「塩化物泉」も保温や保湿の温泉です。塩の成分は肌の上に「塩皮膜」となってベールのように覆うので、温まった熱を保ち、水分も閉じ込めて保温と保湿をサポートします。冷えは美容の大敵。あたため美容の仕上げにも塩化物泉が役立ちます。

群馬県・法師温泉(硫酸塩泉)

【3.めぐり美人の湯】

美と健康には体の内側も整えておくことが大切ですね。いらないものをため込まないようにするには、血の巡りがポイントです。「硫黄泉」は毛細血管を拡張する作用があり、血行がよくなります。また、炭酸ガスを含む「二酸化炭素泉」も同様に血行促進作用が期待できる泉質です。血行がスムーズになるということは、いらないものを外へ出すだけでなく、美肌に必要な栄養や酸素も隅々まで運んでくれますので、硫黄を含む温泉に入ると肌本来の元気がよみがえり、ツヤツヤの輝きにうれしくなります。血の巡りがよくなると、体にたまった疲れやコリも流れやすくなっていきます。メタボ対策やダイエットなどが気になる方にもおすすめしたい温泉です。

秋田県・鶴の湯温泉(硫黄泉)

スペシャル集中ケア向きの温泉も

美容には毎日の基本ケアが大切ですが、時にはしっかりとスペシャルケアをして美と健康に拍車をかけたいこともあります。同じように、単純温泉や硫酸塩泉のように毎日使いたい化粧水のような温泉と、集中ケア的に取り入れたい温泉があります。

例えば「酸性泉」(草津温泉、蔵王温泉など)に入ると、適度な刺激を与えて肌や体の活性化を促すことができます。体温と同じくらいのぬる湯でリラックスできる栃尾又温泉のような「放射能泉」は、じっくりと体や肌本来の元気を目覚めさせます。「濃厚硫黄泉」(万座温泉や月岡温泉など)で徹底的に全身の巡りをよくするとか、塩も鉄分も超濃厚な温泉(有馬温泉など)で普段は手が届かないような体の深部までしっかり温まるなど。そう、こうなってくると温泉は化粧品の枠を超えてサプリメントや栄養ドリンクのような存在になってきます。詳しくは今後のコラムでテーマ別にお伝えしていきたいと思います。

兵庫県・有馬温泉(含鉄泉・塩化物泉)

湯巡りは順番が大事

温泉は泉質によって美容への働きが違ってくることを知っていただくと、湯巡りするにも、どんな泉質の温泉をどんな順番で巡ればいいのかが分かってきます。

宿泊する温泉地に到着する前に別の泉質の温泉地に寄ったり、翌日に寄ってから帰ったりということも考えられます。さらに、温泉郷のように複数の泉質の温泉が集まっている場所や、ひとつの温泉地でも源泉によって泉質が違うところもあります。

例えば、東西の横綱と呼ばれる大分県の別府温泉郷と宮城県の鳴子温泉郷は、まるで温泉のデパートのように色、香り、感触、泉質が驚くほど違う温泉があちこちに湧いています。箱根温泉郷も箱根十七湯と呼ばれる温泉地が点在し、場所ごとに出合える泉質が変わるので、景色を観光しながら違う温泉を巡ると楽しみが倍増します。

箱根温泉郷を例にして湯巡りコースを説明してみましょう。

美肌磨きなら、最初にせっけんのような作用の「炭酸水素塩泉」かアルカリ性の温泉へ。これは、箱根湯本温泉のあたりに多い泉質です。次に、血行を促進して肌の巡りを良くする「硫黄泉」へ。標高の高い湯の花温泉や芦之湯温泉は硫黄泉です。仕上げは、化粧水のようにしっとりと保湿する「硫酸塩泉」。これは大涌谷の源泉を引いている強羅温泉や仙石原温泉のエリアで入ることができます。このように順番を考えて巡れば効率よく温泉でスキンケアができるわけです。

肌や体の代謝アップを目指すなら、まず「硫黄泉」や「二酸化炭素泉」で血行促進してから、体を温めてポカポカを持続させる「塩化物泉」へ。塩化物泉は宮ノ下温泉や大平台温泉、奥湯本温泉などにあります。発汗をサポートして燃焼を高めるというコースです。

このように、温泉も化粧品を使い分けるように選んで、温泉旅でもっと美肌になっていただけたらと思います。

石井宏子
 温泉ビューティ研究家・トラベルジャーナリスト。日本の温泉・世界の温泉や大自然を旅して写真撮影・執筆をする旅行作家。テレビにも出演。温泉・自然・食で美しくなる旅の研究家。海外ブランドのマーケティング・広報の経験から温泉地の企画や研修もサポート。日本温泉気候物理医学会会員、日本温泉科学会会員、日本旅のペンクラブ会員、気候療法士(ドイツ)、温泉入浴指導員。