将棋界に新スター、中村新王座は早大出身の秀才棋士

将棋のマーケットは限られていたが、ここにもIT(情報技術)の波が押し寄せている。プロ棋士と将棋ソフトが対戦する「電王戦」。この出場者を決めるために行われてきた「叡王戦」がタイトル戦に昇格した。将棋界に7つあったタイトル戦は、34年ぶりに8つになった。この電王戦を主催するのは日本将棋連盟とドワンゴだ。

AIは棋士の脅威なのか

5月20日、記者会見でドワンゴの川上量生会長は「IT企業がタイトル戦を主催するのは初めてなので、ネット中継など見せるところで特色を出したい」と話した。インターネットテレビ「アベマTV」を共同運営するサイバーエージェントでは将棋の専門チャンネルを開設。IT企業が将棋ファンを増やすのに一役買っている。

一方で人工知能(AI)を活用した将棋ソフトの台頭はプロ棋士の脅威にもなった。「今のプロ棋士は将棋ソフトを相手に腕を磨いていますが、AIの進化で人間が勝てなくなってきています」(中村六段)。AIに職場を奪われるという危機感は将棋界でも高まった。しかし、中村六段は「将棋ファンはAIが打つ将棋にはあまり興味を示さない。やはり羽生さんとか、人の打つ将棋に心を奪われるわけです。勝負の世界には人と人の様々な駆け引き、探り合い、心の葛藤が投影される、そこが面白いわけですから」という。

若手台頭、新ファンつかむ

「貴公子」と呼ばれる中村六段。新たな試みにも挑戦している。関東の若手棋士の組織「東竜門」のリーダーとなり、イベントなどを仕掛けて女性や子供のファン層を広げようとしている。将棋をモチーフにした映画「3月のライオン」のイベントも開催。藤井四段はライバルではあるが、新世代の棋士の活躍は大歓迎だ。

中村六段は現在、藤井四段には2勝1敗で勝ち越しているが、「藤井さんは日々強くなっていますからね。AIが進化するなか、有能な若手がどんどん出てくるでしょう」。関西中心に10~20代の新世代が次々台頭しているという。

「藤井効果」でにわかに注目される将棋界。日本将棋連盟常務理事の鈴木大介九段は、「藤井さんの活躍は同じプロとしても驚きの一言です。14歳にして、すでに大きな弱点が見当たらず、完成されているとさえいえます。もちろん今後は各タイトル戦で将棋界をにぎわしてくれるでしょう」という。

秀才のうえにイケメン棋士ともいわれる中村六段。プロ棋士は「お得」なキャリアなのか。中村六段は「個人差があるでしょうけれど、好きなことを仕事にできるのは幸せなことではないでしょうか。普通会えないような人にも会えるし、楽しい仕事ですね」と語った。江戸時代から続く日本の伝統文化ともいわれる将棋。地味なイメージもあったが、新世代が棋士のキャリアに彩りを添えている。

(代慶達也)

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