夢の車「ダンボルギーニ」 被災地に色彩を取り戻す
今野梱包社長 今野英樹氏(下)
段ボール製のスーパーカー「ダンボルギーニ」が話題を呼ぶきっかけは、人生2度目のツイートだった。「ダンボルギーニ完成しております」。今野梱包(宮城県石巻市)の今野英樹社長がツイッターでそうつぶやくと、それが次々とリツイートされ、瞬く間に広まった。単なるラッキーな出来事のようにも思えるが、じつはそこに至るまでの布石がある。今野氏は東日本大震災の前から、素材としての段ボールの可能性に注目し、災害時に避難所で使える間仕切りや仮設家具などの開発に乗り出していた。その蓄積が実ったのも、震災後だったのだ。
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2004年にトライウォール社(現トライウォール・ジャパン)と契約した後、強化段ボールを加工してオリジナルの商品をつくれないかと考え、05年、社内に専用の事業部を立ち上げました。そのために必要なCAD(コンピューターによる設計)とカッティングマシン、レーザー加工機も、借金で購入していました。BtoB(企業間取引)を生かしながら、BtoC(消費者向け取引)へと軸足を広げていくのが狙いでした。
従来の梱包事業で言えば、どんなにもがいても県内の取引先は100社に満たない。加工機を使って工作キットやアクセサリー、コースターなどのノベルティ商品を作れば、出会う人全員が、お客さんになります。それと、その頃から強化段ボールを使い、何か災害時に役立つものを商品開発できないか、とアイデアを練っていました。
強化段ボールなら軽くて、誰でも簡単に組み立てられる
強化段ボールで棚をつくっただけでは、単なる「軽くて安い家具」で終わってしまう。けれど、避難所で使う仮設の家具という位置づけならば、使用目的が明確になります。避難所で使う間仕切りなども強化段ボールで製作し、自治体に対して、いざという時のために備蓄してはどうかと提案をしていました。
震災後、仙台市から「仮設のロッカーをつくれないか」という話が舞い込んだ時も、そうした引き出しがあったから、要望にもすぐに応えることができました。震災3日後から発電機を回して工場を再開し、2週間で小学校の臨時教室に強化段ボール製の家具を納品しました。地元・石巻市では、避難所で使う間仕切りをトライウォール社の協力も得て2000人分、無料で配りました。