味料に漬け込んだソフトジャーキーで、日本酒にも合いそうな味。ビーフジャーキーなどは脂っぽい印象があるのだが、カンガルー肉はジャーキーもさっぱりとしていて、脂に邪魔されない肉そのものを楽しめると感じた。

この2、3年、オーストラリアでは、アカカンガルー、ハイイロカンガルー、クロカンガルーなどとカンガルーの種類別に肉を分けて出荷する取り組みも始まっているらしい。マイルドな風味のアカカンガルー、コクのあるハイイロ、ハーブ風味のクロと、それぞれ味わいが異なるという。「うちでも入荷次第で今、アカカンガルーのステーキを出しているんですよ」と後日、米澤さんに聞いた。「絶対に食べてみたい」とまた一つ食への欲が生まれた。

(フリーライター メレンダ千春)

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