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「私立に行きたい」 子どもが進路変更、保険も見直し ファイナンシャルプランナー 竹下さくら(6)

2017/6/30

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 子どもが小学校を卒業した時点で一気に実行するはずだった住宅ローンの繰り上げ返済が、予定通りにはできなくなりました。子どもが私立の中高一貫校に進学するためで、今後の家計のやりくりも心配です。(神奈川県・Yさん・49歳)

 10年ほど前に住宅を購入をした際、65歳に完済の計画で住宅ローンを組んだYさんが、2度目の相談に来ました。当初の予定では、比較的家計にゆとりがあるこの10年ほどの間に繰り上げ返済の資金をため、住宅ローン控除の期間が終わってから一気に繰り上げ返済する予定でした。しかし、子どもの塾通いでお金がためられず、さらに子どもが私立の中高一貫校に進むことになり、資金計画を見直したいとのことです。こんなときに見落としがちなのは、実は生命保険の見直しの必要性です。Yさんのケースを例に確認してみましょう。

【相談者プロフィル】
相談者:Yさん(49歳男性、会社員)
家族:妻(45歳、専業主婦)、子ども1人(12歳)
【加入している保険】
Yさん:
・団体定期保険(会社のグループ保険)
・収入保障保険(保険金額は月額20万円。65歳まで)
妻:
・医療保険(入院日額5000円など)

■60歳以降、家計が不安定に

 Yさんの子どもが独立するのは、Yさんが60歳前後のとき。勤務先は50代に入ると徐々に年収が減り、60歳以降は65歳まで雇用延長できるものの、それまでの50%もらえればいいほうだそうです。その水準で家計をやりくりするのは大変なので、退職までの完済を目指して住宅ローンを検討しました。ただ実際には、毎月の負担が重くなるため、返済期間を65歳までにしていったんローンを組んで、子どもが小学生の間に気合を入れて貯蓄。ためた300万円ほどを一気に繰り上げ返済することで、返済期間を5年短縮(60歳完済)する計画で走っていたのです。

 しかし、ふたを開けてみると、繰り上げ返済の軍資金は子どもの中学受験の塾代に消えました。子どもの希望で進学塾に通うようになり、塾代や交通費、外食費、中学校の受験料など何かと物入りとなったのです。

 中高一貫校の教育費など、目先の教育資金の手当てはなんとかめどがつきましたが、60歳以降の資金不足はかなり深刻です。退職金を取り崩して住宅ローンの完済を目指す方向で調整していますが、老後資金にも影響するため、家計を厳密に見直していくことにしました。さらに、もしもの場合に備える生命保険も微調整が必要になりました。

 Yさんにもしものことがあったとき、遺族の生活に必要な資金の総額はおよそ1億2000万円。この額は妻の平均寿命までで算出し、子どもの教育資金は「オール公立」を見込んでの計算です。公的年金(遺族基礎年金・遺族厚生年金)や死亡退職金、妻の就労収入などを合わせると6770万円ほどになるため、現在加入している生命保険で必要な資金をほぼカバーできているはずでした。しかし、私立への進路変更を踏まえて教育資金を修正してみると、1000万~1500万円ほどが明らかに不足する現状が浮かび上がりました。

■教育費と生命保険の選択パターン

 生命保険で備えるべき保険金額は子どもによって変わります。そのとき微調整に使うのは主に定期保険です。

(1)きちんと保障設計をした後、子どもの進路が公立から私立に変わったとき
 →定期保険の上乗せ
(2)きちんと保障設計をした後、もうひとり子どもが生まれたとき
 →収入保障保険の上乗せ
(3)保障設計する前
 →生命保険で準備すべき額を算出し、適切な保険を組み合わせる

 Yさんの場合、公的保障・配偶者収入・生命保険金の合計と、実際の必要資金の推移が上のグラフのように平行する形で差があったので、定期保険の上乗せが適切と判断。勤め先の団体定期保険に保険金額1500万円で加入することで対応しました。

 ちなみに収入保障保険は、月額○○万円、もしくは年額△△万円といった形で契約する定期保険の一種です。たとえば、月額5万円・保険期間25年で契約すると、初年度は1500万円(5万円×12カ月×25年)の死亡保障を確保することができます。次年度は1440万円(5万円×12カ月×24年)というように、だんだんと確保できる死亡保障の額は少なくなる仕組みになっています(その分、保険料も安くなる)。

 定期保険も収入保障保険も、いずれも一定期間の死亡保障を確保できる保険で、子どもがいる家庭の死亡保障を合理的に確保するのに適しています。ある保険会社で保険料を比較したところ、定期保険なら月額約4120円、収入保障保険では同約1650円ほどでした。(35歳男性、保険期間25年、当初の保険金額1500万円の例)。

■家計が厳しくなったら増額

 このように収入保障保険は割安に当初の保険金額を確保できるので、子どもができたばかりの家庭にはとても便利です。ただし、子どもの進路が変更になった場合(公立から私立、私立の理工学部系から医学部、自宅通学から自宅外通学など)には、生命保険の死亡保障を引き上げる調整は必要になります。

 目先のやりくりの大変さに目が行きがちで、保険の手当てはついつい後回しになる傾向が高いので、留意が必要です。保険に入った当初は、保障額が足りているかどうかに敏感だったはずです。保険は貯蓄でまかなえない事態に備える位置づけのものなので、家計が厳しくなったときこそ増額が必要です。子どもがいる家庭の参考になれば幸いです。

竹下さくら
 ファイナンシャルプランナー。損害保険会社・生命保険会社に勤務後、FPとして独立。主に個人のコンサルティングを行うかたわら、講演・執筆等を行う。主な著書に『「保険にはいろうかな」と思ったときにまず読む本』(日本経済新聞出版社)、『知らないと損をする!  間違えない保険選びのツボ』(同)などがある。

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