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高齢者の眠れる資産拡大 健康寿命を延ばし活用促す

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NIKKEI STYLE

高齢世帯に資産が集中する傾向が強まっています。資産とは、預貯金、株式、投資信託などの合計額から借入金を引いた金融資産と、住宅、宅地、耐久消費財を中心とする実物資産の合計額のことです。総務省によると2015年の家計の資産のうち、70代以上が35.4%、60代が28.6%を占め、10年の調査結果(70代以上は31.6%、60代は28.3%)を上回りました。一方、50代以下の年齢層はいずれも前回を下回りました。

大和総研の菅原佑香研究員は「30代に低所得層が増え、結婚や子育てに必要な資金が足りない」と指摘します。政府は住宅や教育資金といった目的での贈与税の非課税枠を新設・拡充し、高齢世帯から若年世帯への資産の移転を促していますが、あまり効果は表れていません。

その理由の一つは、世の中に広がる将来への不安心理です。高齢者の間でも「十分な金融資産がない」との声が多いのです。ニッセイ基礎研究所の井上智紀シニアマーケティングリサーチャーは「資産運用での成功体験が乏しく、節約志向が強い高齢者に、高額消費や資産移転を促しても効果は限られる」とみています。

高齢者の認知能力の問題もあります。日本では認知能力が低下する高齢者が急増し、65歳以上の認知症患者は25年に700万人、65歳以上の5人に1人に達するとの試算もあります。認知能力が下がると複雑な金融商品などを購入する判断が難しくなります。成年後見人を任命する制度はありますが、資産を守るのが使命の後見人は運用には慎重になりがちです。

難局を打開するために生まれたのが、老齢化の過程を研究する「老年学」(ジェロントロジー)と金融研究を組み合わせた「金融ジェロントロジー」と呼ばれる研究です。高齢者が健康に暮らせる健康寿命を延ばし、金融資産の有効活用を促す方法を、医学や工学、経済学、法学の専門家が連携して探っています。研究を主導する清家篤・慶応義塾大学教授は「高齢者の資産が預金に滞留すると投資に回らなくなる」と警戒し、健康寿命を延ばすための技術開発への支援を求めています。

清家慶大教授「生活習慣病を予防し、資産寿命を延ばそう」

 高齢世帯への資産の集中が加速しています。このままでは、経済全体に悪い影響を及ぼすとの見方もあります。どんな対策が考えられるのでしょうか。高齢者の「資産寿命」に焦点を当てた著書『金融ジェロントロジー』の編著者である慶応義塾大学の清家篤教授に聞きました。

――金融ジェロントロジーとはどんな意味ですか。

「人間の老齢化のプロセスを研究するジェロントロジー(老年学)と、金融研究とを組み合わせた学問を指します。老年学では、高齢者が健康に暮らせる健康寿命について研究しますが、健康寿命が延びれば高齢者は金融資産などを自由に運用でき、保有する資産の寿命(資産寿命)も延びると考えるのです。米国では医学、工学、経済学、法学などの研究者が連携し、学際研究が進んでいます」

――高齢者への資産の集中はこれからも続きそうですか。

「一般的にいえば資産の蓄積は年齢に比例します。高齢期になると日本の場合は退職金制度があり、金融資産に振り向けられます。ここ数年の間に、団塊世代の人たちに退職金が支給され、高齢者の比重の増加に伴って金融資産に占める高齢者の比重が高まっています。この傾向はしばらく続くでしょう」

「高齢者による資産の蓄積には、合理性がありますが、多くの金融資産を持つ高齢者の認知能力が低下するリスクがあります。金融商品を取り扱うにはそれなりの認知能力が求められます。例えば、リスクとリターンの見合いでどのような金融商品を購入するかを見極めるには、高度な認知能力が必要ですし、認知能力が大きく低下すると暗証番号を使って自分の預金を引き出すことさえ難しくなります。金融機関は倫理上の問題もあり、そうした高齢者への金融商品の販売は許されないでしょう。仮に高齢者に成年後見人が選任されても、後見人は最大限の注意を払って依頼人の資産を守らなければならないので、リスクが高い株を買うといった行動は考えにくいのです」

――どんな問題が発生しますか。

「まず、高齢者本人の豊かさに陰りが生じます。高いリターンを得られなくなったり、自分の金融資産を自由に引き出せなくなったりすれば、せっかくの資産が宝の持ち腐れになってしまいかねません。金融機関にとっても、金融サービスの提供が成り立たなくなり、日本全体のリスクマネーの比重がますます低くなる可能性があります。経済全体の投資が減り、経済成長が阻害されます」

――対策はありますか。

「だからこそ、生活習慣病を予防して健康寿命を延ばし、資産寿命を延ばさなければなりません。また、認知能力があるうちに、資産運用を委託する信託や保険契約などをしっかり結べるようにすることも大切です。金融機関が医者と提携し、顧客の認知能力に応じて個別に対応するサービスも考えられます。新しいテクノロジーにも期待できます。例えば脳血管系の障害で手が動きにくくなった人をサポートする介助ロボットが開発されるなど飛躍的に進歩しています。生命科学やロボット技術をうまく活用することによって、高齢社会で発生する様々な問題を解決する手立てになります。第4次産業革命と高齢化はウィンウィンの関係になり得るのです」

(編集委員 前田裕之)

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