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労働生産性の向上へ 定年なくし雇用慣行改善 ダイバーシティ進化論(出口治明)

2017/7/8 日本経済新聞 朝刊

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6月の株主総会で、ライフネット生命の会長を退任した。還暦を前に起業を決意し、準備会社を設立してから10年。次の10年の陣頭指揮は30~40代の若い世代に任せたほうがいいと考えた。僕も古希を迎えた。気力は変わらないと思っているが体力の変化は感じる。先発完投がしんどくなったら、マウンドは若い世代に任せるべきだ。身を引いてコーチやバッティングピッチャーのように後陣に回りチームを支えよう――。今年の正月、そう決意した。

役職にとらわれず、そのときの体力や能力に見合った仕事で組織に貢献する。それが自然な形だと思う。だが年功序列の日本企業ではそうはいかない。役職が一つ下がっただけで、本人も周囲も人としての価値が落ちたと捉えがちだ。序列を乱す登用も極端に嫌う。しかし、有能な若手がいるのに、能力が劣る先輩が上に立てば、率いられるチームが不幸なのは明らかだ。

年功序列は、新卒一括採用、終身雇用、定年制とワンセットの雇用システムとして高度成長期に機能していた。黙っていても仕事もポストも増えた時代。新卒者を大量採用し、働き続けてもらう終身雇用が当時は理にかなっていた。雇い続けるなら、年功序列で管理するのが一番ラク。やがて高齢者が役職を占めるようになるので、一定年齢で辞めてもらう。手厚い退職金や企業年金があるので、文句を言う人もいなかった。

この雇用慣行がうまくいったのは、高度成長と人口増という条件があったからだ。1990年代以降は低成長と人口減に直面し、製造業からサービス業中心へと産業構造が転換したにもかかわらず、構造改革が進まなかった。日本の労働生産性は経済協力開発機構(OECD)加盟の35カ国中22位。ガラパゴス的な雇用慣行を続けていては、生産性向上は望めない。

閉塞状況を一点突破する鍵は定年制の廃止にある。政府が定年をなくせと号令をかければ、企業は年功序列の賃金体系をやめて同一成果(労働)同一賃金へとシフトせざるを得ない。労働力が減少する中で、高齢者が働き続けることは、健康寿命が延伸するなど社会のニーズにも適合する。

年齢や役職にとらわれず、それぞれの能力や体力に見合った仕事を選ぶ。有能で実績を上げれば、何歳でも評価される。そんな「年齢フリー社会」に転換すれば、日本はもっと住みやすい国になるはずだ。

出口治明
ライフネット生命保険創業者。1948年生まれ。72年日本生命に入社、ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを務める。退社後、2008年にライフネット生命を開業し社長に就任。13年から会長。17年6月に退任。『「働き方」の教科書』、『生命保険入門 新版』など著書多数。

[日本経済新聞朝刊2017年7月3日付]

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