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関東オケ有志ホルン10人衆 圧倒する響き

2017/6/17

 ホルンの名手10人でつくるアレキサンダーホルンアンサンブルジャパン。1999年に結成され、メンバーは東京都交響楽団や新日本フィルハーモニー交響楽団など関東圏の主要オーケストラに所属するホルン奏者だ。結成のきっかけはドイツの老舗メーカー、アレキサンダー社製のホルン。独特の音色を聴いてもらおうと演奏会を始め、6月23日のヤマハホール(東京・銀座)公演で9回目となる。練習場でアレキサンダーホルンの魅力や合奏の面白さを聞いた。

所属楽団も年齢も異なる多様な10人が集って演奏

 6月初め、東京文化会館(東京・上野公園)のリハーサル室をのぞくと、ホルンをかかえた演奏家がずらり。普段、ステージではあまり目にしない光景だ。この日のリハーサルに参加していたのは9人だったが、その音の迫力はフルオーケストラにもひけをとらないように感じられた。

 99年にアレキサンダーホルンだけを使うアンサンブルをつくろうと、当時、都内のオーケストラの若いメンバーが集まったのが始まりだという。その後、メンバーが少しずつ変わっていき、今では年齢も所属する楽団も違う、多様な10人が集まっている。

関東オーケストラ有志ホルン10人衆「アレキサンダーホルンアンサンブルジャパン」の練習風景。この日は1人欠席し計9人(6月2日、東京都台東区の東京文化会館リハーサル室)

 「重鎮なので一緒に演奏するのが怖い」と若いメンバーが畏敬の念を抱く都響の首席奏者、有馬純晴さんを筆頭とする10人衆だ。神奈川フィルハーモニー管弦楽団の熊井優さん、群馬交響楽団の上里友二さんと浜地宗さん、新日本フィルの金子典樹さんと藤田麻理絵さん、東京交響楽団の上間善之さんと鈴木優さん、読売日本交響楽団の伴野涼介さんと日橋辰朗さんが参加している。

 全員、演奏に使うのはアレキサンダーホルンだ。ライン川にマイン川が合流する対岸に開けたマインツ市に本社を構え、230年以上の歴史を持つドイツのアレキサンダー社。老舗がつくるホルンの特徴はどこにあるのか、今回のメンバーに解説してもらった。

弦楽器や木管楽器のパートも全てホルンで表現

 「やや硬質の音で、合奏になったときの音の芯は格別だと思う」と話すのは熊井さん。「アンサンブルになると輝かしい音になる。音色の種類がとにかくたくさん、思うように鳴ってくれる楽器だ。華やかなブラスの響きから、木管や弦楽器とも溶け合うことのできる軟らかい音も出せる、いろんな可能性を秘めている楽器」と日橋さんは語る。有馬さんは「ドイツの楽器なので、ワーグナーなどドイツの作曲家の楽曲に合う気がする」と言う。

アレキサンダーホルンアンサンブルジャパンの練習風景。東京都交響楽団の有馬純晴さん(右奥)と東京交響楽団の鈴木優さん(6月2日、東京都台東区の東京文化会館リハーサル室)

 今回の演目にも、ワーグナーのオペラ「タンホイザー」の序曲が入っている。もともとホルンのパートが印象的な曲だ。冒頭のホルンの軟らかい、落ち着いた音色が続いたあと、弦楽器や木管楽器が入ってくるが、今回は他の楽器のパートも全てホルンで表現する。リハーサルでは、1種類の楽器による演奏とは思えないほど、さまざまな音色が組み合わさって聞こえてきた。軟らかい温かい音色、耳がじんじんする強い音、体に響くような低音、刻むようなコミカルな音、美しい華やかな高音。目を閉じると、オーケストラの演奏を聴いている気分になる。

 ホルンは通常のオーケストラで4人、多いときには8人の編成で演奏するのが定番なので、アンサンブルをしやすい楽器だという。では10人が集まるとどうなるのか。「音が増えて、バランスをどうとるかが重要になる。それぞれが違う楽器のパートも演奏しているので、お互いの音をよく聞かないといけない」と有馬さんは説明する。

指揮者なしでも全員の話し合いで納得いくまで練習

 今回の演目はホルンだけで演奏できるよう編曲されている。それでもリハーサルでは、元の楽譜ではどの楽器がどう表現しているのか、テンポや音の強弱など細かい部分まで何度も確認し、全員が納得いくまで繰り返し練習していた。

 「指揮者がいないというのも、ホルンアンサンブルの特徴。だから、元の楽譜も参照しながら、どう表現するのがいいか、全員で話し合いながら決めている」と金子さんは語る。

 各人が所属するオーケストラにはない性格を帯びていくのも、ホルン奏者同士の演奏の楽しみだ。浜地さんは「それぞれ所属しているオーケストラのカラーがあって、それが演奏に出てくる」と話す。「練習を繰り返す中で、それぞれのカラーが合わさっていくのか、1つのオーケストラのカラーが強く出るのか、といったところも、自分のオーケストラを離れて演奏することの面白さだ」

インタビューに答えるアレキサンダーホルンアンサンブルジャパンのメンバー。左から都響の有馬純晴さん、東響の鈴木優さん、読売日本交響楽団の伴野涼介さん。聞き手は槍田真希子(6月2日、東京都台東区の東京文化会館リハーサル室)

 リハーサルでは終始、笑い声が漏れていた。各人が面白がってアンサンブルに参加しているのは一目瞭然だ。「オーケストラの仕事も楽しんでいるが、ホルンは仲間意識が強い楽器だし、年齢も関係なくあれこれ言いながら演奏するのもまた面白い」と上間さん。さらに伴野さんは「ホルン吹きは1人だと寂しい、仲間と一緒にいたい人が多い」と指摘する。10人もの先輩や仲間とのホルンだけの公演は、演奏する側にとっても他では経験できない魅力があるようだ。

 ホルンはもともと音域の広い楽器だが、今回の公演では、普段オーケストラで演奏しないような幅広い音域を要する演目が並ぶ。ホルンのために書かれた曲から、有名な曲をホルン向けに編曲したものまで、多様なホルンの音色を聴かせるのが狙いだ。「各オーケストラから集まっている一流の奏者だから出せる、幅広い音域を楽しんでもらいたい」と女性奏者の一人、鈴木さんは話す。ホルンの荘厳で圧倒的な音の世界に浸る演奏会になりそうだ。

(映像報道部 槍田真希子)

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