枝川教授は「照明には気をつけた方がいい。欧米の家庭では、夜は蛍光灯よりも薄暗い照明を使う家庭が多い。最近のスマホやパソコンではブルーライトを発しない機種も出てきているが、脳が認識する光の強さをきちんと意識して対処するのが効果的です」と話す。
身体の仕組みを意識した対策として「寝る1~2時間前に入浴するのもおすすめです。風呂から上がり、体温が下がるタイミングで眠気が強くなるからです」という。
大事なのは朝の光を浴びること
さらに枝川教授は「睡眠負債の解消を考えるとき、夜の過ごし方にばかりに目が行きますが、実は大事なのは朝、起床したときということが分かってきています」と話す。メラトニンの分泌のスイッチが入るのは朝起きて、太陽の光を脳が認識したときだという説が浮上している。例えば、朝7時に起床して太陽の光を浴びると、その14~16時間後にメラトニンの分泌が活発化するという考え方だ。
逆に言えば、朝起きても薄暗い部屋にジッと閉じこもっていると、メラトニン分泌のスイッチがしっかり入らず、睡眠バランスが崩れる懸念もあるわけだ。「朝の過ごし方は大事ですね。もちろん朝だけでなく、昼、夜と24時間のリズムをしっかりと整えることが快眠につながるのです」(枝川教授)という。
睡眠8時間でも負債の懸念
睡眠負債について、枝川教授は次のような注意点を挙げてくれた。「通常、最適な睡眠時間は7時間程度といわれますが、個人差があります。9時間、10時間の人もいます。ですから8時間寝ても睡眠負債は発生する可能性があります」という。自分が負債を抱えているかどうか、どのように判断すればいいのか。
「簡単に言えば、昼間に眠気が襲ってくるようだと負債がある懸念があります。最適な睡眠時間を知るには、対象者に『10時間でも12時間でも、眠りたいだけ寝て』と指示し、それをある程度続けてもらいます。すると、必要なだけ眠って目が覚めるようになる。それが7時間とか8時間とかであれば、それがその人に適した睡眠時間なのです」(枝川教授)。この手法で自分自身の睡眠負債を割り出して、解消法を探るわけだ。ただ、共通しているのは睡眠時間6時間未満は明らかに「からだにとってリスクだ」ということ。夏は睡眠負債に要注意だ。
(代慶達也)