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立川談笑、らくご「虎の穴」

ティッシュ配りやレジでスゴ腕発揮 アルバイトの達人 立川談笑

2017/6/25

PIXTA

テーマは「アルバイト」。街で見かけるアルバイトの皆さん、といはっても実は社員さんでアルバイトではないかもしれないけど。そんな人々をながめてはそのスキルを観察するのが、ひそかな楽しみだったりします。

まずは街角でのチラシやティッシュ配り。あれって、以前よりもずっと数が少なくなった気がしませんか。かつては東京の新宿や渋谷など繁華な街に出かけると、駅前にはずらりとその手の人たちが待ち構えていたものです。すっかり動線ができちゃってて、その左右から次から次へとティッシュやらを差し出されて思うように歩けないほど。あれは困りました。あまりの数の多さから仕方ないのかもしれないけど、彼らを邪魔な存在として完全に無視して通行する一般人を目の当たりにしては、ずいぶんと心がもやもやしたものです。

高座を前に準備する落語家の立川談笑さん

私は仕事柄、街頭インタビューなどといって初対面の人をつかまえてあれこれと話しかけることが少なくありません。そんなとき、断られるのは当然。皆さん忙しいんですから。それでもとりわけ辛いのは、まるで無視されることです。こちらが丁寧に声をかけているのに、まったく視線を動かさずに通り過ぎる。わずかな瞬間に人格を否定された気すらします。ああ、書いていてつらいこと。

時給のためにと割り切って心を閉ざした表情で機械的にティッシュを通行人に差し出すアルバイト。その存在を無視して無表情で通り過ぎる人々。人の心と感情が摩滅してゆくかのような光景でした。ともあれ今はずいぶん落ち着いたように私には感じられます。配るアルバイトさんも、通行人側も余裕ができたような。といっても人それぞれでしょうけど。

そんなティッシュ配りで、すさまじいスキルの人を目撃しました。私は基本的には受け取らないのです。ティッシュもチラシも。「結構です」のジェスチャーとともに断るのが通例なのですが、ある駅前で行き会った、その彼のティッシュは思わず受け取ってしまったのです。我ながら驚きました。まるで合気道の達人にふわりと空気投げでもくらったような感覚です。「あれれ? 今、何が起こったの?」みたいな。

あまりの手際の良さに、その場にとどまって彼の観察をしました。通る人、次から次へとティッシュを手渡していきます。それもほとんど断られない。打率にして7割を超えていそうです。普通は1割だって怪しいのに。これはとんでもない技術だ。さらによく観察します。彼の表情は、フラット。ほほ笑むのと無表情の間くらい。そして、通行人と目線を合わせるかと思ったら、合わせない。これが意外。顔は向けるけど相手の目は見ない。

そして動きが独特です。なめらかな動きで、ティッシュを通行人の前でなく、横に出す。そのまま通行人の動きに合わせてティッシュと自分がしばし平行移動する。通行人、ちょっとして受け取る。なるほど!

とにかく押しつけがましくないのです。急な動きで警戒させたり、目線で圧迫を感じさせることがない。そして言葉こそ発しないけど「よろしければ、どうぞ」と控えめな提案といった感じで、判断の余地を通行人に与えている。こうなるとティッシュを差し出す手つきまでが優しく見えてきました。これぞ観察力と自己演出の極み。グッジョブ! いい仕事ぶりを見せていただきました。

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