ショウガおろし器10選 食感で選ぶ日本式か西洋式か
合羽橋の老舗料理道具店「飯田屋」(http://www.kappa-iida.com/)の6代目、飯田結太氏がイマドキの調理道具を徹底比較。今回は、自他ともに認めるショウガマニアの飯田氏が国産と海外のおろし器を徹底検証。用途によって使い分けることでより爽やかでおいしいおろしショウガが楽しめるようです。
こんにちは、飯田結太です。定食の定番、豚肉のショウガ焼きって好きですか? 私は大好物で、ランチにレストランで食べて、夕食にまた家で食べることがあります。1週間のうちに3回食べることも。もちろん自分でもよく作ります。そのときにはショウガを大量におろして作るのが飯田流。そこで今回はショウガおろし器を徹底検証します。
ショウガおろしの基本
ショウガは大根に比べて繊維質が強いので、おろすとひげが出やすく難しい食材。では、ショウガをおろすときの基本を少し紹介します。
ショウガはおろしやすい大きさに切り分けたら、口当たりのザラザラ感や渋みをなくすためにも皮はむいたほうがいいと思います。ただし、ショウガの爽やかな香りや風味は皮のすぐ下の部分に多く含まれているので、皮は極力薄くむくようにします。
ショウガの場合、皮をむくといっても包丁ではなく、スプーンなどでこそぎとるようにするのが正解。または、トマト専用のピーラーなどを使うのがお薦めです。最近では、皮もむけるショウガおろし器もあるので、そういうものを活用するのもいいかもしれません。
「目」で削る日本式VS「刃」でおろす西洋式
ショウガおろし器といえば、昔はとげのような目がたくさん付いた陶器製が一般的でしたが、現在は、海外からブレード(刃)が付いたおろし器がいろいろ入ってきて選択肢が増えています。
西洋式のものは繊維を切りながら細かくすりおろすタイプ。一方昔ながらの日本式は繊維を潰しながらおろすタイプです。例えば、ジンジャーティーなどを作る場合には、なるべく繊維質を感じない細かくすりおろしたものが口どけもよく合います。冷ややっこなどに添える場合には、ある程度繊維質を感じるもののほうが存在感があっていいかもしれません。そう考えると、ジンジャーティー用には西洋式のもの、冷ややっこには日本式のほうが合うのです。プロも料理などによってショウガのおろし具合も使い分けているようです。
そこで、人気のある10個のショウガおろし器を実際に使用し、どういう用途に合っているかを検証してみました。まずは、日本式から。
[注]記事中の価格は飯田屋の店頭におけるもの
「剥く」と「おろす」ができるアイデア商品
1つ目の商品は「むいておろして」。その名前の通り、皮を薄くむくピーラー型の刃と、おろし金が合体した形になっています。持ち手は滑りにくく握りやすいので、おろすときに力を入れやすくて使い勝手も上々。スプーン状になっているので、おろしたショウガをそのまま料理に入れられるなど、ちょっとした工夫が盛りだくさん。
おろし金部分は本目立てで彫り起こしたものですが、一般的なおろし金よりも目が少しなだらかになっているところがポイントです。繊維質の強いショウガでも引っ掛かりが少ないので、ひげが絡まりにくく、柔らかくおろせます。
実際にショウガをおろしてみると、おろし金部分の長さが程よくあるのでショウガをスライドさせるのがラク。水気たっぷりのおろしショウガができます。試食してみると、繊維質はしっかり残っていて口の中に入れても存在感があります。冷ややっこに添えるおろしショウガなどに適しているようです。
おろしてそのまま鍋やカップへ
一時期とてもはやったのが、スプーン形のショウガおろし器です。これは、おろしてそのまま鍋やカップに入れて使えるのが実用的で家庭用としてヒットしました。その発想は良いのですが、ショウガをおろすことを考えるとおろし金の面積が狭いので時間がかかるのが難点。本当に少量欲しいときには便利です。
おろしてみると、目立ては斜め60度になっていて空すべりはしにくいものの、おろし金の面積が小さいので勢いよくおろすのは難しいですね。ゴロゴロと固体が含まれたおろしショウガになります。舌に残ってひげが分かる食感。「ジンジャーティーにもお薦め」というキャッチコピーですが、個人的にはジンジャーティーよりも料理向きのおろしショウガだと思います。
鬼オロシ風になる元祖日本式
日本式といえば、昔からあるのが陶器製のおろし器です。おろすというよりも潰していくやり方なのですが、目があまりとがっていないので、適度な空気が含まれたおろしショウガができます。そのまま薬味皿になるので食卓でおろすには最適です。
実際におろしてみると、ゴリゴリと削っている感じで、固体がしっかり残ります。ゴロゴロ感はすごい。鬼おろしが好きな人にお薦めです。
日本式と西洋式のハーフ
貝印のなかでも人気のある関孫六シリーズのショウガおろし器は、日本式と西洋式のいいところをミックスしたようなデザイン。おろす部分は目立てではなく刃が付いているのですが、西洋式のものに比べるとショウガをカットしていく力は弱め。だけど、ひげはきちんと切れるという面白い立ち位置のおろし器ですね。
実際におろしてみると、粗めのおろしだけど、食感はふわっとしています。不思議ですね。出来上がった料理の最後に添えたり、かけるのに適していると思います。たくさんおろすことができるのですが、本体がプラスチック製のため、滑りやすいのが残念。
大量におろすなら西洋式
西洋式の特徴は、目立てではなく、細かい刃がついていること。ハの字型の横広がりのブレード型が一般的です。刃が付いている部分の面積が広いので、大量におろすなら西洋式のほうが早く仕上がります。
プロに人気があるヒット商品、ジョセフジョセフの「ハンディーゼスタ―」。この商品の特徴は、おろしたショウガを他の道具を使うことなくワイパーをスライドさせてストンと皿に落とせるところ。実はショウガおろしで一番面倒なのが、おろし終わったあとの処理なんですよね。これはその面倒を解消したアイデア商品。
実際におろしてみると、繊維はしっかり切れています。水気はないですが、食べてみるとみずみずしくてびっくり。細かくてフワリとしています。
ひとつの刃が3面の角度付き
ドイツの高級調理道具メーカー、レズレーのショウガおろし器は刃がすごいんです。一般的な西洋式のおろし器は、刃にあまり角度が付いていないのですが、レズレーの「ファイングレーター ライト」は一つひとつの細かい刃に3面の角度が付いていて鋭角に研いであります。エッジが立っているので軽い力でサクサクと、細かくおろせるんです。難点をいえば、高額ということでしょうか。
実際におろしてみると、刃が鋭角なのでおろすのはとてもスムーズ。ただし、滑り止めが頼りないぶん、力を思い切り入れることができないので大量におろす場合は疲れるかもしれません。試食してみると、水気もあってやわらかくて口の中で溶けるのが早い。高額なだけの価値は十分にあります!
大工道具メーカーが作ったおろし器
米国の大工道具メーカー、マイクロプレインは、多種多様のおろし器があるキッチン用品ブランドとしても有名。もともと大工道具からキッチン用品が作られたエピソードがあり、その切れ味の良さは料理のプロの間でも高く評価されています。たくさんの種類のおろし器のなかからショウガおろしに適しているのは3種類。
細かいおろしショウガを作るなら、グルメシリーズの「ゼスター」。おろし部分の幅が広くて長いので、大量におろすことも簡単。刃が細かいのでとても細かいおろしショウガができます。もう少し食感のあるおろしショウガが欲しい場合は、同じグルメシリーズの「ミディアムゼスター」がお薦めです。こちらは刃が少し大きめ。実は私は両方とも持っています。どちらも滑り止めが付いているので安定感は抜群。大量におろす場合も疲れません。
もう一つは少量をおろしたい場合に適しているプレミアムシリーズの「スパイス」。これはナツメグ用なのですが、硬いナツメグを細かくおろせるということは、ショウガももちろんスムーズにおろせるということ。スティック状になっているので鍋に直接おろして入れるのもラク。裏側にたまるのですが、裏側には刃が出ていないので、スプーンや指でスーッとなでていくだけで落ちていくので手入れもラクです。
3種類のうち、最も細かく口の中で溶け具合がよかったのがスパイスでした。これは口の中でサーと溶けて水分もたっぷり残っていました。さらにみずみずしかったのがゼスター。フワフワさはスパイスに及びませんが、とてもジューシーな仕上がりに。ミディアムゼスターは水気がほとんどなく、パラパラな仕上がりになりました。そしてショウガの香りがガツンと入ってきます。存在感のある粗めのおろしショウガになります。
使いたい分だけその場でおろす
マイクロプレインのスパイスと同じ形の「フルベジ スティックおろし」。使いたい分だけおろしてそのまま鍋やカップに入れるというものです。他の西洋式と違うのは、刃が丸いところ。おろし具合はどちらかというと日本式に近い粗めな仕上がりになります。面白いのは、フチの部分で皮をむけること。また、裏面に刃が出ていないので洗うときも引っかからず手入れがラク。
実際におろしてみると、予想通り、日本式に近いゴロゴロ感のある粗めの仕上がりになりました。日本式と違うのは繊維質をほとんど感じないところ。粗めのおろしショウガが欲しいけれど、繊維質を残したくないという人にお薦めです。
食感、細かさのランキングは?
10商品を実際におろした結果、なんとも幅広い食感と細かさがありました。私はどちらかというと細かくてフワフワなおろしショウガが好みですが、予想以上のフワフワ感があってびっくり。口の中で溶けるタイプから鬼おろしタイプまで結果は以下のようになりました。
最もフワフワ感が合って口の中でスーッと溶けたのはレズレーのファイングレーター ライト。そして、最も粗くてゴロゴロ感があったのがスタジオノアの「ひげが出にくい不思議な生姜おろし器」でした。
ショウガの香りが強く残ったのは西洋式のタイプ。一方、日本式は食感を楽しみたいときにはぜひ使いたいですね。(談)
(ライター 広瀬敬代、写真 菊池くらげ)
[日経トレンディネット 2017年6月15日付の記事を再構成]
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