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サイボウズ、賃金テーブル捨てた! 給与どうなった?

サイボウズ 青野慶久社長インタビュー(後編)

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NIKKEI STYLE

もっとも柔軟な「働き方改革」を実現し、離職率を28%から4%まで改善したサイボウズ前編は「落ち着け!経営者 その働き方改革、間違ってます」)。IT(情報技術)や新しい人事制度の導入、ルールの整備などは多くの企業が進めていることですが、最大の要となるのは「評価制度、報酬制度」です。ここが改革されなければ、いくらルールを設けても何も変わりません。働き方改革は給与を下げるのか? 最大の難関、「評価と報酬」はどうなるのか?

サイボウズでは、どのような評価制度を取り入れたのでしょうか。青野慶久社長に詳しく伺います。

条件が違いすぎると社員を比較できない

白河(敬称略、以下同) 働き方改革を進めていくと、最後には評価制度や報酬制度を見直さなければならなくなります。しかし、日本の場合は、労働組合の抵抗が強くて、なかなかそこまで手が回らず、最後になるケースも少なくありません。

本当は、評価制度の改革から始めた方が早いんですよね。なぜかと言うと、「残業時間を減らして、残業代がなくなってしまったらどうするんだ」という抵抗勢力が出てくるからです。

いくら残業時間を減らして、生産性を高めて、成果を上げたとしても、給料が減ってしまってはモチベーションが下がるだけ。継続できません。

青野 そのままではモチベーションが上がりませんよね。

白河 そこで、評価と報酬をどう設計するのかという課題が、働き方改革の最も難しい問題です。完全アウトプット評価とか、時間あたり生産性評価とか、各社いろいろとやっています。どうするべきでしょうね?

青野 日本企業の多くは、労働時間と給与、年功と給与が連動しています。どれだけの時間をかけて会社に尽くしてくれたかが、給料と比例するようになっているんです。

そこを切り離さなければ、短時間で効率よく業務をこなしても、報酬が増えないというモデルになってしまいます。

白河 サイボウズでは、どうされていますか。

青野 当社は、市場性という概念を取り込んでいます。例えば、短時間勤務で週3回の在宅勤務をしている、30歳のプログラマーのAさんが転職した場合、年収がいくらになるのか。逆に、Aさんが当社に転職してきたら、僕らは年収いくらでオファーするだろうか。需給で決まる市場性を軸に給与を決めるようになりました。

白河 それは、試行錯誤をした末にたどりついた制度ですか。

青野 そうです。働き方が多様化していきますと、条件が違いすぎて、社員同士を比較するのは難しくなってきます。勤務時間が長い人、短い人、在宅勤務の人など、同じ給与テーブルで比較することが難しい。ですから、その人の給料を決める場合は、市場性を基準にするしかなかったんです。

もちろん、これがいいかどうかは別です。例えば、今はプログラマーの市場価値が高い。能力に関係なく、プログラマーというだけで給与が上がります。また、転職が難しくなる40~50代ですと、市場価値が下がってきますから、当然、給料も下がる傾向があります。

これは決して甘い制度ではないんです。自分の市場性を保つにはどうすればいいかということを常に考えていないと、一定の年齢を超えた時に給料が下がっていきます。

僕ら自身、良い制度とは全く思っていません。ある意味、格差を助長するからです。給与が上がる人はどんどん上がっていきますが、下がる人はどんどん下がっていきます。そこは、国の社会保障を整備して、一緒に回していく必要があると考えています。企業がその部分を支えてしまうと、資本主義との間で歪みが出てきてしまうからです。

社員は給与の交渉ができる!

白河 確かに、これは厳しい制度だと思います。ただ、社員の方から「給料を上げてください」と交渉することもできるようになりますよね。

青野 意外とそういう社員は多いです。各々が転職サイトに登録して、自分の市場価値を意識しながら交渉してくるんです。それは、とてもいい関係性だと思いますね。

今までは、「あなたはこの賃金テーブルで、ゆくゆくは年功序列で昇給していくんだから、今は評価されなくても我慢しろ」と言われてきました。でも、そういうモヤモヤを感じることなく、社員たちは「僕は、これだけの年収をもらえる人材ですから、昇給してください」と言えるし、納得がいかなければ転職してしまえばいいんです。

もちろん、会社から与えられる報酬というのはお金だけではなくて、働く場所やスタッフ、事業内容、社内の制度など、色々な要素があります。そこを加味するのは難しいところではありますが、フェアに交渉できるのは、すごくいい環境ではないかと思います。

白河 他社から高いオファーをされても、サイボウズには他にはない「働き方」がある。お金だけではない優位性がありますからね。

青野 それと、自分の市場価値を意識すると、資格を取得したり、副業したり、人脈をつくったり、実績を上げようとしたりして、自分のバリューを高めようとしますよね。それぞれの社員が自立し始めるんです。ここが、すごく大事なところだと思うんです。

例えば、明日サイボウズが倒産しても、うちの社員の多くは困らないと思います(笑)。

白河 あるIT企業の社長さんから、こんな話を聞いたことがあります。1997年に山一証券が破綻した時、彼は「さぞかし優秀な人材が流れてくるだろう」と思って、ずいぶん面接をしたそうです。でも、「あなたは何をしてきましたか?」と聞くと、「私はA支店の支店長でした」としか言えなかった人が多くて、結局はほとんど採用できなかったというのです。

青野 今、問題になっている東芝でも、同じリスクがあると思います。今まで、社内のことだけしか分からない人たちが、突然転職しようと思うと、何もアピールできないでしょう。

副業は本業の「敵」ではない

白河 先ほど、副業というキーワードが出ましたが、副業OKにすることで、メリットはありましたか。

青野 当社の社員に、中村龍太という者がいまして、彼は農業を副業にしています。週のうち4日はサイボウズに勤務し、残り3日が農業で、休みがないんです。

農業をやりながら、会社でクラウドサービスの開発をやっているんです。彼はクラウドサービスを使って、効率の良い農業経営をしている。栽培から販売まで、ITを駆使しているんです。

それが、思いもよらない効果を生みました。農業とクラウドサービスを語れる人物など国内探しても彼くらいしかいないから、農業界でだんだん知名度が上がってきたんです。今、彼は農業のイベントで講演や司会などをやっています。

僕らにとっても、メリットがありました。当社のソフトが、農業法人にも売れるようになってきたんです。彼が「副業」ならぬ「複業」をしてくれたおかげで、2つの業界の間にブリッジがかかった。

すると、僕もモードが変わりますよね。みんなもっと複業しろと。「お前は不動産業に行け」とか。僕は、イノベーションってこういう感じだと思うんです。

左端が中村龍太さん。NECや日本マイクロソフトを経て、2013年にサイボウズへ転職。後に農業のNKアグリの社員として契約、リコピン人参を栽培している。青野社長をはさんで右から2人目が竹内義晴さん。新潟に住みながらサイボウズで複業。NPO法人しごとのみらい理事長。「楽しくはたらく人を増やす」が活動のテーマ。お二人が取材現場を偶然通りかかったので撮影させていただきました。右端が広報の江原なおみさん。白河さんがあとがきで紹介したように、「キャリアママインターン」で入社。サイボウズの多様性を象徴する1枚の写真(写真:吉村永)

白河 前回もテーマに挙がりましたが、働き方改革に取り組む経営者を取材すると、評価制度と報酬制度さえしっかり見直せば、改革の混乱期を乗り越えた後、新しいモデルが浸透してしまうんですよね。ある意味、従来の古い働き方ってただの「習慣」だったのかなと思うことがあります。

それに関連して、ある広告会社の社長さんから興味深い話を聞いたことがありました。「働き方改革を進めても、取引先がみんな長時間労働をしていたら、うまくいかないんじゃないですか?」と尋ねたことがあったんです。すると、彼は「取引するクライアントが変わるんですよ」と。すごく印象深い話でした。

すでに、働き方改革をした企業同士の「ホワイトサプライチェーン」のようなものが回りつつあるのかもしれません。

働き方改革を進めると、取引先も変わっていく

青野 長時間労働の問題を突破できない経営者の言い訳の多くが、それですよね。「うちの仕事は医者が相手だから、夜じゃないと営業できない」とか。そんなことを言い出したら、いつまでたっても改革は進みません。まずは、そういう取引先と付き合うのをやめたら?と思います。

白河 働き方改革は、1社だけで終わらせるのは難しいんですよね。上流、中流、下流、連携して仕事が流れていくので、すべてを巻き込んでいかなければ進みません。逆にホワイトはホワイト同士でやっていくと、どんどんブラックはブラック同士という悪循環になる。でも一度「時間資源」に着目すると、後戻りできないんですね。自分の時間を大切にしない人は、人の時間も大切にしないから付き合えなくなるんです。

青野 IT業界だと、米国のアップルやマイクロソフトなんて、ものすごい収益と利益率ですよね。以前、僕がシアトルのマイクロソフト本社を訪ねた時、平日の午後だったんですが、キャンパスの中で家族を連れて散歩している社員や、バーベキューをしている社員を見かけました。アップルでも、社内でみんなバスケットボールをしているわけです。

僕らは、この人たちに負けているのかと。彼らは、時間と成果が結びつかないビジネスモデルをつくっているということですよね。逆に言えば、時間のゆとりがあるから、面白いアイデアが生まれてきて、付加価値の高いサービスを作り出すことができる。そのサイクルに入らなければいけません。

時間と成果が結びつかないビジネスモデルへ

白河 日本は長時間働いた方がいいというモデルにしてしまったからいけないんでしょうか。

青野 そのモデルでは、人件費の安い国には絶対に勝てません。時間で解決できる仕事は、どんどんAI(人工知能)に置き換わっていきます。人間じゃなければできない仕事、例えば発想力、創造力が物をいう仕事にフォーカスしていかなければならないと思います。「竹やりで戦う方法」は、もうやめるべきです。

あとがき:サイボウズは本当に働き方改革の未来形です。「副業してます」という人だけでなく「サイボウズが副業です」という人もいる。応対してくれた広報の方も「16年ぶりに正社員で働きます」というブランクがあるワーキングマザー。2016年の「キャリアママインターン」という、ブランクのある女性にまずはインターンとして働いてもらうプロジェクトから、正社員になった人でした。

今マスコミは「副業兼業」や「残業削減」「ITツール」、または「週休3日」などのわかりやすい、一部を切り取った働き方改革を報じています。しかしそれはプロセスであり、一部でしかない。最終的には社員の一人ひとりが人材開発され、チームや組織がスムーズに回るようになる。多様な社員が自律的に働き、それが利益や高い生産性につながるという好循環。これが働き方改革の成果ではないかと思っています。

白河桃子
 少子化ジャーナリスト・作家。相模女子大客員教授。内閣官房「働き方改革実現会議」有識者議員。東京生まれ、慶応義塾大学卒。著書に「婚活時代」(山田昌弘共著)、「妊活バイブル」(講談社新書)、「産むと働くの教科書」(講談社)など。「仕事、出産、結婚、学生のためのライフプラン講座」を大学等で行っている。7月16日に「御社の働き方改革、ここが間違ってます!残業削減で伸びるすごい会社」(PHP新書)が発売。

(ライター 森脇早絵)

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