「TOKYO土産」定番つかめ 外国人に刺さる勘所は?NYにならい「キストーキョー」ブランド投入も

「前に日本へ観光した友人が『お土産はこれがいい』って薦めてくれたんですよ」

6月の平日、東京スカイツリータウン(東京・墨田)の店舗。オーストラリアから旅行に来たデイビットさん(32)が手に取ったのは、洋菓子「東京ばな奈」だ。

商品の特長伝わりやすい翻訳に

訪日客にも東京土産として定着しつつある東京ばな奈。多くの企業がまだ土産の開発段階にあるなか、製造販売会社グレープストーン(東京・中央)は一歩先の取り組みを進める。

「東京ばな奈」は翻訳する言語ごとに商品の説明内容を変えている(東京都墨田区の東京スカイツリータウン)

注力している一つは翻訳。お菓子の特徴をいかに正確に表現するか、日々、翻訳会社と議論を重ねている。例えば、ふわふわとした食感を「Airy(空気のような)」と表現したところ、訪日客の理解はいまひとつだった。そこで「moist(しっとりとした)」を加えると、反響が格段に良くなったという。味か見た目か、出身国によって重視するポイントは違い、言語ごとに説明内容も変える。まさに「神は細部に宿る」と言わんばかりの徹底ぶりだ。

名前に堂々と「東京」をうたった同商品。「社内で反対意見もあったが、東京に来た人にとって、どんな気取った名前より『東京』だとすぐに分かることが一番うれしいのではないかと思った」と担当者は話す。あえてベタに「TOKYO」を押すことで、かえって訪日客には刺さる。

ニューヨーク土産として「I LOVE NY」は定着している

場所は変わって5月上旬の米ニューヨーク市。「めいっ子のお土産はこれと決めていたの。デザインもすてきだし、記念になる」。「I LOVE NY」とプリントされた子供用のピンク色のTシャツを購入したオレゴン州から来た女性(38)は話す。

「I LOVE NY」のロゴは、財政難や治安悪化などに見舞われていたニューヨーク州が1977年、起死回生をねらって始めた観光キャンペーンで生まれた。NY生まれのグラフィックデザイナーによるキャッチコピーとロゴは、テレビCMの効果なども相まって、あっという間に世界中に広がった。

成功した理由の一つは、「アイ・ラブ・ニューヨーク(私はニューヨークを愛している)」というメッセージ。一人称の「アイ(私は)」としたことで、もう一度自分たちの街を愛そうと、ニューヨーカー一人ひとりの「自分ごと」になった。地元への誇りや愛を再び呼び起こし、ばらばらだったニューヨーカーの心をまとめたといわれる。

TOKYOも土産づくりをきっかけに、そんな気持ちを「東京人」に喚起できるかが、問われている。

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急拡大する市場、地方企業にも商機

観光物産総合研究所(東京・杉並)の試算によると、国内の土産市場は約3兆9000億円(2015年)。東京五輪・パラリンピック開催の20年には5兆円まで拡大すると予測する。

東京の土産市場は大きく、地方企業にも絶好のチャンスだ。例えば秋田県の菓子舗榮太楼など菓子メーカー3社は独自の取り組みを進める。都内のしょうゆ醸造蔵と連携し、バターもちなど「東京土産」の和菓子商品を開発。商品で秋田色を出したがラベルには「秋田」の文言は入れていない。五輪・パラリンピックの際には駅や空港での販売を狙う。

実際、成田空港の土産店で外国人に売れているのは、東京ばな奈や資生堂のスキンケア商品で、菓子や化粧品は有望な土産商品といえる。

観光物産総合研究所の稲田俊明代表は「訪日客向けは、富士山や芸者など日本や、東京が直感的に伝わる商品作りがポイント」と指摘。一方、日本人向けには「ハイセンスなラベルなどデザイン性もないと売れ筋にはならない」とみる。

(細川倫太郎、井土聡子)

[日経MJ2017年6月23日付]