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布袋寅泰・ズッケロ、日伊スター共演が開く新境地 編集委員 小林明

2017/6/23

コンサートで共演する布袋寅泰さん(左)とズッケロさん(東京・渋谷)=Photo:Michiko Yamamoto

5月29日、東京・渋谷のライブハウス。約700人の観衆が見守るステージに登場したのはイタリアの大御所ミュージシャン、ズッケロさんと日本が誇る世界的なギタリスト、布袋寅泰さん――。ズッケロさんの来日初ライブに友人の布袋さんがゲスト出演した格好だ。

ズッケロさんはマイルス・デイビス、エリック・クラプトン、レイ・チャールズら超大物アーティストと共演を続けてきたイタリアを代表するシンガーソングライター。一方、映画『キル・ビル』のテーマソングで世界的に知られる布袋さんは2012年から拠点をロンドンに移して世界進出を本格化しているさなか。まさに脂の乗り切った日伊スーパースターの共演だ。

昨年来、イタリア、英国、日本でコラボを繰り返すなど急接近する2人に互いの音楽性や現在の心境、世界戦略などについてそれぞれインタビューした。

■ギターで歌うことを発見、世界進出に心強いサポート

緊張感漂うコンサート直前の控室。グレーのTシャツにサングラスというラフないでたちで現れた布袋さんはズッケロさんとの出会いや共演の狙いについて静かに語り始めた。

――2人が出会ったのは何がきっかけですか。

友人として共演した布袋寅泰さん=Photo:Michiko Yamamoto

「英国人のプロデューサーの紹介で出会って、すぐに意気投合したのが出発点。もともとイタリアに素晴らしいシンガーがいるという噂は聞いていましたが、そのプロデューサーからセッションを一緒にやってみないかと誘われて参加してみたんです。僕は彼の音楽が素晴らしいと直感したし、彼も僕のギターをとても気に入ってくれた。それが縁でちょくちょく共演させてもらうようになりました。ピュアなミュージシャン同士の関係で会うたびに絆がますます深まっていく感じがします」

――昨年から矢継ぎ早に共演を続けていますね。

「伊ヴェローナの円形競技場やロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで開いた彼のコンサートに呼んでもらったし、伊サンレモ音楽祭でも一緒に演奏しました。また彼のアルバム『ブラック・キャット』のなかの『Ti Voglio Sposare(君と結婚したい)』でギター演奏も担当させてもらった。逆に僕のコンサートに彼をゲストとして招待したこともある。ズッケロはクラプトンやボノ(U2のリードボーカル)らとの共演ですでに有名。そんな彼と一緒に仕事できるのはとても光栄なこと。大いに刺激をもらっています」

――具体的にどんな刺激を受けていますか。

日伊スーパースター共演に観客は熱く沸いた(東京・渋谷)=Photo:Michiko Yamamoto

「彼のシンガーとしての豊かな表現力にとても感銘を受けました。彼には僕のギタリストとしての面白さを感じてもらっているんじゃないでしょうか。僕のギターはどちらかというとリズミカルでエッジの効いたカッティングが持ち味。これまで彼の特徴である歌い上げるソウルフルな音楽はあまり演奏することがなかったので、僕のなかの“歌心”というか、『ギターで歌う』という新しい音楽性をうまく引き出してもらっているなと感じます」

「彼と出会うまでは、イタリアというとオペラなどクラシック音楽のイメージが強かったし、言語の問題もあってイタリアのポップスにはあまりなじみがありませんでした。でもズッケロはロック、ブルース、ソウルなど様々な音楽の要素をミックスし、イタリアで新たな現代音楽を確立したフロンティア。自分の世界を切り開いてきた独自の歌の力がある」

■『キル・ビル』で盛り上がる観衆、もっと自分の名を世界に広げたい

――伝説のロックバンド「ボウイ」を1988年に解散後、ソロ活動を開始。2012年に家族とロンドンに移住し、世界進出を本格化させています。

「日欧でアルバムを出したり、世界でツアーを開いたりしてきましたが、僕のことを知らない人はまだまだ多い。ズッケロは国際的な知名度も高いから、彼と共演することで僕の音楽を海外へ広めるのに心強いサポートになってくれています。一方、ズッケロは日本ではまだ知られていないから、僕と共演することで彼をサポートすることができる。彼と一緒に演奏するのはすごく楽しいし、相互にサポートできるメリットも大きい。彼のおかげで僕の名前は徐々に世界に広がっています」

――2003年のクエンティン・タランティーノ監督の映画『キル・ビル』のテーマソングをギター演奏したことで大ブレークしました。

「海外のコンサートで演奏すると、いまでも観衆がワッと盛り上がるのは大変ありがたいことですね。ただ僕の音楽だと知っている人はまだ少ない。今後もやるべきことがたくさんあるので挑戦はこのまま続けたい。それが拠点をあえて海外に移した意義だと思う。様々なビッグネームとコラボしながら、自分の音楽を世界に広げるのが僕の使命だと信じています」

■アルバム3枚目でブレーク、布袋は「伝説的ミュージシャン」の一人

布袋さんと共演したズッケロさんもコンサート直前にインタビューに応じてくれた。

――音楽を始めた出発点はいつ、何だったのですか。

来日初ライブ直前の控室で話すズッケロさん(東京・渋谷)

「11歳のときに自宅の前にある教会で音楽を聴いてその魅力に引き込まれました。最初はオルガンに興味を持ち、バッハなどのクラシック音楽を見よう見まねで弾いていた。続いてギターが欲しくなって父親に買ってもらい、やがてサクソホーンやドラムなどにも手を広げ始めた。仲間とバンドを組んで活動しているうちにいずれは音楽で生計を立てたいと考えるようになっていたが、歌手になるとは必ずしも決めていなかった。最初のアルバムはそれほどヒットせず、3枚目の『Rispetto』などのアルバムがブレークして知名度が一気に高まりました」

――どんな音楽を追究してきたのですか。

「ロック、リズム&ブルース、アフリカ音楽、イタリア音楽……。あらゆる現代音楽のミックスを追究しています。小難しい哲学というよりも、むしろ人々が僕の音楽を聴いて単純に楽しんでもらえればいいと思っています。それが僕が音楽に込めたメッセージ。いま世界情勢は劇的に変動しているし、音楽が世界にもたらす影響は大きいと思うが、音楽に特別な政治性を持たせるのは商業面を考えると難しいのが実情です」

――布袋さんとの共演で得るものはなにか。

「海外のスターとコラボすることは自分の音楽性に幅を持たせたり、プロモーションしたりする意味で効果が大きい。これまでマイルス・デイビス、エリック・クラプトン、レイ・チャールズ、ボノ、スティング、B.B.キング、ポール・ヤングやテノール歌手、パバロッティら数々の伝説的なミュージシャンと共演したしたが、いずれも音楽家としてリスペクトしており、友情を培ってきた。布袋もその一人だと感じている」

しわがれたパワフルな歌声を披露するズッケロさん=Photo:Michiko Yamamoto

「布袋のギターには独特の哀感があり、私が求めてきた音楽に新たなスパイスをもたらしてくれる。音楽に真摯に向き合う姿勢は人間としても尊敬できるし、彼の家族と食事をしたりして交流を深めてきた。これからも様々な舞台で布袋と共演を続けたい」

このインタビューの後、赤いシルクハットと黒いロングコートに身を包んだズッケロさんと白いウエスタンシャツに着替えた布袋さんは「Ti Voglio Sposare」「Partigiano Reggiano」などのヒット曲をステージで次々に演奏。

味わい深いパワフルな歌声とむせびなくような情感あふれるギターの音色で、総立ちになった観客を熱く沸かせていた。

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