握りずしにガリ、ちらしずしに紅ショウガ 違いは何?
紅ショウガ(1)
紅ショウガをテーマにすることに際して、最初に告白しておかなければならない。私って紅ショウガが嫌いなのよ。社員食堂でも紅ショウガがたびたび登場するけれど、料理の受け渡し口でいつも「紅ショウガ抜いてください」と大音声でおらぶのである。おっと「おらぶ」は久留米弁であった。叫ぶのである。
牛丼を食べるときにも決して紅ショウガが入ったプラスチックの箱には手を出さない。
という問題も発覚したが、手を出す同人はあの容器の底の方がどうなっているかに思いをはせてみるのも一興であろう。
で、九州でラーメンを食べる際にも、紅ショウガでスープをピンクに染めたりはしない。最初から入っていればどける。
家でお好み焼きや焼きそばをつくるときも紅ショウガは買ってこない。従ってウチの子供たちは鉄板系コナモンと紅ショウガの深い関係をいまだに知らない。
でも嫌いだからといって公平を欠く書き方は決してしない。食べ物は等価である。
むしろ今回、紅ショウガを論じるに当たっては積極的に食べてみるつもりである。ひょっとして好きになるかも。だってすしのガリは嫌いではないんだもん。
では紅ショウガとガリはどこまで同じでどこまで違うかというと、同根ともいえるし微妙に違うとも言えそうである。
紅ショウガは本来は「ショウガの梅酢漬け」であり、シソとともに梅漬けの中に漬けたもの。甘酢に漬けたものもあって、これがすし店で登場するとガリになる。
『食べ物起源事典』には「ショウガの酢漬けは、関東では、薄く切りすしの添え物に、関西では、梅酢で赤くした細切れをちらし・稲荷ずしに用いる」とある。
とすると、いわゆる紅ショウガが西の文化で、同じものでも赤くないのが東の文化ということになるが、そこのところを検証してみたい。
ただし梅酢に漬かっているので、梅の香りもしてとても酸っぱいです。紅というより真紅ショウガですが、これが祖母の作るちらしずにのると最高ですよ(ピンクのしま猫さん)
しま猫さんのおばあさんはどこにお住まいなのであろうか。西日本?
本来の紅ショウガの漬け方をなさっているらしい。これなら私も食べられそう。
豊下製菓の豊下さんから以下のメール。
確かにスーパーの棚を見ているとこのような分類がよくわかる。無着色系のものはちょっと魅力。今度買ってみようかな。
でも真っ赤なものには危険が潜んでるそうである。
この表示は、おそらく被害届が殺到したメーカーが警察署に通報し、指名手配されたものと思われます。
同人の皆様、冷蔵庫に潜伏している紅ショウガにはくれぐれもご注意ください。特に業務用を購入されたデスクは、決して白い服で開封しないでください(いけずな京女43歳さん)
ぴーぽーぴーぽー。
紅ショウガと言えば、本奇行第1回のテーマ「ソースで天ぷら」に登場し地図にもなっている関西の紅ショウガの天ぷら。ちりとてちんさんのメールによると泉州のスーパーの総菜売り場でも盛大に売られているようである。
が実は東京にもある。
東京の紅ショウガ天は刻んでかき揚げにしたものであって、関西の薄切り紅ショウガ1枚揚げとは違うものである。しかも立ち食いそばという特定のポイントに出現している。
一つ目が「紅ショウガ焼き」で、お好み焼き。
二つ目が「紅ショウガ入り」の薩摩揚げ。
三つ目があの有名な「紅ショウガ天ぷら」。
そう言えば、幼少のころの自宅での「お好み焼き」で、生地の上に紅ショウガの薄切りを数枚のせて、豚ひき肉と小口切のネギをパラリと振ったものを食べていました。
…そして、極め付けは吉○家の牛丼または豚丼に大量の紅ショウガをのせた「紅ショウガ丼」(通称紅丼)、圧巻ですよ。ドンブリの表面が千切りショウガで埋め尽くされて、紅くなっていますから(島野さん)
刻み紅ショウガのかき揚げを加えると4種類になる。
「紅丼」は「べにどん」と呼ぶそうである。私が是とする食べ方ではないが、邪魔はしない。
(特任編集委員 野瀬泰申)
[本稿は2000年11月から2010年3月まで掲載した「食べ物 新日本奇行」を基にしています]
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