クルトガ発売から6年後の14年に、ぺんてるが、0.2ミリ芯という極細の芯なのに、折れずに書ける「オレンズ」を発売。これもヒットする。クルトガのように細い線を書けて、しかも折れない。「折れないシャープペンシル」としては、プラチナ万年筆の「プレスマン」や「オ・レーヌ」が先行商品としてあったのだが、オレンズの場合、折れない以前に細い線が書けるというポイントがあった。

文具王こと高畑正幸氏の計算では、0.2ミリ芯のオレンズと0.5ミリだが回転してとがるクルトガでは、筆記線の太さは、ほとんど同じということだった。しかもクルトガは0.5ミリ芯の上に、芯が回転するため一方向に力が集中せず、その結果、芯が折れにくくなっていた。

クルトガとオレンズ。この二つの製品が、「細い」+「折れない」でシャープペンシルの2トップとなったわけだ。

そしてオレンズと同じ14年、ゼブラが0.5ミリの折れないシャープペンシル「デルガード」を発売したあたりから、風向きが変わってくる。この、3回ノックして、力いっぱい書いてみると、本当に芯が折れないシャープペンシルの衝撃は、ビジネスユーザーを中心に、大人にもアピールしたのだ。

ビジネスプランを考えるのにも最適だった

斜め方向に筆圧をかけても芯が折れないデルガードは、「折れない」という事に説得力がある上に、デザイン的にもシックでメカニカルなムードを演出していて、大人でも持ちやすかった。デルガードでシャープペンシルの「現在」に気がついた大人は、そこからクルトガを知り、オレンズを知ることになる。

ゼブラ「デルガード」:筆圧を掛けて芯が折れそうになるとパイプが自動的に出てきて芯を守る。力いっぱい書いても芯が折れない安心感は、大人にシャープペンシルを見直させるきっかけにもなった。450円+税

500円程度で買えるから、試してみるのも気軽にできる。使ってみると「折れない」ことが、こんなにもストレスを感じさせないのだという事実に気がつく。消せるし、気軽なシャープペンシルの書き心地がかえって新鮮で、ビジネスにも使いやすいことに気づく人が増えていく。何度でも書き直せるし、力のいれ加減で線の強弱がつけやすいシャープペンシルはビジネスプランを考えるのに向いているのだ。またシャープペンに先駆けて起こったボールペンの進化で、筆記具に意識的な人が増えていることも影響しているのだろう。

そうなると、大人向けのシャープペンシルも登場する。グリップを金属製にして重心を低くし、大人の筆記バランスに合わせた製品、ぺんてる「オレンズメタルグリップタイプ」やゼブラ「デルガードタイプLx」は、どちらも大人だけでなく、学生にも高級路線のシャープペンシルとして好意的に迎えられた。

そして、17年、ぺんてるがシャープペンシルのフラッグシップを目指したという高級シャープペンシル「オレンズネロ」を発売。これが、生産が追いつかない大ヒットになった。

各社から大人向けのシャープペンシルが続々登場

3000円という価格は、筆記具としてみると中価格帯だが、学生ユーザーをメインターゲットとしてきたシャープペンシルにとっては、思いきった価格設定だ。しかし、そこには、ノック式シャープペンシルを世界に先駆けて開発・発売し、0.5ミリ芯、0.3ミリ芯を初めて発表し、世界で唯一0.2ミリ芯を実用化し、0.2ミリ芯でも折れないシャープペンシルを作った、ぺんてるの技術が集約されている。樹脂軸に金属を混ぜることで、重さのバランスを細かくコントロールするなど、新しい技術も投入して作り上げた、シャープペンシルの一つの理想像があった。ノックしないでも自動的に芯が出る仕組みも、ぺんてるが長い間培った技術の一つだ。

ぺんてる「オレンズネロ」:樹脂に金属を混ぜた素材を一体成形した八角形の軸は、最適な重量バランスで手にフィットする。最初に一回ノックすると、芯がなくなるまで書き続けられる機構なども搭載。3000円+税