IOCも一目置く コカ・コーラの「五輪スポンサー」術オリパラのマーケティング(上)

スポーツイノベイターズOnline

「第2ステップは、五輪開催の48~36カ月前の1年間をかけたレガシーの設定です。まさに今ですね。『日本コカ・コーラとして2020年東京五輪のレガシーを確立し、社内で共有して、みんながそれに向かって進んでいきましょう』というコミュニケーションに取り組むことが17年の僕の課題でもあります」

レガシー設定、いつも苦しむ

――いつごろまでにレガシーを設定するのですか。そのために最も大事な要素は何ですか。

「17年の前半には確立したいと考えています。正直に言うと、レガシーの設定にはいつも苦しみます。重要なのは、『レガシー=ビジネスの目的』ではないということです。レガシーについて大会が終わった時に『うまく確立できた』『できなかった』という評価はできません。ずっとその先、20年後、50年後に『そういえば20年の五輪のレガシーがあったから、今の日本はこうなったんだよね』と言えることが重要です。ビジネスの目的は何かという話は、五輪の後に出てきます。順番を間違えてはいけません」

日本コカ・コーラがリオ五輪に合わせて2016年に限定販売した250ミリリットルのスリムボトル。左がリオバージョンで5本の曲線があしらってある。右は東京バージョン(写真:日本コカ・コーラ)

――レガシーの設定は、日本企業が最も苦手なところです。3年前に設定して、五輪開幕までどのように展開するのですか。

「設定したレガシーをもとに20年の大会期間中にプロモーションに使う、会社としてのビジュアル・アイデンティティー・システム(VIS)の制作を始めます。デザイナーがレガシーをイメージしながら、プロモーション用のビジュアル(画像)を作っていくわけです。例えば、リオデジャネイロ五輪ではボトルから5本の曲線が出たビジュアルをすべてのプロモーションに使いました」

「その後、細部まで詳細を詰めたプロモーションについて18年から約1年かけてプランニングし、それを受けて実際のアクティベーション(マーケティングに触れた人々に商品の購入や情報のシェアなどの行動を起こしてもらう取り組み)が始まるという流れになります。だいたい18カ月ほど前からお客様への訴求が始まります。ただ、今回は前年の19年にラグビーワールドカップ(W杯)が日本で開催されるので、タイミングを見計らいながら進めていくことになると思います。そして開催直前の準備や期間中の取り組みを経て、閉幕後の3カ月ほどで大会の取り組みを総括し、次の大会にナレッジ(知識)を継承していくわけです」

日本コカ・コーラが2020年東京五輪に向けて計画する6ステップのタイムスケジュール(日本コカ・コーラの資料を基に筆者が作成)

――コカ・コーラにとっては当たり前のステップなのかもしれませんが、経験のない企業には難しいかもしれません。オリバーさんに直接、話を聞きに来る人もいるのでは。

「そうですね。もちろんコカ・コーラとして共有できることは共有しています。国内では、内閣官房参与の平田竹男さん(早稲田大学スポーツ科学学術院教授)を筆頭に、五輪会場内の食品・飲料の販売に関わるスポンサー企業が集まるコミュニティーがあって、より多くの日本の食材を使って外国から来るお客様におもてなしを提供するためのディスカッションをしています。この集まりは、結構面白いですよ」

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