ダイソン新スティック掃除機 上位の機能を安価で
ダイソンがコードレススティック掃除機の最新モデル「Dyson V7」シリーズを発表した。メインのヘッドにカーペット向けの硬いナイロンブラシを搭載した「ダイレクトドライブクリーナーヘッド」を付属する「Dyson V7 Animalpro」と、大きなゴミから小さなゴミまで同時に吸い取れる「ソフトローラークリーナーヘッド」を付属する「Dyson V7 Fluffy」の2機種。2017年5月25日発売で、直販価格は2機種とも6万5800円だ。
V7シリーズは、2015年5月に発売されたコードレススティック掃除機の現行エントリーモデル「Dyson V6」(直販価格5万1800~7万4800円)と、2016年5月に発売された現行ハイエンドモデル「Dyson V8」(同7万6800~9万6800円)の中間の価格になる。
ゴミ捨て機構やワンタッチでアタッチメントを取り外せる機構など、V8で大幅に改善された機構を踏襲。また、V6は最長20分、V8は最長40分の運転が可能だが、V7はV6に搭載する「DDM(ダイソンデジタルモーター) V6」を改良した「DDM V7」を搭載し、最長30分の運転が可能になった。
ダイソン フロアーケア部門のグローバルカテゴリーディレクターを務めるジョン・チャーチル氏はV7の強みについて次のように語った。
「V7はモーター制御を完全に変えたことで、V6の20分から30分に運転時間を延ばした。また、V7はV6より約50%静かになり、V8に搭載されているゴミ捨て機能も搭載した」(チャーチル氏)
V7はV6に比べてスムーズな空気の流れを作っただけでなく、吸音材を多く採用し、モーターの配置も変更した。開発においては、20人のエンジニアが約800のプロトタイプ製品、1000個以上のバッテリーパックをテストしたという。
"日本征服"への大きな一歩
Dyson V7は、V8の大きな強みであるアタッチメントの脱着やゴミ捨てのしやすさ、静音性と、低価格なV6の"いいとこ取り"をしたモデルだ。
運転時間が長いV8のほうがバッテリーが大きくて残量表示が分かりやすいこととロゴが異なる以外、デザイン面においてもV8と全く違いはない。いわば「V8の廉価版」といえるだろう。
意地の悪い言い方をすれば、単なるマイナーチェンジモデルであり、単体で見るとイノベーションは感じられない。しかしビジネスとしては大きな役割を担う"戦略的モデル"といえる。
発表会に登壇したダイソン日本法人の麻野信弘社長は次のように語った。
「2018年でダイソン日本法人は20年目を迎える。2016年、18年目にしてやっと掃除機トータルの国内市場で金額だけでなく数量でもナンバーワンシェアを獲得した。現在では掃除機の国内販売のうち半分以上がダイソンで、金額では60%を超えている。昨今コードレス市場が伸びているといわれるが、われわれが市場を創造したといっても過言ではないと思う。日本では320万世帯がダイソンのコードレスを使っているが、日本の家庭は全部で4000万世帯あるので、まだビジネスを伸ばす機会があると思っている」
そこで大きな役割を担うのがDyson V7というわけだ。もともとダイソンは「価格は高いけれど高性能」ということで、情報感度が高くて新しいものに興味を持つ、いわゆるマーケティング用語におけるイノベーター、アーリーアダプター層に受け入れられてきた。
国内のコードレススティック掃除機の数量シェアで50%を超えたということは、すでにアーリーアダプター層に追随するアーリーマジョリティー層にまで受け入れられていることは間違いない。とはいえ、コードレススティック掃除機を使っているユーザー自体が、全体的に情報感度が高い層であることを考えると、まだシェアを伸ばせる可能性は十分にある。
直販価格はV6が5万1800~7万4800円、V8が7万6800~9万6800円と、大幅な開きがあるわけではない(V6の最低価格とV8の最高価格には大きな開きがあるが)。しかし国内大手メーカーがコードレススティック掃除機に注力している状況下でシェアをさらに伸ばすためには、さらなるラインアップの拡充が必要になったというわけだ。
V6は約2年前に発売した廉価版で、搭載するDDM V6もV8に搭載するDDM V8に比べると劣る。しかしV6用に開発したDDM V6モーター、V8用に開発したゴミ捨て機構やアタッチメントなどを再利用することで、先進的な性能とコストパフォーマンスの高さを両立することが可能になった。
一般消費者は「性能は低くても低価格ならいい」というわけでも、「高性能なら高価格でもいい」というわけでもなく、やはり常に高コストパフォーマンスな製品を求めている。競争が激しくなった市場の中で、自社になかった隙間を埋めるという意味では、V7は大きな役割を果たすことだろう。
「コードレススティックとキャニスターを比べると、コードレスが増えている。日本ではサブだけでなくメインとして乗り換えられる方が多く、2017年は40%程度がコードレススティックになると見ている。日本メーカー各社も力を入れた結果、平均単価はコード付きより高くなっている。移行が進むにつれて市場が拡大すると予想されているし、このままで行ったら7割、8割までコードレスになるかなと思う。すべての掃除機のなかで50%のシェアを狙っていきたいと考えている」(麻野社長)
モーターとバッテリーを自社開発
発表会でチャーチル氏は「Dyson V8はこれまでの中で最も売れ行きの早い掃除機で、さまざまな国でたくさんの成功を収めた。英国、フランス、ドイツ、オーストラリア、中国、日本、台湾、韓国のコードレス掃除機市場において市場のリーダーになっている」と語っていた。
V7はV8の利点を踏襲したモデルだが、その大きなポイントは「静音性」と、ゴミ捨てのしやすさやアタッチメントの脱着のしやすさといった、「使い勝手の良さ」にあるという。
静音性については「フロアがフローリングかカーペットなのかによって違いはあるが、フローリングの多い日本や中国は音に対して敏感」とチャーチル氏は語る。
「住宅が密接した国も同様。技術に対する成熟度にもよるが、日本の皆さんは『いい技術=より静かな技術』だと考えているようだ。パフォーマンスを妥協しても、静かな製品を好む傾向にある」(チャーチル氏)
スタンド型のコードレス掃除機を発売する予定はないのかという質問も出たが、チャーチル氏は「階段を上ったり天井を掃除する際にはバランスが大切で、上げ下げする際に軽く感じられる」と現状のスタイルについてのメリットを語ったが、「常にイノベーションを追求しており、さまざまなフォーマットを検討していく」とのことだった。
(文・写真 安蔵靖志)
[日経トレンディネット 2017年5月25日付の記事を再構成]
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