九州は小麦粉せんべいの牙城 日本列島せんべい地図
せんべい(10)
まず最初に、次回のテーマを発表する。
「紅ショウガ」である。
なぜ紅ショウガなのかというと、何となくである。
博多のうどん屋でうどんの友に稲荷を頼んだら、稲荷とほぼ同量の紅ショウガがついてきた。私はビックリ仰天し、両手をあげて「あれーっ」という声を発しながら左方向に倒れたのだった。
吉野家に入ったとき、隣のお兄さんが山のように紅ショウガを丼にのせ、それでご飯を半分食べてから、おもむろに牛肉でもって残りのご飯にとりかかった。私は気を失いそうになりながら両手をあげ「あらーっ」という声とともに右方向へ倒れたのである。
博多に住んでいたころ、小学生だった息子が生まれて初めて本格的なとんこつラーメンを食べるにあたり「くさい」と言いつつ大量の紅ショウガを投入し、純白のスープをピンク色にしてしまった。私は「こんな子に育てた覚えはない」とその場で前方向に泣き崩れたのだった。
デスクぎくっ ぼ、僕もピンク…。
野瀬 私はデスクを育てた覚えはさらさらない。
このように、私の紅ショウガに関する思い出は鮮烈なものばかりである。
世の中には関西の紅ショウガの天ぷらをあげるまでもなく、様々な食べ方、用い方があると思われる。そこのところを考えてみたい。
例によって現時点でVOTE項目は浮かんでいない。
アラカルト。黒はんぺんから。
高いものなら生でもおいしいのは当然ですが、法月さんの黒はんぺんは安くても大満足。本当です。本店は、清水駅の近くにあります。スーパーなどでは袋詰めで売られており、お手ごろ価格です…できたらプレゼントしたいくらいですが…。
私は旧清水市の出身で、幼少のころからはんぺんは黒いものだと思っておりました。あの白いふわふわしていて何の主張もなさそうなものが、はんぺん界のメジャーと知ったときは理解に苦しみましたが、今は仕方がないこととして受け止めております(関根さん)
私とデスクが富士駅前「金時」でいただいた「黒はんのフライ」をご覧になって、ふるさとの味を思い出されたらしい。あれは美味かったなあ。
清水は寿司の町として知名度を上げつつある。確か寿司のテーマパークがあったはず。一度行ってみたいところである。
「断じて食べ物のために旅をしてはならない」。単純かつ初歩的にして重要な教訓である。(文春文庫ボブ・グリーン著「チーズバーガーズ 反グルメ論」より)
このエッセイによると、著者が知人に誘われて「世界一のピザ」を車で1時間かけて食べに行ったら、大好きなペパロニピザがメニューになかったということらしいのですが、なにもここまで言うことはないですよね(大人気ない)。
きっと、よっぽどペパロニピザが食べられなかったのが悔しかったのでしょうね。
この人が食べ物新日本奇行やB-1グランプリの話とか知ったら、きっとひっくり返るんでしょうねぇ。
いやはや、アメリカの有名なジャーナリストでも「本当に美味しいものには旅をするだけの価値がある」ってことがわかっていないとは。同じジャーナリストとして、野瀬さんはどう思われますか?
ボビーはお茶目、ボビーはわからんこちゃん、ボビーの母ちゃん出ーべーそー。いーだっ、と思います。
しかし、店員さんは気づかないものなんですね(宮地さん)
イルカの肉が手に入ったからといっては料理の模様を写真付きで送り、富士宮やきそばの材料を売っていたからといっては調理過程の詳細を写真付きで送ってくる半ライス大盛りさんは、どうして私が喜ぶことを知っていたのであろうか。
はい、喜んでます。
「常務用ラーメン」ばんざーい。
突如として「せんべい」のVOTE結果が出た。「せんべいといえば小麦粉か米か」という設問であった。
もともと日本に中国から「煎餅」が入ってきたときは小麦粉製品であったが、後に米でも作られるようになったという歴史を持っている。そのせんべいはいまどうなっているのか。そこがVOTEの眼目である。
結論から言うと、小麦粉は頑張っているが米に押されて苦しい戦いである。小麦粉が多かった順に並べると沖縄、徳島、鳥取、青森、長崎、宮崎、岩手、佐賀、大分。
南部せんべいがある青森、岩手を除くとすべて西日本。いや主力は九州勢である。そーかー。九州は小麦粉せんべいの牙城であったか。今度自慢しよ。
逆に米せんべい絶対優勢地帯は福島、群馬、茨城、新潟、滋賀、静岡、栃木、富山、山形などなど、東日本全域および西日本の相当部分である。全国的には米せんべいの圧勝であった。
例によって東西2類型を漫然と予想していたのに九州突出という思わぬ結果になった。そして九州は小麦粉せんべいによって旧南部藩と結ばれていた。これは特筆すべきことである。うんと自慢しよっと。
(特任編集委員 野瀬泰申)
[本稿は2000年11月から2010年3月まで掲載した「食べ物 新日本奇行」を基にしています]
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