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リクルートの事業を創出する力 コンサルが分析 八重洲ブックセンター本店

2017/6/23

ビジネス街の書店をめぐりながらその時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は定点観測している八重洲ブックセンター本店だ。前回のリブロ汐留シオサイト店と同じく、ここでも売れ筋に大きな変化の兆しが出ていた。昨秋以来の強力本に代わって勢いのある新刊が台頭してきているという。前回紹介したホリエモンこと堀江貴文氏の『多動力』がそのうちの一冊。客層の年齢が比較的高いこの店でも好調だ。これと並んでツートップを形成しているのが、リクルートの新規事業立ち上げプロセスを対象にしたビジネス手法の分析本だった。

■トップコンサルが立ち上げプロセスを解剖

その本は杉田浩章『リクルートのすごい構“創”力』(日本経済新聞出版社)。著者の杉田氏はボストンコンサルティンググループで日本代表を務める。いわば日本でも屈指の経営戦略コンサルタントがリクルートの事業手法とがっちり向き合って書き上げたのがこの一冊だ。焦点を当てたのは、リクルートが新規事業を創出し、維持し、成長させる手法。同社では、その仕組みがシンプルに体系化されていて、非常に理にかなっていると著者はみる。リクルートの手法を外部のプロの目で解き明かしているところが本書の読みどころだ。

著者によれば、リクルートの新規事業立ち上げプロセスは3つのステージに分けられる。3つのステージとは、ゼロを1にする「0→1」のステージと、1を10にする「1→10」のステージの前半と後半の3つであり、この生まれた事業をスケールアップし、拡大する「1→10」のステージにこそ、リクルートの強みがあると著者は言い切る。

まず原点になるのはリボンモデルと呼ばれるビジネス設計モデルだ。通常なら自社と顧客という、1対1の関係で事業を考えるが、リボンモデルでは両端に顧客と企業をおき、その間にリクルートが入る。顧客を集め動かす。企業を集め動かす。中央でその両者を結びつけることでリクルートが収益を上げる。そんな考え方だ。両端をどう拡大するか、どう動かして結び目を最大化するか、事業はこのモデルに立ち返って常に細かく問い続けられる。

■「勝ち筋」を見つけ、磨き続ける手法

3つのステージにはそれぞれ3つずつ、合わせて9つのメソッドがあり、これを駆使して世の中にまだ存在していないモデルを生み出し、ビジネスとして成立するか見極め、アイデアを事業に育て、事業の価値を定義し、「勝ち筋」を見つけ、最終的に爆発的な拡大再生産につなげる。詳細は本を読んでもらうしかないが、新規事業立ち上げの要諦がつまった経営手法が、美容室予約サイト「ホットペッパービューティー」など具体的な事業のプロセスを伴って解き明かされていく。このため、読んでひざを打つ局面の多いビジネス手法の教科書に仕上がっている。

リクルートの現役社員やその出身者もよく本を出すし、そうした本はリクルートの本社が目の前にあることもあって八重洲ブックセンターではよく売れるそうだ。だが、「この本はそうした本より売れ行きがいい。外部の目で一般化されているため、広がりを持っているのではないか」と、副店長の木内恒人さんは話す。

■20~30代向けのビジネス書に勢い

それでは、先週のベスト5を見ておこう。

(1)儲かりたいならパート社員を武器にしなさい小山昇著(ベストセラーズ)
(2)割増賃金の基本と実務石嵜信憲ほか著(中央経済社)
(3)リクルートのすごい構“創”力杉田浩章著(日本経済新聞出版社)
(4)多動力堀江貴文著(幻冬舎)
(5)さあ、才能(じぶん)に目覚めよう 新版トム・ラス著(日本経済新聞出版社)

(八重洲ブックセンター本店、2017年6月11日~6月17日)

1位と2位はランキング入りを狙ったまとめ買いが入った。このため店頭の売り上げでいうと、3位に入った紹介した本がトップだ。これにホリエモン本が4位で続く。5位は4月に訪れたときに紹介した1冊。もともとのロングセラーが新版刊行で増した勢いを持続している。表には入っていないが、7位に自己啓発系で人気のある金川顕教氏の『すごい効率化』が入るなど、20~30代が中心読者の本が好調で、売れ筋の変化を象徴している。

(水柿武志)

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