2017/6/18

牧野正幸、人材育成のスゴ技

そこで02年に、就職前の夏もしくは冬の休みに実施できるようなプログラムを縮めて約1カ月のインターンを始めました。そのとき、成績がよかった学生に内定を出すなどして縛らないことも決めました。代わりに卒業後の一定の期間、いつでも入社できるという「パス」を渡し、自由にさせることにしたのです。今のパスの「有効期間」は3年です。

あれもこれも…全員が反対

「絶対うまくいかない」と言われましたね。まず「1カ月のインターンなんか忙しくて誰もこない」という反対です。じゃあバイト代を払おうと言えば、「お金目当ての学生ばかりで入社してくれないよ」とまた反対。「内定を出して囲い込むべきだ」という人も多かった。「パスを渡しても、結局2番手に回され、入社してくれないよ」という声もありました。 お金目的でも大いに結構だと思っていました。当時、上場もしていなくて、当社に興味のある学生なんているはずもなかったのです。

結果は、大ヒットでした。今では後輩にすすめたいインターンシップとしても、常に取り上げられています。参加する人の9割が最後までやりとげて、「このインターンで残りの学生生活が変わりました」と言ってくれた人もいます。この経験で起業意欲が高まった人も多かった。我々は、ずばぬけて優秀な人を採用でき、非常にハッピーな結果になりました。

時間をかけてこそのインターン

私は当社の採用システムを多くの企業がまねすればいいと思っています。入社パスの制度は今や他の企業も取り入れていて、非常にいいと思います。しかし、当社と同じような能力開発型の長期インターンを実施する会社はほとんどありません。一番大きな理由はコストです。お金がかかりすぎるんです。当社の場合、インターンに関わる社員の人件費などを含め、1人採用するのに約1000万円かかっている計算になります。

2つ目の理由は、そうやって苦労して採用しても、やめてしまう人がいることでしょう。「インターンで魅力的だと思ったが、入社してみたら全く違っていた」とやめてしまう人もいます。インターンだけ充実しても意味がない。実際の仕事でも興奮できる場を与えなければ、結局やめてしまいます。

実務の仕事そのままのインターンは難しいとしても、実務を模したインターンは可能です。学校側の協力で半年間のインターンができるようになれば、より実りあるものになるだろうと思います。日本の大学教育では、仕事をするうえで必要になる「自分で考える力」が鍛えられません。長期のインターンで実践的な課題に取り組むことで、学生の「考える力」を伸ばせるだけではなく、働くことをリアルにイメージできるようになると思います。

牧野正幸
 建設会社などを経て1996年にワークスアプリケーションズを設立。2017年2月まで、中央教育審議会委員も務めた。兵庫県出身。54歳。

(松本千恵)