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キャリアの原点

「俺でも簡単に作れる家具」石巻多国籍チームでDIY 石巻工房 代表取締役・工房長 千葉隆博氏(下)

2017/7/13

その頃はまだ、東京にいる建築家やデザイナーが仕事を受けて、その発注に基づいて私が作るという体制でした。年を追うごとに1人、2人とスタッフが増え、今、工房は5人体制で家具を作っています。デザインに関しては、今もプロの協力を得て、「それはできない」「ここはもっとこうした方がいい」などと、お互いに意見交換しながら作り上げています。

■いいデザインには課題を解決する力がある

最初の頃は、いいデザインと悪いデザインの違いもよくわかりませんでした。ハーマンミラーの社是に「デザインは問題を解決する方法だ」という文言があるのですが、「それって、どういう意味だろう?」と首をひねっていた。最近ようやく、もしかするとこういうことかなというのが、わかってきました。

私もこの仕事を始めてから知ったのですが、DIYはもともと第2次世界大戦で被害を受けた英国のロンドン市民が、自分たちが必要なものを自分たちの手で作ろうと始めた運動だったそうです。その精神に基づけば、そこにあるモノ、ある道具で、誰でも簡単に作れるものでなくてはならない。なおかつ丈夫で機能的に作るとしたら、そこにはやはりデザインが必要になってきます。

「なんの変哲もない椅子に見えるが、じつはすごくデザインされている」と話す石巻工房の千葉氏

たとえば、このスツール。2種類の規格材を組み合わせて作っただけの、なんの変哲もない椅子に見えるのですが、じつはすごくデザインされています。安定した脚の角度をつけるために木材の端を67.5度に切っているのですが、分度器もない現場でそれをどうやって切ると思いますか?

じつは紙を使います。一枚の紙の角を半分に折ると45度になり、それをまた半分に折ると22.5度になる。90度から22.5度を引くと、ちょうど67.5度になる。これさえ知っておけば、分度器がなくても木材に墨を引きちょうどいい角度に切ることができます。

それだけではありません。床はふつう細かな凹凸がありますから、椅子を置いただけではガタついてしまうのですが、この椅子は座るとまったくガタつかない。脚の部分のしなりを計算して設計されているからです。つまり、これが「デザインされている」ということなのです。

■「復興支援」には限度がある。デザインの力で世界へ

最近、うちが発売した「AA STOOL(エーエー・スツール)」という商品があります。横にスタッキングできるし、天板と組み合わせるとテーブルとしても使える、ちょっと便利で面白い商品ですが、これなどはイギリスやフランスに持って行くと、すごく評判がいいのです。ただし、反応には地域差もある。ドイツの場合、ベルリンの展示会に持って行くと「うわあ何これ? 今すぐ欲しい!」と言ってくれるお客さんが多いのですが、フランクフルトの展示会ではそれほどでもない。

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