有森裕子 達人ランナーが守る「マイペース」とは

日経Gooday

「マイペース」で走ることは、実は難しい(c) ammentorp-123rf
「マイペース」で走ることは、実は難しい(c) ammentorp-123rf
日経Gooday(グッデイ) カラダにいいこと、毎日プラス

今年も早いもので半分が終わりました。梅雨のこの時期、ランナーの皆さんにとっては、外で走れない鬱々とした日々が続くかもしれません。しかしそんな時こそ、駅や職場での階段の上り下りなど、普段の生活でできる体づくりを目的としたトレーニングを実践してみてください。

また、走れない時期にこそ、改めてランニングについてゆっくり考える時間を設けることをお勧めします。これまでのトレーニング記録を見直したり、ランニング関連の書籍を読んでみたりすることで、練習メニューやランニングに取り組む姿勢が変わるかもしれません。

そんな「振り返り」のきっかけの1つになるかどうかは分かりませんが、今回はよく使われる「マイペース」という言葉について、私の考えをお伝えしたいと思います。

「マイペース」は自分のペースを守ることではない!?

皆さんは「マイペース」と聞くと、どんなことをイメージされますか? マラソンのシーンでは、「マイペースを保てば目標のタイムが出るよ!」「自分のペースを守れば必ずゴールできる!」など、アドバイスや激励をするときに使うことが多いと思います。マイペースという言葉は安易に使われがちですが、実はこの「自分のペースを守る」というのはとても難しいことです。

例えば、平坦な道を1人で黙々と走るトレーニングでは、自らのペースを崩される要因が少なく、一定のペースを保つことは比較的簡単です。ランニングに適した一定のテンポを刻む音楽でも聴きながら走れば、さらに集中しやすく、自分のペースを保ちやすくなるでしょう。しかし、実際の試合では、想定外のことが次々に起こります。

ペースを乱す原因は様々です。初心者ランナーは大勢のランナーと共にスタートラインに立った途端、興奮して最初から飛び出してしまうことがありますし、周りのランナーのペースが速ければ、つられていつの間にかオーバーペースになってしまうことも多々あります。練習と違って、周りの選手のスピードが速い中で、自分だけペースを落とすことはなかなかできないものです。

反対に、雨が降って体温が下がったり、気温の上昇や強い向かい風、予想以上の急な坂道などに遭遇すれば、体力が消耗し、足の疲労がたまってペースが落ちることもあります。

マラソンは屋外の様々な環境の中で走る競技だからこそ、あらゆるトラブルが起こります。人生と同じで、何が起こるか分からない……。その想定外のことを乗り越えて走り切るのが、マラソンの面白さだと私は思っています。それだけ、実際のレースで「マイペースで走る」のはとても難しいことなのです。特に、真面目できちょうめんな人ほど、いつも通りにいかないと、調子を大きく崩してしまうように感じます。

レースでの「想定外」を乗り越える順応性を鍛えよう

マイペースで走れる人は何が違うのでしょうか。一言で言えば、順応性にたけていることだと私は思います。どんな状況でも慌てず順応できる力こそが、自分のペースを保つことにつながるのです。

では、順応性を高めるにはどうすればいいか。それはトレーニングで鍛えるしかありません。自分の調子や気分に合わせて好きなように練習を組めることは市民ランナーの特権であり、ランニングというスポーツの魅力でもあります。しかしそれは、順応性を鍛えにくいという一面も併せ持ちます。

トップレベルのランナーたちは、どんなレースでもタイムが出せるように、あらゆる条件を想定した練習を行います。雨天でも強風の中でも走りますし、疲労がたまっている中で追い込むような厳しい練習もこなします。当然ですが、好き嫌いで練習内容を選ぶのではなく、どんな環境にも順応して勝てるように、あるいはタイムを狙えるように様々なトレーニングを監督やコーチが考えて指示しているのです。

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