「見た目は文房具」の実力派コスメ SNS映えで人気に

チューブのり型のハンドクリーム、クレパスの箱に入ったマニキュア、マジックインキにしか見えないマスカラなど、見た目は文房具、中身は化粧用品という「ステーショナリーコスメ」。その意外性が受けて、若い世代を中心にSNS(交流サイト)でたびたび話題となっています。

デザインのおもしろさに目が行きがちですが、普段使い用の化粧品としても十分通用する実力派で、ファンが増えています。

一見するとただの文房具ですが、すべて正真正銘のコスメ用品

文房具と化粧品の意外な共通点から生まれたコスメ

ステーショナリーコスメの火付け役となったのが、2年前に発売された「クーピー柄カラーマスカラ」(各1500円、税別)。その名の通り、外見は、全体が芯の色鉛筆「クーピーペンシル」のケースと同じ絵柄のペンですが、中身はピンクや青、緑などカラフルな色の、正真正銘のマスカラです。発売と同時にSNSで「発色がすごい、かわいい」と瞬く間に話題となり、用意していた4色、各3000本が発売後2週間で完売。急きょ、追加で各1万本ずつ生産することになりました。

「現在までに17色がラインアップされ、計20万本を売り上げています。今人気なのは、ぶどう色の『ラズベリーローズ』と真っ白な『スノーホワイト』。ラズベリーローズはちょっと落ちついた色合いで、20~40代まで幅広い世代に人気です。有名タレントがブログや取材で使っていると公言しているのも好調の理由です。一方のスノーホワイトは、コスプレーヤーに人気です。2015年冬に発売した当時は、ほかに白いマスカラがなかったのに加え、有名コスプレーヤーのツイートで話題になりました」(商品企画・開発・広告を担当するクレアモードの化粧品広報担当者)

(左)「クーピー柄カラーマスカラ スノーホワイト」。「妖精みたいでインスタ映えする」と話題に。(右)まつげがよくのび、マスカラとしての機能や使い心地に問題なし。落とすのも簡単

この「クーピー柄カラーマスカラ」のアイデアが誕生したのは4年前、化粧品と文房具の意外な共通点を発見したことでした。

「例えばクーピー・クレパスとは『見たまま鮮やかな発色』、レーダー消しゴムとは『消しゴムのように汚れ・シミのもとを消す』といった具合に、発色や機能性へのこだわりが文具と化粧品で共通しています。そうした文具の意味やよさを生かせたらと考え、ステーショナリーコスメが誕生したのです」(化粧品広報担当者)

消しゴム「Radar」とコラボしたコスメ「レーダー薬用美白化粧水」(1850円、税別)。手に取りやすいデザインから男性の使用者が2割ほどいる

ハンドクリームをのりの容器に入れたら大ヒット

こうした文房具と化粧品の共通点に着目したのは、デンプンのりで有名な不易糊工業も同様でした。「クーピー柄カラーマスカラ」に先がけること約10年、2002年からステーショナリーコスメの開発をはじめ、のりと同じ容器にハンドクリームを入れた「フエキやさしい薬用クリーム」(発売当初は「フエキなかよしハンドクリーム」)を2008年から販売しています。

誕生のきっかけは少子化の影響で、子ども向けに作っているのりの販売数の減少は避けられないとみて、新たな販売路線の開拓を考え始めたことだったそうです。

「のりとハンドクリームは、作る工程が実はとてもよく似ているんです。どちらも原料を配合して、かき混ぜ、型もしくは容器に充填します。ただ、試行錯誤をくり返しているうちに6年たってしまいました。そこであるとき、のりの容器にハンドクリームを入れてみようか、と面白半分にやってみたんです。そうしたら3カ月で30万個と、想像以上の売り上げがあってびっくりしました」(不易糊工業の化粧品事業担当者)

(左)「フエキやさしい薬用クリーム」(500円、税別)と(右)「FC ハンドクリーム」(450円、税別)。のりの容器とまったく同じ型を使っている

流行のカラーメイクに重宝

ステーショナリーコスメは、メイクのトレンドを生み出す下地ともなっているようです。化粧用品専門店「@cosme store(アットコスメストア)」を展開するコスメネクストの広報担当・山口由香利さんはこう語ります。

「1年半ほど前に、『紺色のマスカラは白目がきれいに見える』『白いマスカラを付けるとインスタ映えする』などの理由からカラーマスカラが流行しました。この時、発色のよさから『クーピー柄カラーマスカラ』が売れたんです。今ではこうしたカラーものが定着していますね」(山口さん)

カラーマスカラ以外にも浸透したのが、カラーグロス。2015年の冬に発売されたクーピー柄のペンの形をしたリップグロスは、黒色の「ブラックグロス」や、輝く金色の「シャンパンゴールド」、ブルーに特殊な偏光ラメが入った「ミルキーウェイブルー」などのラインアップがそろいます。これらも当初用意していた各色3000本がすぐに完売しました。

(左)「クーピー柄リップグロス ジェットブラック」「ミルキーウェイブルー」(共に1300円、税別)。(右)「クーピー柄リップグロス ジェットブラック」は想像以上に黒い。2、3滴置いて唇をパクパクさせるだけで、すっとなじんだ

「発売当初は珍しさが話題でしたが、最近はブラックやラメが入ったグロスが普段使いの色として浸透してきました。昨年はRMKの商品を端緒にブルーグロスが流行し、今年1月にはシャネルがブラックグロスを発売するなど、有名化粧ブランドも次々とカラーものを展開しています」(化粧品広報担当者)

普段使いの化粧品として定番に

SNSが発達した現在、ジャンルを問わず、写真映えする見た目やあっと驚くしかけの商品が話題になります。そのため当初はステーショナリーコスメの客層として10代後半~20代半ばを想定していたといいますが、落ちついた色では高い年齢層も取り込み、40代の愛用者もいます。さらに特徴的なのが、リピーターが多い点です。

「最初は見た目のかわいさ、面白さから入った人が、使い勝手のよさにはまって繰り返し購入しています。一般の人だけでなく、タレントやメイクアップアーティストにも評判です」(化粧品広報担当者)

「『フエキやさしいハンドクリーム』も10~60代まで、幅広い世代が購入しています。見た目の面白さからギフト用に買う人も多いです。すっかり定番化したようで、ここ3年ほどは年間15万個を安定して売り上げています」(不易糊工業の化粧品事業担当者)

見た目のインパクトやデザイン性に注目しがちなステーショナリーコスメですが、幅広い世代が親しんできたブランドイメージを壊さないように、化粧品としての品質には十分注意しているといいます。使い勝手のよい本格的な化粧品として、周知されつつあるようです。

(ライター 二川智南美=かみゆ)