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アップル、MSが火花 次のPC巡り「ペン勝負」

西田宗千佳のデジタル未来図

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NIKKEI STYLE

アップルは2017年6月13日に新しいiPad Proを発売した。このiPad Proは、秋に公開される「iOS11」を強く意識したもので、同時に、「次の個人向けコンピューター」として打ち出された製品でもある。今回は10.5インチ版iPad Proの実機のインプレッションとアップルの開発者会議「WWDC」で得られた情報、そしてマイクロソフトなどライバルの状況から、今秋に向けた「個人向けコンピューター」のあり方を考えてみたい。

秋のiOS11で大きく化けるiPad

まず新iPad Proの内容から確認しよう。これまでiPadは9.7インチをメインに展開してきたが、今回10.5インチと大型化される。ピクセル密度は同じ「264ppi」なので、サイズと画面解像度がそのまま拡大された感じだ。より大型の12.9インチにも新版が出た。

アップルが画面を拡大した理由は、秋に公開されるiOSの新バージョン「iOS11」が、iPadに大きな変化をもたらすことにある。

アップルは15年秋にiPad Proを発表して以降、ペンを多用するクリエーティブな用途や、低価格なPCに対抗する製品としてアピールしてきた。確かに、低価格なWindows PCに比べるとiPadはパフォーマンスが高く「サクサク使える」良さがある。ペンの精度や使い勝手も非常に良い。ペンの使い勝手では、グラフィック用の高価なPCよりも快適である。

一方、iPadにも難点があった。「ファイル管理が苦手」なことだ。iOSは「ファイルを意識しないで使える」操作体系を採ってきた。これは簡単さにつながり、iPhoneにおいてはそれが重要な要素でもあった。だが、iPadをPC的な「プロダクティビティーとコラボレーションの道具」として見ると、ファイルを意識することは、むしろ必要なことになる。

今のiOSでもサードパーティ製のアプリやクラウドストレージを組み合わせれば、ファイルを管理できる。だが、PCで慣れた操作とは大きく異なっているし、手順も少々面倒だ。わかりやすさのためのファイルを意識しない作りが、かえってわかりにくさにつながってしまう。

iOS11では、ファイル管理の機能が本格的に搭載される。Macの「ファインダー」やWindowsの「エクスプローラ」と同じ役割をする「Files」というアプリが追加された上で、アプリからアプリへファイルをドラッグ&ドロップする機能により、操作感はかなりPCに近くなる。なお、FilesはiPadだけの機能であり、iPhoneでは使えない。

FilesはアップルのiCloud Driveだけでなく、DropboxやOneDriveなどの主要なクラウドストレージに対応する。どのストレージに保存しても、最近使ったファイルを自動的に見つけて表示してくれるので、macOSやWindowsより進化しているといってもいいくらいだ。

iOS11でのタッチによるファイル操作はなかなか快適そうだ。そして、より広い画面の方が使いやすく感じる。9.7インチから10.5インチに画面が大きくなるメリットがここで享受できる。従来からある「Split Screen」での2アプリ同時操作などを使う場合も、画面が大きい方が明らかに使いやすい。それがさらに加速される印象だ。

コストをかけた「体験の最適化」

ファイル管理の弱点を解決するだけでなく、アップルはiPadの強みをさらに強化する。その強みとは「快適な操作性」と「ペン」だ。

今回ディスプレーのサイズを見直すのに合わせ、iPad Proでは、全体の構成に手を加えている。具体的には、リフレッシュレートの変更とペン認識速度の向上だ。

リフレッシュレートとは画面書き換えを行う頻度のことで、一般にこれが多いほど表示はなめらかになる。これまで、iPhoneとiPadの画面では60Hz(毎秒60コマ)で固定されていたが、新iPad Proではそれが「最大120Hz」になる。ウェブをスクロールさせるときなど、かなりなめらかになり、高速に文字が流れていても文字が(がんばれば、だが)判別できるくらいになる。

単に表示がなめらかになるだけではない。実際に使ってみると、操作への追随性も良くなっているのがわかる。高速スクロール中にタッチして止めるような場合も、指にピタッと吸い付くように止まる。これは、CPUパフォーマンスの向上によるところも大きいのだが、リフレッシュレート向上によって「こちらの操作が画面に反映されるまでの時間」が短くなったことによる効果もある。

そして、より大きな変化といえるのが、Apple Pencilでの描画遅延が「20ms」まで短縮されたことだ。20msという値は従来のiPad Pro+Apple Pencilの半分程度で、Windowsを使った一般的なペンタブレットの半分から3分の1程度である。だいたい50分の1秒程度だから、ほとんど遅れを感じなくなったといえる。この値は、現在世の中にあるペンタブレット類では最高クラスの値である。

今回、10.5インチとサイズを大きくし、さらに120Hz駆動にしたことで、ディスプレーの部品価格は確実に上がる。アップルは今回、「コストよりも進歩を選ぶ」カードを切った。そのくらい、iPadに注力する姿勢を示しているのだ。

別の道から最適化を目指すアップルとマイクロソフト

別ないい方をすれば、アップルはハードからOSまで一体でモノ作りをしており、いまだそれが差別化の源泉である、ということだ。

同じパターンで戦っているのがマイクロソフト(MS)である。アップルがiPad Proを発表する少し前、17年5月初旬から後半にかけて、PC「Surface」シリーズの新製品を発表した。初のクラムシェル型となる「Surface Laptop」と、主軸製品である「Surface Pro」の17年版に注目が集まった。

Surface Proは、タブレットにキーボードの機能を持つカバーをつけ、さらにペンでの操作もできるという点で、以前からiPad Proと比較されることの多い製品だ。いや、正確に言えば、iPadの後にSurfaceが登場し、ヒットした後にiPad Proが生まれたのだから、お互いに影響しあっているライバル、というところだろう。

今年のSurface Pro(今年度のモデルより、名称は単に「Surface Pro」となり、数字などは末尾につかなくなった)では、パフォーマンスや静穏性など様々な点で改良が加えられているのだが、特に大きいのはペンの描画遅延の短さだ。

新Surface Proでの描画遅延は、マイクロソフトの公表スペックでは「21ms」。iPad Proのそれとほとんど変わらない。こちらも前のモデルからは半分以上遅延を短縮するという、大きなジャンプを果たしている。

ただし、マイクロソフトが遅延短縮のために採ったアプローチは、アップルと大きく異なっている。

アップルは前述のようにディスプレー表示のリフレッシュレートを倍にしたことで、「描画が目に入る」までの時間を短縮し、結果として描画遅延を小さくしている。ペンであるApple Pencilは以前から変化してない。すべてのアプリで使えて、互換性も非常に高い。ただし、これ以上遅延を小さくするには、センサーとペンに、本格的に手を入れる必要が出てくる。

一方、マイクロソフトは、ディスプレーのリフレッシュレートは変えていない。内部に特殊なLSIを用意し、センサーとペンの側に工夫を加えている。従来は、ペンをセンサーが検知し、それをCPUに送って描画される……という順番だった。だが新Surface Proでは、センサー側に用意した特殊なLSIを使い、センサーが検知後、CPUを介さずにディスプレーにペンの軌跡を描画してしまう。そしてその後にCPUへデータを回し、つじつまを合わせることで遅延を短くしているのである。

両社の考え方はまるで正反対だ。ハードウエアコストと互換性的には、アップルのアプローチの方が賢い。マイクロソフトのアプローチでは、遅延が小さくならないアプリもできてしまう。だが一方で、これからの進歩の余地は大きく、さらに遅延を小さくすることも可能だ。それに対しアップルのやり方では、センサーとペンを大きく変えないと、さらなる遅延低減は難しい。

20ms前後の遅延、というのはかなり短いもので、すでに多くの人には十分な値かと思う。一方で、物理的な紙とペンを使ったときには遅延は「ゼロ」なわけで、その差を詰めていくことはこれからも必要だ。

両社ともOSとハードの両面で最適化をすすめており、それが商品性の高さに直結している。PCやスマートフォン、タブレットはありふれたものになった。だから、凡庸な製品は安くでしか売れず、利益も生みづらい。利益源泉が「差別化」であるならば、多くのメーカーはアップルやマイクロソフトの「一体化による差別化」と戦わなくてはならない状況にある。それは企業目線でいえばなかなか厳しいことだ。

一方、消費者目線で見れば、最適化競争が快適なハードウエアにつながるわけで、けっこうなこと……といえるのではないだろうか。

これからの個人向けデバイスでは、ペンに限らず様々なデバイスを必要とする。PCの基本はマウスとキーボードだが、それだけではダメだ。ペンの精度向上はそのひとつであり、そこへの取り組み方で、これから出てくるであろう新しいセンサーやインターフェースへの対応が見えて来るのだ。

西田宗千佳
 フリージャーナリスト。1971年福井県生まれ。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、ネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。

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