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人類史を覆す? 30万年前の化石はホモ・サピエンスか

日経ナショナル ジオグラフィック社

2017/6/26

ナショナルジオグラフィック日本版

モロッコのジェベル・イルード遺跡で発見された人類の成体の下顎骨の化石。現生人類とよく似た歯が見られる。(PHOTOGRAPH BY JEAN-JACQUES HUBLIN, MPI-EVA, LEIPZIG)

 はるか昔、現在のモロッコにあたるサバンナ地帯で、太古の人類が集団でたき火を囲んでいた。たき火のまわりには、彼らが使っていた石器が散乱していた。このほど、火に熱せられた石器を調べることで、彼らが生きた時代が今から30万年以上も前だったことが明らかになった。

 科学誌『ネイチャー』2017年6月8日号に発表されたこの発見は、人類の化石記録にある重大な空白を埋めるものだ。モロッコのジェベル・イルード遺跡から出土した今回の化石は、エチオピアの約19万5000年前の遺跡から出土した最古のホモ・サピエンスの化石証拠よりずっと古いにもかかわらず、現生人類と驚くほどよく似た点が多数ある。

■すれ違っても違和感がない?

 ジェベル・イルード遺跡の住人には、私たちとの違いもある。彼らの頭蓋は私たちの頭蓋ほど丸くなく、もっと細長かった。そのため脳は、私たちの脳とは違っていたと考えられる。しかし、彼らの歯は私たちの歯とよく似ていたし、その顔も私たちにそっくりだった。

「彼らは地下鉄ですれ違っても違和感がないような顔をしていました」と、研究チームを率いたドイツ、マックス・プランク進化人類学研究所の古人類学者ジャン=ジャック・ユブラン氏は言う。「驚くべきことです」

発掘現場に残る鉱床。かつてはトンネル状の地形だったが、採鉱により完全に露出した。(PHOTOGRAPH BY SHANNON MCPHERRON, MPI EVA LEIPZIG)

 それだけではない。ジェベル・イルード遺跡はアフリカ北西部にあり、初期人類の化石が数多く発見されている東アフリカや南アフリカの遺跡とは遠く離れているのだ。

 このような遺跡の年代や場所から、現生人類は従来説よりずっと古い時代からアフリカ各地で進化してきたと、研究者らは考えている。

 米ジョージ・ワシントン大学の古人類学者バーナード・ウッド氏は、今回の研究には関与していないが、「アフリカのほかの地域で現生人類の化石証拠が発見されたことも、それがより古い時代のものだったことも、なんら不思議ではありません」と言う。

 ジェベル・イルード遺跡は、人類の歴史を探るうえで大切なことを思い出させてくれる。「証拠の不在は、不在の証拠ではないのです」とウッド氏。

■年代を厳密に調べるには

 鉱山だったジェベル・イルードで遺跡が発見されたのは1960年代のこと。発掘調査で石器や謎の頭蓋の破片が発見され、科学者たちは現生人類の古い類縁種のものだろうと考えた。

 しかし、人類史の中で化石がどこに位置づけられるかを正確に理解するには、遺跡の年代を厳密に決定する必要があり、それは非常に困難だった。年代を厳密に特定するためには、その化石がどの岩石層に埋もれていたかがわかっている必要があるが、1960年代の発掘では、そうした情報がほとんど記録されなかったからだ。

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