梅雨時の助っ人、除湿機 除菌など+αの機能にも注目
高温多湿の日本。カビの種類も世界有数である。通風性の良さを基本としてきた日本家屋が、密閉性の高い省エネ住宅に変わった上、部屋干しが日常化し始めている今、湿度管理は非常に重要だ。日ごろは意識が薄いが、健康維持、快適さをサポートする今時の「除湿機」をリポートする。
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湿気こもる省エネ住宅
昔と違い、今の世の中「あばらや」といわれる家を、ほとんど見かけなくなった。多くが壁の中に断熱材を入れ、省エネを考慮した家だ。確かに快適な住まいには違いないのだが、必ずしも健康住宅ではないというと驚かれるだろうか。
「省エネ住宅」の売りは断熱性と密閉性。今の日本の住宅の密閉性は北欧の家並みに非常に高い。北欧は低温低湿なのだが、日本は高温多湿で微生物の宝庫である。梅雨を「黴雨」と書くくらいカビが多いのだ。
カビと聞いてもピンと来ない人もいると思うが、カビの胞子は空気中に多く飛んでいる。だから温度、水分、栄養などの条件がそろうと一気にカビてしまうのだ。食べ物だけではない。トリコスポロンというカビなどは、人間が吸い込むとアレルギー反応を起こし、夏型過敏性肺炎を引き起こす。人は常に水蒸気を外に出している。このため密閉度が高い部屋では、湿度管理が非常に重要になる。
今の日本の盛夏では、エアコンを使わないと熱中症になってしまうので、皆エアコンを使う。エアコンは除湿能力も持っているので、エアコン使用時はそれでもよいが、時々肌寒い日がある梅雨の季節では使用しないことも多い。
そんな時に便利なのが除湿機だ。梅雨の時期には、洗濯物の部屋干しをよくする。最近の都会の一人暮らしでは、女性を中心に常に部屋干ししかしない人も増えている。湿度は換気するか、除湿機を使わないと下がらない。雨の日は、外の湿度が高いため、換気だけでは十分に除湿できない。
どの季節に使うかで選ぶ
除湿機の機構には2つの方式がある。1つ目はコンプレッサー式。単純にいうとエアコンと同じ方法で除湿を行うのだ。長所は温度をほとんど上げずに除湿できること。短所は電気代がかかること、動作音が大きめなことで、このあたりはエアコンに似ている。気温25度以上で有利だ。
2つ目はデシカント(乾燥剤)式である。ゼオライト(沸石)式とも呼ばれる。要するに部屋の中の湿度を吸収する素材を用いるのだ。使用してデシカントが目いっぱい水分を含んだ時には、デシカントを温めて元の性質を取り戻させるようにする。長所は、低温時でも除湿能力が落ちないこと。動作音もコンプレッサー型に比べると静かである。
短所は、乾燥剤を元に戻す時にヒーターを使うので、室温が3~8度上昇すること。またヒーターが電気を食うため、コンプレッサー式より電気を使う。梅雨時だけ使うならコンプレッサー式。冬の結露も防ぎたい人はデシカント式を選択するとよい。
だが、今の主流は、この2つを合わせたハイブリッド型だ。低温の時はデシカント方式、高温の時はコンプレッサー方式といいとこ取り。ただし機能を2つ組み込む分だけ、価格が高くなる。
最近除湿機は、「衣類乾燥除湿機」というカテゴリーで販売されることが多くなってきた。これは先のように部屋干し用として買う人が多いためだ。衣類乾燥型は、衣類に強い風を吹きかけ、衣類から水分を蒸発させ、さらにその湿気を除去する仕組みを持つ。
さらに室内干しの問題点、部屋干し特有の臭いを除去する機能もついている。落とし切れなかった汚れ自体や、その汚れで繁殖した雑菌が臭いの原因だ。このため雑菌の繁殖前に除去するのが最も良い方法である。メーカー各社とも臭いの除去、除菌、その両方に対応する機能を盛り込んでいる。さらに空調機能を一つにまとめた、除加湿機能付き空気清浄機も出始めた。シャープKC-HD70型などだが、値がはる。
除湿機は、水を中のタンクにため込んで重くなるため、移動ローラーが付くことが多いが、それを逆手に取ったキャリーバッグ風デザインもある。
水タンクは満タンでも軽く扱いやすいよう、容量が1日分の除湿量より小さいのが普通だ。連続運転のためには、小まめに水を捨てるか、ホース排水できる連続排水機能ありの機種を選択するのがお勧めだ。
(生活家電.com主宰 多賀 一晃)
[日本経済新聞夕刊2017年6月24日]
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