2017/6/22

投資道場

竹川 そうならないために、中小型株ファンドなどでは一定の上限額を設定しています。ところが、かつて多額の資金を集めた某ファンドなどは、販売会社からの要望に負けて、結局その上限額をどんどん上げてしまったから問題で。

岡本 お客さんが求めていたら売りたいですからね。「なんで上限あるの? けち」って言われますよ(笑)。まあ、それで買わなくて良かったというケースも多いですけどね(笑)。

竹川 結局、そのファンドはひどい運用成績になってしまいましたが……。

長期だけではダメ、分散も

――分散投資の方法について、岡本さんは(本の第2章で)公社債と世界株の2つを持てばいいと説明されています。

岡本 誤解がないように補足しますと、「2つの投信」ではなくて、「2つの資産クラス」です。日本の投信で世界全体に投資できるものはないので、竹川さんが(本の)第3章で説明されているように、必然的に何本かを組み合わせる格好になります。

資産運用の第一歩は、預金の一部でグローバルな株式インデックスを積み立て始めること。最初は残り全部が預金でもいい。特に今は預金も債券もほとんどゼロ金利のようなものですからね。そして、次に、残りの預金を公社債投信にしていく。まずは、この2つの資産クラスで「コア」をきちんと作ることだと思います。それがある程度できあがってきたところで、次のステップとして株の個別銘柄やってみるか、という話になるのではないでしょうか。退職後のための資産形成をしようというとき、最初からそちらに行ってしまうと、「次に上がりそうな銘柄は何ですか」という安易な発想になってしまうんですね。まずは、とりあえず世界中の株を全部持っておきましょうと。そうすれば、イギリスがEUから離脱しようが、アメリカの大統領に誰がなろうが、関係なくずっと持っていればいいんですよ。

大江 長期投資が良いと言いますが、世の中には長期投資原理主義のような人がいて、「長期で持っていれば何でももうかるんだ」と勘違いをしています。けれど、長期投資で利益が出るのは、期待リターン(将来得られるであろう収益)がプラスのマーケットだけなんです。期待リターンがマイナスであれば、長く持てば持つほど損は大きくなっていくわけです。しかし、期待リターンの過去データは今までの結果であって、これからどうなるかは誰にもわかりません。だから分散投資をしているわけです。長期投資は分散投資と組み合わせて初めて効果が出るものであって、長期投資だけでも分散投資だけでもダメ。両方ミックスして考えていかないと。

馬渕治好さん

岡本 リーマン・ショックのときによくあった議論に、「株も下がった、債券も下がった、あらゆる資産がみんな下がった。だから分散投資なんてダメじゃないか」というものがありましたね。

竹川 バランス型投信もダメだと言われましたね、あのときは。

岡本 大江さんがおっしゃったように、分散投資と長期投資の両方をやらないとダメなんです。分散したものを長期で持つということでしょうね。分散と長期は合わせて1本です。分散投資がちゃんとできているかどうかの目安は、定期的にモニタリングしたときに、自分が持っている資産の中で下がっているものがあるということ。全部上がっているときは注意が必要です。下がっているものがあったら、自分のポートフォリオはちゃんと分散されているなと安心していいのです。

大江 マーケットのここからここまで、と切り取ったら、どんなことでも言えるわけですよ。その中で一番上がっているものだけを買えばいい。そういう議論をしても意味がないですよね。マーケットは連続しているものですから、そういう観点で見ないと。たとえば、リーマン・ショックのあとの半年、2008年10月から09年3月までを見るとすべての資産がダメですが、そこからあとの動きはバラバラになっていますからね。

竹川 積立投資で言うと、リーマン・ショックのときは投信の積み立てをやめてしまったり、解約してしまったりした人が結構いたんです。やはり怖くなるんですよね、どこまでも下がるように思えて。でも、そうした人たちは後悔しているはず。早い時期に少ない金額で失敗経験をしておくと、次に急激な下げがあったときには、分散投資をしていたらきっと続けられると思うんです。若いうちに「ここで投信を解約して大失敗したな」というような経験をすることで、価格の変動にも慣れていきますから。

運用会社にも目を向けるべき

――(本の)第3章で投信のコストが下がってきているという説明がありましたが、投信の世界は変わってきているんでしょうか。

竹川 二極化していますね。インデックスファンドに限って言えば、運用管理費用(信託報酬)の安い確定拠出年金(DC)専用ファンドが一般向けに発売されたり、当初設定された運用管理費用を下げたりする投信が出てきたのは良いことだと思います。しかし一方で、通貨選択型をはじめ、より複雑な仕組みの投信が増えて、コストが高くなってきている面も。10年前に比べると、いっそう二極化が進んだと感じますね。

馬渕 そういう傾向はあるでしょうね。

竹川 ですから、どちらを買っているかはとても大きいと思います。

大江 DCの運用商品にも二極化が見られます。運用商品の除外ができないので、古い時代のすごく高い信託報酬のTOPIXインデックスファンドと、最近のすごく安いものが同じプランの中で並んでいるということに。初めての人がファンドの名前だけを見たら、どちらもTOPIXで区別しにくいですから、うっかり地雷を踏んでしまうことがあるでしょうね。

岡本 そうか。運用商品の地雷除去ができないんですね。

竹川 これまで加入者全員の同意が必要でしたからね。法改正により、商品選択者の3分の2の同意で商品の除外ができるようになる予定です。

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