人類史を覆す? 30万年前の化石はホモ・サピエンスか

日経ナショナル ジオグラフィック社

2017/6/26

ユブラン氏は、ジェベル・イルード遺跡のことを知って以来、この遺跡の発掘をやりなおすことを熱望していた。そのためには、遺跡のある地域までの道路を再建し、200立方メートルもの岩砕を慎重に除去する必要があったが、彼は2004年にモロッコの地元当局を説得し、再発掘を行えることになった。

嬉しいことに、鉱山から出たがれきの下に考古学遺跡が部分的に残っていて、多数の石器、ヒトが火を使っていたことを示す豊富な証拠、下顎骨と脳を覆う頭蓋の一部が見つかった。

ジェベル・イルード遺跡で新たに発見された化石を見る古人類学者のジャン=ジャック・ユブラン氏。この人類が、ホモ・サピエンスの最初期の進化段階にあると主張している。(PHOTOGRAPH BY SHANNON MCPHERRON, MPI EVA LEIPZIG)

加熱された石器が手がかりに

石器と骨が同じ岩石層から見つかったおかげで、ユブラン氏のチームは、石器から化石の年代をより正確に決定することができた。

ジェベル・イルードのたき火のまわりに無造作に置かれた石器は、火によって加熱されていた。一般に、鉱物は自然放射線を吸収して結晶内に電子を蓄積していくが、加熱されると、それまで蓄えられてきた電子はすべて放出されてゼロになる。そうした原理を利用した熱ルミネッセンス年代測定法を用いて、ユブラン氏のチームは、たき火のまわりで石器が熱せられた時期を約31万5000年前と推定した。

ユブラン氏は2007年の研究でもジェベル・イルード遺跡の年代を推定しているが、今回は前回の結果より2倍も古い数字になった。この不一致は、前回の研究であまり厳密でない放射能モデルを用いたことによって生じたものだ。前回のデータも新たなモデルで評価すると、年代は約28万6000年前となり、今回の研究と矛盾しない数字になった。

ジェベル・イルード遺跡で発見された中期旧石器時代の尖頭器、削器、剥片石器。研究者たちは、ホモ・サピエンスが出現した時期と中期旧石器時代の始まりの時期は近接していて、おそらくアフリカ全域で同じようなことが起きていたのだろうと考えている。(PHOTOGRAPH BY MOHAMMED KAMAL, MPI EVA LEIPZIG)

現生人類とその先駆けとなる初期人類の化石が見つかっているアフリカの遺跡の中で、年代が厳密に特定されているものは数少ない。今回の発見で、ジェベル・イルードはそうした希少な遺跡の一つとなった。

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