1年に1回「記録するだけ」でお金が育つ?
1年に1度、わが家のお金の健康度チェックをすると、いろいろなことが見えてきます。ファイナンシャル・ジャーナリストの竹川美奈子さんがおすすめするお金の健康チェックシートとは?
記録することで意識が変わる
皆さんは、以前はやった「レコーディング・ダイエット」というのを聞いたことがありますか? これは2007年に岡田斗司夫氏が著書「いつまでもデブと思うなよ」(新潮社)で紹介したダイエット法で、毎日食べたものやエネルギー量などを記録するという方法です。
別に、食べたものや体重を書いたからといって痩せるわけではありませんが、「今日は食べ過ぎたなぁ」と反省したり、「食事のバランスが悪かったな」と意識したりすることで、食生活の改善につながり、その結果、痩せるということなのでしょう。
この「記録する」という方法はお金についても有効です。といっても、レコーディング・ダイエットのように、日々使ったお金を記録する必要はありません。会社は1年に1度、決算のときに、現時点で資産や負債がいくらあるか、売り上げや最終的な利益がどのくらいになったかを発表しますよね。個人(家庭)も同じように、1年に1度、お金の健康度をチェックすればいいのです。
わが家の利益を確認する「損益計算書」
具体的には、「損益計算書」と「バランスシート」を作ります。名前だけ見ると難しそうですが、作るのはそれほど難しくありません。
「損益計算書」は、税込み年収から社会保険料と税金を引いた「手取り年収」を算出し、そこから支出を引いて、手元に残ったお金がいくらかを表すものです。会社でいえば、利益がどれくらい出ているか、ということですが、個人では、1年間にどれくらいためられているかが分かります。
加えて、「わが家はいくらあったら生活できるのか」を押さえておくことも重要です。1カ月または1年で、最低限必要な金額がありますよね。その金額を押さえておくことは、失業など何かあったときのリスクマネジメントにもつながります。
わが家の財政バランスを可視化する「バランスシート」
バランスシートは、その名の通り、財政状態のバランスを知ることができるもの。自分が持っている預金や投信、株、住宅といった資産と、住宅ローンなどの負債を一覧にした表です。住宅を購入していない人や、負債がない人は、記入するのは金融資産だけになります。
例えば、年末とか、3月末、誕生日や結婚記念日など、日にちを決めて、バランスシートを作成して、定点観測していきましょう。数字を入れた表を作るよりも、グラフ化したほうが視覚的にイメージしやすく、効果が高いと思います。
リタイアまでに健全で大きなバランスシートを作ろう
収入が増えても支出も増えていて、なかなか金融資産が増えていかないというダメなケースになっているのか、それとも毎年金融資産が上乗せされて負債が圧縮されて、健全なバランスシートに近づいていっているのか――これを年に1度、定点観測していきます。
皆さんに意識していただきたいのは、リタイアまでに資産から負債を差し引いた「純資産(正味財産)」を大きく育てていくという視点です。また、リタイアするまでにバランスシート上の「負債はゼロにする」ことも心掛けましょう。
資産形成というと、すぐに投資をしようとか、どんな金融商品を買ったらいいか、という発想になりがちですが、長期的に、家庭を経営していく、金融資産を育てていくという視点が大切です。どの会社の株を買うか、どの投資信託を買うかを検討するのはその後でいいのです。
1年に1回、バランスシートを作るだけでも、お金に対する意識が格段に変わると思いますよ。
ファイナンシャル・ジャーナリスト、LIFE MAP,LLC 代表。「1億人の投資大賞」選定メンバー、「コツコツ投資家がコツコツ集まる夕べ(東京)」幹事など、投資のすそ野の拡大に取り組んでいる。「臆病な人でもうまくいく投資法-お金の悩みから解放された11人の投信投資家の話」(プレジデント社)、「一番やさしい!一番くわしい! 個人型確定拠出年金 iDeCo活用入門」(ダイヤモンド社)ほか著書多数。
[nikkei WOMAN Online 2017年6月14日付記事を再構成]
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