高機能ワイシャツ続々 半袖の印象は袖回りが決める
汗をかく機会が増える季節だからこそ、ワイシャツ選びにもこだわりたい。紳士服メーカー各社が力を入れているのは、アイロンをかける必要がないノーアイロンシャツ、そして夏の着心地を追求した新機能シャツだ。
夏に需要高まるノーアイロンシャツ
清潔感を保ちたい夏に力を発揮するのが、手軽に洗えて、アイロンをかける手間なく着られるノーアイロンシャツだ。
ノーアイロンシャツの先駆けとなる商品「i-shirt(アイシャツ)」を開発したはるやま商事によれば「アイシャツはもともとクールビズに向けたアイテムとして誕生した」(はるやまホールディングス広報担当)。そのため、夏の時期がもっとも需要が高くなるという。
夏にノーアイロンシャツが人気という傾向は他社も同様だ。青山商事の「洋服の青山」は夏用ノーアイロンシャツ「NON IRONMAX COOL」を前年比3割増、過去最大となる17万枚を展開。AOKIも「今年はノーアイロンシャツが半袖・長袖ともに好調で、前年比7割増で展開している」(商品企画担当者)。コナカが運営する「SUIT SELECT」でも「夏用の半袖ノーアイロンニットシャツが好調に推移している」(広報担当)。
高機能シャツ、夏の着心地を追求
ノーアイロンシャツとは別に、快適性を追求した高機能シャツもある。汗をすばやく吸収する速乾性や触れると冷たく感じる機能など、夏の着心地を追求した製品だ。
青山商事は5月、「スマートビズ ドライ」を発売した。「防シワ加工や汗の乾きが早い速乾性、肌に触れると冷たく感じる『接触冷感』など、複数の機能を備え、より暑い夏に快適に着られるよう特化した」(広報室)。
コナカも従来商品よりも30パーセント軽量化し、吸水速乾性に優れた「ウルトラライトスペックシャツ」が好調。シャツの強度を維持しながら、薄く、風通しを良くすることで夏の着心地を追求している。2017年はシャツの柄のバリエーションを増やしている。
はるやま商事が展開するスーツ店「P.S.FA」でも、接触冷感機能、UVカットなどを搭載し、従来商品よりも20パーセント軽量化した「アイスアゼックスーパーライト」を今年から発売。アイシャツよりも細い糸を使い、通気性を高めている。
アイロンやクリーニングなどの手間を省くためにノーアイロンシャツを選ぶか、それとも着ているときの快適性を重視し高機能シャツにするかは、人それぞれだろう。だが、せっかく買うなら着こなしにもこだわりたい。専門家によると、特に注意が必要なのが「半袖シャツ」だという。
半袖シャツ選び、袖回りに注意
「半袖シャツの需要が高まるのは例年梅雨明け以降。2017年は7月中旬以降から半袖が上回ると予測しています」(AOKI)、「クールビズの最盛期には長袖と半袖の売り上げが半々になります」(コナカ)と、半袖シャツの人気は夏になると高くなる。
ただ半袖シャツは着こなしが難しい。個人向けに洋服選びなどのスタイリングを行うパーソナルスタイリストのみなみ佳菜さんは「半袖シャツは選び方を間違うと、やぼったい印象になってしまう」と忠告する。
みなみさんによれば、ポイントは「袖の大きさ」。胸やおなか回りは確認しても、袖回りをチェックしない場合が多い。半袖シャツの場合、袖回りが大きいと周囲にやぼったいという印象を与えるという。みなみさんは「指が2本入る程度の余裕があるシャツを選ぶのがベスト」とアドバイスする。
「スーツは200年以上前から変わらない、ジャケット、シャツ、パンツで完成されたスタイルで、時代感を表現するのは『タイト』か『ルーズ』か。ここ10年はタイトが主流なので、ゆったりしたものを選ぶと古く感じられてしまうのです」(みなみさん)
もう一つ注意したいのはデザインだ。
「ジャケットやネクタイを省略するクールビズの時期、シンプルな半袖シャツでは寂しい気がして、良かれと思ってダブルカラー(襟が2枚になっているもの)など、アクセントがあるものを選んでしまう人がいます。ですが、ビジネスの場では遊び心を持たせるのはNG。完成されたスーツの形式から外れると、若い女性が着物を必要以上に着崩しているような印象を与えます。デザインよりもサイズ感や清潔感に気を使いましょう」
クールビズ、フォーマル回帰の動きも
涼しくて動きやすい半袖シャツだが、みなみさんが個人のスタイリングを担当するとき、「大事な取引先に会うときなどは、極薄や接触涼感素材で構わないので長袖シャツにジャケットを羽織るべき」とアドバイスするという。
「シャツはもともとジャケットを汚さないために生まれた下着。カジュアルシャツの場合は問題ないのですが、ビジネスシーンではジャケットの着用が相手への礼儀を伝える役割を果たします。落語家が最初は羽織をきっちり着て、客の前に出るのと同じ。待ち合わせの時だけでも羽織るのがベターです」(みなみさん)
青山商事によれば「クールビズのスタイルは多様化しており、近年はフォーマル回帰の傾向から夏場でもジャケットやネクタイを着用する方も目立つ」(広報室)。実際、デパートの紳士服売り場では、薄手で通気性の高い素材を使用したジャケットが数多く展示されており、夏場でもジャケットの需要があることがうかがえる。みなみさんも「ジャケットは麻など、涼しく軽い素材でOKです。綿やポリエステルなどの、向こうが見えるくらい透け感のあるメッシュ素材や、素朴な風合いのシアサッカー地もおすすめ」という。
コナカやはるやまのP.S.FAでは、シャツと同様に軽量化し、風通しを良くしたスーツを展開している。AOKIは汗をかきやすい夏場に便利な、自宅で丸洗いできる「本当に洗えるスーツ」を強化。前年比1.5倍の商品量で展開する。
ユニークなアプローチを見せるのが洋服の青山。大小9つのポケットを備えた「バッグレスジャケット」を発売した。手ぶらで通勤できることで、手汗のべとつきや、リュックによる背中の蒸れから解放されるという。
「クールビズといえばノージャケット」というイメージが強いが、この夏は新素材のシャツとジャケットという組み合わせを選んでもいいかもしれない。
(ライター 小沼理=かみゆ)
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