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カリスマの直言

「第2の産業革命」到来 その時日本株は(武者陵司) 武者リサーチ代表

2017/7/3

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「人類はいまや歴史的産業革命のただ中にあり、株式市場にもそれが顕著に表れている」

人類はいまや歴史的産業革命のただ中にある。IT(情報技術)、スマートフォン(スマホ)、クラウドコンピューティングなどの革新的技術が、グローバリゼーションを巻き込み、空前の生産性向上をもたらしている。つまり、これらの革新的技術は労働や資本投入の必要量を著しく低下させ、企業収益の急激な伸びにつながっているのだ。株式市場にもそうした変化が顕著に表れている。

■機械が人間の頭脳労働を代替

米マサチューセッツ工科大学(MIT)のエリック・ブリニョルフソン、アンドリュー・マカフィー両氏は、著書「The Second Machine Age」で「第2の産業革命」が到来していると主張する。200年前の第1次産業革命は動力の発明により機械が人間の筋肉労働を代替し、生産性を飛躍的に上昇させた。それがひいては経済発展と生活水準の向上をもたらしたわけだが、今進行している第2の産業革命は情報通信機器・システムの発明により機械が人間の知力、頭脳労働を代替しようとしていると述べている。

新しい時代の主役がインターネットのプラットフォーマーである。今やインターネットインフラの創設と運営、活用を基盤とした多くの新ビジネスモデルは米国発である。世界のインターネットプラットフォームは政府による保護育成がなされている中国を除いて、ほぼ米国企業が独占している。

中国企業を除く世界の株式時価総額のトップ5(今年5月末時点)は、アップル、アルファベット(グーグルの持ち株会社)、マイクロソフト、アマゾン・ドット・コム、フェイスブックの米ネットインフラ企業である。10年前のトップ5は、エクソンモービル、ゼネラル・エレクトリック(GE)、マイクロソフト、シティグループ、AT&Tだった。これらはマイクロソフトを除き銀行、石油、通信、電機などの戦前からの伝統的優良企業で、現状とは隔世の感がある。

■米市場の新陳代謝は激しい

米株式市場の新陳代謝は激しい。今や米自動車企業の株式時価総額のトップは電気自動車専業のテスラだ。13年前に設立されたこの新興企業は2016年の販売規模が4.6万台にすぎないが、規模で100倍を超えるゼネラル・モーターズ(GM)、フォード・モーターを時価総額では抜いている。このことは自動車市場が将来は電気自動車に置き換わることを市場が織り込んでいるのであろう。

技術革新の大切さを説いた経済学者のシュンペーターは、「銀行家は新結合の遂行を可能とする経済の指揮者である」と述べた。今は銀行家というより、投資家が経済の指揮者の役割を担っているといえる。米自動車企業の時価総額トップに立ったテスラはそれによって可能となった資本調達力を動員して、新ビジネスモデルを追求していくであろう。

日本企業の場合、時価総額トップ5はトヨタ自動車、NTT、NTTドコモ、ソフトバンク、三菱UFJフィナンシャル・グループだ。ソフトバンクを除けば伝統的な企業で、顔ぶれは10年前とほぼ変わっていない。これらの企業の時価総額はおおむね2割以上減少している。主役交代が起きないまま、主役の勢いが衰えているのである。

■日本でも主役交代の時代が

だが、新陳代謝の兆しはある。ITバブルピーク直前の1999年末から2017年5月末までに東証株価指数(TOPIX)は8.9%下落したが、規模別で見ると、時価総額が大きい30銘柄で構成するTOPIXコア30はマイナス55.0%と大幅に下落した。一方、TOPIXコア30に次ぐTOPIXラージ70はプラス6.7%、TOPIXミッド400(中型株)はプラス67.9%となっている。

とりわけ、時価総額が小さいTOPIXスモール(小型株)はプラス121.5%を記録している。この間の米S&P500種はドルベースでプラス64.2%、円ベースでプラス77.7%だが、日本の小型株のパフォーマンスはこれを大きく上回る。これは成長力が高い中堅・中小企業が投資家の資金を引き寄せていることを意味する。

日本経済新聞の集計によると、東証マザーズなど新興市場に上場する企業の16年度決算は純利益の合計額が前年度比で46%増えた。人口減などの社会問題やネット革命に伴う内需の構造変化に対応し、利益を伸ばす企業が目立つ。

昨年来、円高もあり日本株全体のパフォーマンスはぱっとしない。しかし、目立たないが日本にも主役交代の時代が訪れている。技術革命は全企業にビジネスモデルの再定義を求めており、しがらみの少ない中堅・中小企業が圧倒的に有利である。第2の産業革命が到来しつつあるなか、日本でも第2のテスラが登場することを期待したい。これは日本株の先行きを占う上でも大いに注目すべきテーマだ。

武者陵司
武者リサーチ代表。1949年長野県生まれ。73年横浜国立大学経済学部卒業。大和証券入社。企業調査アナリストを担当。大和総研アメリカでチーフアナリスト。97年ドイツ証券入社、調査部長兼チーフストラテジスト、2005年副会長。09年武者リサーチ設立。著書に「超金融緩和の時代」(日本実業出版社)など。

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