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石巻工房(宮城県石巻市)には2011年の発足当初から、東京で活躍する建築家やデザイナーたちも関わっている。設計やデザインのプロである彼らと工房長である千葉隆博氏とのやりとりの中から、武骨だが使いやすい商品が生まれている。もともと家具作りの素人だった千葉氏は、実際に手を動かしながらモノを作ることで「デザイン」の重要性を知った。多国籍企業の研修でマネジャークラスを相手に家具作りのワークショップを開くこともあるという。

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石巻工房は2011年、沿岸部の津波による被害が大きかった地域で誕生しました。生活に必要なものが何もかも足りない上に、大工も少なくて、東京から支援に来ていた建築家やデザイナーたちと一緒に、最初は商店街の一角で、必要な家具を自分たちで作る場としてスタートしたのです。

石巻では例年、夏になると川開きのイベントをしていますが、ある日、そのイベントに合わせて野外上映会を開こうという企画が持ち上がった。野外だから、座るものが必要じゃないですか。それで地元工業高校の生徒さんたちと一緒に、我々がベンチを作ることになったんです。そのベンチが後に看板商品の「石巻ベンチ」へと発展していくわけですが、当時はまだ、そんなおおごとになるとは思っていませんでした。

米家具メーカー「ハーマンミラー」の職人がまいた復興のタネ

イベントが終わってしばらくしてのことでした。今度は世界的に有名な米国の家具メーカー、ハーマンミラーが職人を15人引き連れて、石巻へやってきた。私も含めて、当時は誰も「ハーマンミラー」なんて聞いたこともなく、「あの外国人さんたちは何者だ?」「有名な家具メーカーの職人さんらしいよ」「へえ、そうなんだ」なんて話していました。

石巻に滞在している間、彼らは家具作りのワークショップを開いていた。おもしろそうだなと思い、私もちょくちょく、そのワークショップをのぞいていたのです。

さすがだなと思ったのは、その手法です。彼らは被災者に家具をあげるのではなく、作り方を教えた。巻き込み方もうまかった。ふつうに家具を作るから集まってよ、ではなく、ビス1本でも入れる作業を手伝ってくれたら出来上がった家具を差し上げます、手伝わなかったら500円で売ります、と。そうしたら、みんな手伝うわけです。その際に家具の構造はこうなっていて、電動工具の使い方はこうだよと説明すれば、みんな覚える。そうやって、DIY( Do it Yourself=必要なものは自分たちで作ろう)のタネをまいていったのです。

「あれと同じものが欲しい」と少しずつ注文が

ワークショップの様子は報道もされましたから、それを見た関東のお客さんから「あれと同じ家具が欲しい」という問い合わせも、ちょこちょこ入るようになりました。彼らがいなくなった後、場所も道具も残っていたわけです。先のベンチを作った関係で、私がその工房の管理人がてら、注文を受けた家具を作ることになりました。

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