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「資産形成を早く始めろ」と言うのは正しいか?

日経マネー

2017/7/19

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日経マネー

[親父の悩み]自分の経験から言っても、「投資は早くから始めた方がいい」というのは間違いない。だが、就職したばかりの息子に「今から投資を始めろ」と言ったら「そんなのは早過ぎる」と反論された。どうすればいいのか……。

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■「時間を味方に付ける」意味

イラスト:ふじわらかずえ

資産形成では「時間を味方につける」という言葉がよく使われます。少しでも早く投資を始めれば、運用で得た収益を再び投資する複利効果を生かす時間が長くなり、最終的に資産形成の大きな力になるからです。その点から見ると、20代でも老後に向けて早くから資産形成を始めることは重要だといえます。

年率3%で運用できる金融商品に25歳から毎月2万円を65歳まで40年間投資をした時の残高は、税金や手数料を考慮しなければ1900万円弱に達します。35歳の人が同じようなやり方で資産形成をしたとすると、65歳時点の残高は1200万円弱です。10年間の拠出額の上乗せ分240万円を念頭に入れても、この差はかなり大きく、10年早く始める効果が大きいことが分かります。

■資産形成にどれだけ充てる?

ただ、資産形成を考える時にもう一つ大切なのが、いくらの金額で資産形成をするかです。言い換えれば、毎月2万円を資産形成に充てるのか、それとも3万円なのか、ということです。

別の言い回しをすれば、「給料の何%を資産形成に回すか」ということでもあります。海外ではこれをSavings rate(セービングスレート)と呼んでいます。「資産形成に回す資金額=所得×Savings rate」なので、さしずめ「資産形成比率」とでも呼びましょうか。

英国では2018年までに全ての企業が企業年金を導入することが義務付けられ、その年金への月額拠出金額の最低水準が8%と決められています。また、米国ではこの「資産形成比率」の目標を15%にすべきだとの考え方も提示されています。日本ではこうした資産形成比率の議論はあまりなく、金額での議論が多いように思います。

ちなみに年間所得400万円の人が月額4万円を資産形成に回すとすれば「資産形成比率」は12%になります。3万円なら9%です。比率で考えるのは所得が上がればその分、資産形成に回す資金も増やすことができるという考え方が背景にあります。若い人にはかえって分かりやすいのではないでしょうか。

■所得増は資産形成の近道

ここで注目したいのが、所得が多くなるとその資産形成比率そのものを上げやすくなることです。どういう理屈なのでしょうか。

所得を引き上げることが資産形成に有利になるという、具体的な例を挙げてみます。上の図を見てください。青のパターンは、22歳で年収250万円、その後30歳で300万円、そこから先は直線的に年収が増えて65歳の時点で660万円になるような人物を想定したものです。

その間、年収の10%を資産形成に回し、年率3%で運用したとします。この場合は、65歳の時点での資産総額は約3500万円になります。

イラスト:ふじわらかずえ

一方、赤のパターンを見てみましょう。22歳で年収250万円、30歳で300万円は青のパターンと同じですが、20代では資産形成資金を自己投資、つまり将来の年収を引き上げることに費やしたと想定します。その結果、年収は青のパターンよりも高い伸びとなり、65歳で1100万円まで直線的に上がっていくと仮定します。この場合は資産形成を始める時期は30歳からと青よりも遅れます。最終的な資産総額はどちらが多くなるのでしょうか。

答えは赤のパターンです。年収が青より高いため、資産形成に回せるお金は増えているわけで、Savings rateも15%に高めています。その場合の65歳時点の資産総額は約5400万円。何と2000万円弱もの開きが出るのです。

将来を含めて所得(月収)を増やすための努力、つまり自己投資は、将来の資産形成の金額を増やすことにつながります。例えば、英語でビジネスができるようになるとか、統計学の知識を習得することで営業データの分析ができるようになるとかはその典型でしょう。若い時ほど、色々なタイプの自己研さん、自己投資に取り組める余地はあるはずです。その時の努力が所得増につながれば、将来の資産形成にも有利になるのです。

資産形成の力になるのは、単に長く投資をするというだけではありません。年収を上げる努力や、その収入からどれくらい資産形成に資金を回すかも大きな影響を持っていることが理解できるかと思います。資産形成は金融資産への投資だけでなく、自己投資とその効果も含めて総合的に考えていきたいものです。

【こんなふうに伝えよう】

資産形成には、運用する年数と運用資金の額が大きく影響します。単に「早くから始めればいい」だけではなく、「いくら投資するか」も大切。「資産形成比率」という考え方を基に所得を上げることも大切だと伝えてください。

イラスト:ふじわらかずえ
野尻哲史
フィデリティ退職・投資教育研究所所長。一橋大学卒業後、内外の証券会社調査部を経て2006年にフィデリティ投信入社、07年から現職。アンケート結果を基にした資産形成に関する著書や講演多数。

[日経マネー2017年8月号の記事を再構成]

日経マネー 2017年8月号

著者 : 日経マネー編集部
出版 : 日経BP出版センター
価格 : 730円 (税込み)


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