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死の熱波の脅威 80年後に人類の4分の3が直面

日経ナショナル ジオグラフィック社

2017/7/1

ナショナルジオグラフィック日本版

ラマダンの8日目を迎えた2017年6月4日、猛暑を避けようと運河で水浴びをするパキスタンの人々。ラホールでは、最高気温47℃を記録した。(PHOTOGRAPH BY RANA SAJID HUSSAIN, PACIFIC PRESS, LIGHTROCKET, GETTY IMAGES)

 現在、世界の30%の人々が、死に至る恐れのある暑さに年間20日以上襲われていることが、新たな研究によってわかった。こういった熱波は気候変動によって大きく広がっている。それはまるで山火事が広がるかのようだ。

 2017年6月19日に気候変動に関する専門誌「Nature Climate Change」に掲載された分析によると、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出を大幅に削減しない限り、2100年には最大で世界の4分の3の人々が熱波による死の脅威に直面することになる。温室効果ガスの削減に成功したとしても、2人に1人はその熱波の中で少なくとも20日を過ごさなければならない。

 論文の筆頭著者である米ハワイ大学マノア校のカミロ・モラ氏は、「死者の出る熱波はありふれたものになっている。なぜ社会としてこの危機に関心を向けることがないのか、理解できない」と記す。「2003年に発生したヨーロッパの熱波では、約7万人が死亡した。これは、9.11の死者数の20倍以上にあたる」

 危険な熱波は人々が意識している以上に頻繁に発生している。その数は、死者を伴うものだけでも毎年世界中で60件以上だ。たとえば、2010年のモスクワでは少なくとも1万人が死亡しており、1995年のシカゴでは熱波の影響で700人が死亡している。

 2017年もすでに熱波による犠牲者が出始めている。53.5℃という記録的な暑さに襲われたインドやパキスタンでは、2週間で20人を超える人が死亡した。米国でも、すでに暑さによる死者が複数名出ている。

■熱波による犠牲者

 モラ氏と多数の国の研究者や学生からなるチームは、3万件以上の資料を調査し、暑さに起因する死者が出た都市や地域について、1949件の事例を集めた。死者を伴う熱波は、ニューヨーク市、ワシントンD.C.、ロサンゼルス、シカゴ、トロント、ロンドン、北京、東京、シドニー、サンパウロでも記録されている。

 最も危険なのは、高温湿潤な熱帯地域に住む人々だ。このような場所では、温度や湿度の平均がわずかに上がるだけで、死につながる危険が生じる。しかしモラ氏によると、平均気温が30℃を下回る穏やかな地域であっても、湿度が高くなれば死者が出ることもあるという。

 医学史を専門とする米ウィスコンシン大学マディソン校のリチャード・ケラー教授は、米国の暑さによる死者数はトルネードなどの他の異常気象による死者数より10倍多いという。

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