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円安阻む「4つのI」 年後半、外貨の一気買い避ける

2017/7/9

次に、内向き志向の政策(Inward-looking policy)に傾きがちな米トランプ政権の姿勢だ。この言葉は、国際通貨基金(IMF)の助言機関、国際通貨金融委員会(IMFC)が4月の共同声明で使った。「内向き志向の政策の回避」を打ち出した声明は、事実上、保護主義的な米政権に注意を促すのが狙いとみられた。

だが、5月に米通商代表部(USTR)代表に就任したライトハイザー氏の口からは「日本は牛肉などの分野(の市場開放)で譲歩すべきだ」などとする厳しい発言が飛び出している。同氏は1980年代のレーガン政権時代にUSTR次席代表を務め、日本に鉄鋼の輸出自主規制を受け入れさせたこともある。

貿易赤字縮小を重視し、保護主義的な姿勢をとるトランプ政権。ドル高や円安をけん制する発言が飛び出す可能性に市場参加者は神経質にならざるを得ない。

円売りを阻むかもしれない3つめの要素は、トランプ政権のロシア疑惑に関するモラー特別検察官による捜査(Investigation)だ。昨年の大統領選挙に対するロシアの介入があったのかどうか、トランプ氏周辺とロシアとはどんな関係を持っていたのか、などの点が焦点だ。

問題は、ロシア疑惑による政治の混乱で減税やインフラ投資など米政権の経済政策の早期実現が難しくなるとの受け止め方が増えていること。捜査の展開次第でこの見方がさらに広がれば、長期金利が下がりドルが売られる展開もあり得る。一部には、弾劾でトランプ大統領が罷免されペンス副大統領が大統領に昇格した方が、政策運営がうまく進むとの見方もある。

だが弾劾には米下院の過半数、上院の3分の2以上の賛成が必要。現状では共和党議員の賛成もいると考えられる。賛成した同党議員は来年秋の中間選挙でトランプ氏の支持者から反発を受けるかもしれない。「結果として民主党に有利に働き、共和党は上下両院のいずれか一方または双方の過半数を失う可能性もあり、ペンス氏のもとでも経済政策運営は円滑に進まない」(みずほ証券の上野泰也氏)との指摘もある。

■多額一括は避ける

最後に、国際軍事情勢(International military situation)も為替相場を左右する。一般に軍事的な緊張が高まれば「安全通貨」と目されている円に買いが集まるからだ。4月中旬に円が一時108円台前半に上昇した背景にも、北朝鮮をめぐる地政学的リスクの高まりがあった。ただ、北朝鮮のミサイルが日本の本土に向かうような事態になれば、逆に円が売られることも想定される。

外貨投資では、はじめに円を外貨に替える際の相場がその後の収益を大きく左右する。今後も円高圧力をかけかねない要素は多い。予想に反して相場が動き為替差損が膨らむリスクを抑えるためにも、多額の資金を一括で外貨に投じるのは避けた方がいいだろう。

(編集委員 清水功哉)

[日本経済新聞朝刊2017年7月1日付]

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