キウイ、主役級フルーツに躍進 黄緑と黄色で映える
きれいな黄緑色にかわいい模様の断面、しかも美容にもいいと人気が高まっているキウイ。2017年度は過去最高の売り上げを記録する見通し。ブームをけん引するのは新顔、黄色のキウイ。酸味が少ないため甘さが際立ち、食べやすい。人気にあやかろうと、今年の夏はキウイを主役にしたスイーツが次々と登場している。
日本は長らく、キウイといえば黄緑色の果肉のグリーンキウイが中心だった。ニュージーランド産キウイを独占的に日本に輸入するゼスプリインターナショナルジャパン(東京・港)が2000年から果肉が黄色いゴールドキウイの日本への売り込みを開始。酸味が少ない穏やかな味が受け、キウイを人気者に押し上げた。17年度の販売量はゴールドとグリーン合わせて2448万トレー(1トレーは3.6キロ)と過去最高を記録する見通し。黄色い果肉の「サンゴールド」は前年度比で29%増の1230万トレーを計画している。
洋菓子店の「キル フェ ボン」(本社=静岡市)は6~8月末の期間限定で「キウイフルーツとリンゴムースのタルト」(1ホール7344円)を販売している。グリーンとゴールドの2色のキウイが表面を覆う。カットするとピンク色のリンゴムースが現れ、かわいい色の組み合わせが楽しめる。「ゴールドキウイの登場でキウイの色の幅が広がり、彩りが魅力的なタルトを作った」(同社)という。グランメゾン銀座や青山など全国10店舗で販売する。
高級果実店の新宿高野(東京・新宿)の担当者は「ゴールドキウイの人気に比例してグリーンキウイにも消費者の注目が集まるようになった」と話す。
ビワやマンゴー、マスクメロンといった初夏を代表する果物が店頭を彩るなか、「数年前には脇役だったキウイが今は主役級」という。ゴールドとグリーンの2種類を使うことでアレンジの幅が広がった。キウイを使ったスイーツが増え、スイーツの主役を張れる果物として存在感を増している。
5月には期間限定でグリーンキウイを使ったサラダやゴールドキウイとグリーンキウイの両方を使ったタルトなどを販売した。旬のマンゴーなどを使った甘みの強いスイーツが多く並ぶ中、酸味のあるグリーンキウイを使ったメニューはひと味変わった存在となった。
ゴールドとグリーンのキウイのフルーツポンチの食べ放題イベントも実施。初の試みで「集客に不安があった」というが、当日は500人近く集まった。キウイの集客力が証明され、今度は9月1日のキウイの日に合わせてフェアを行う予定という。
ゴールドキウイはおいしさだけでなく、栄養価の高さも魅力。管理栄養士の本多京子さんは「料理をしなくても栄養素を十分に摂取できるため、若い女性を中心に注目が集まっている」と話す。
ゼスプリは7月22日、東京・表参道にキウイフルーツの専門店「Zespri Kiwi Hunt(ゼスプリ キウイ ハント)」を開業する。8月13日までの期間限定の店舗で、キウイのパフェを販売する。キウイの専門店を開くのは初の試みになる。
メニューはキウイパフェ(税込み800円)のみ。黄色いの果肉のゴールドキウイと、緑色の果肉のグリーンキウイの2種類を使い、「断面のかわいさも生かした」(猪股可奈子マーケティング部長)。味付けは3種類。ミントソース、ドラゴンフルーツやイチゴとストロベリーソース、パイナップルとブルーベリーソースと色味にもこだわり、「インスタ映え」を意識する。茶色く細かい毛に覆われ、いまひとつ写真映えしない見た目のイメージの払拭を狙う。
若者が多く集まる表参道を選んだのは、SNS(交流サイト)で影響力を持つインフルエンサーとしての若者の役割に期待するからだ。同社によるとゼスプリキウイの認知度は現在60%。残りの40%に向けて認知度を向上させたい考えだ。ホームページにはキウイを使ったレシピも公開している。シャーベットや和菓子などキウイの酸味と色味を生かしたスイーツが並ぶ。
台湾発の人気かき氷店「アイスモンスター」は7月、表参道店(東京・渋谷)などでキウイのかき氷を発売する。きれいな黄緑が目を引き、夏のかき入れ時の目玉商品として投入する。
輸入と国産を合わせた国内の果物消費量は減少が続く。総務省の家計調査によると2016年の購入量(2人以上の世帯)は、約76キロと10年前に比べ1割減った。そのなかにあってキウイは、消費量を伸ばしている。スイカやメロンなど他の夏の果物に比べ手軽に食べられ、栄養価も高いことが一因だ。
国産キウイは意外と栽培の歴史は古く、グリーンを中心に愛媛など西日本で作られてきた。人気のゴールドキウイも16年3月に福岡県農林業総合試験場が開発した「甘うぃ」が品種登録され、16年11月に初出荷された。店頭には1玉400~500円と高値で並んだ。現在の栽培面積は約12ヘクタール。今後5年間で30ヘクタールまで広げる計画だ。
東京都が開発した「東京ゴールド」は20年の東京五輪に向けて消費拡大を目指している。キウイは高い栄養価と同時に水分量も多く、選手村の食事に最適。盛んに輸出しているリンゴやモモ、ブドウに比べると存在感はまだ薄いキウイだが、東京五輪での活躍が期待される。
(金尾久志)
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