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プロに撮ってもらう日常 感動の一枚を生む「ロケ撮」

2017/6/16

(写真:bozphoto & styles)

 スマートフォン(スマホ)やデジタルカメラで誰でも気軽に写真が撮れる時代。しかし、あえてプロのカメラマンに撮影してもらいたいという人が増えています。写真スタジオで撮る節目の記念写真だけではなく、自分や家族の日常のイベント、ふとした素顔や趣味に打ち込む姿を、自由なロケーション(場所)で。プロの目線と技術、表現力から生まれる感動の一枚に驚き、リピーターとなる人もいます。ネットの普及で、個人の顧客とカメラマンが出会う機会も飛躍的に増えました。津田千枝さんがナビゲートします。

◇  ◇  ◇

 先日、何人かの友人に「プロのカメラマンに撮影をお願いできるとしたら、何を撮ってもらいたい?」と聞いてみました。金融業で働く友人の女性は、「大学を卒業してからずっと仕事をしているのに、働いている姿の写真が一枚もない。いつか仕事をやめたときに、私はこんなふうに仕事をしていたんだと振り返れるような写真を撮ってほしい」と言いました。別の友人の男性は「仕事をしているオンの自分の写真と、くつろいでいるオフの写真を両方撮影してもらって比較してみたい」と言っていました。

 自分自身の日常を残せるような写真は意外とないものです。ほかにも、合格発表の日の表情、趣味で作った作品や思い出の品、思い出の家や新しく買った家、家族の長寿のお祝いの席など、唯一無二の一瞬を切り取るプロの写真は確実に、ずっと残したい一枚になると思います。

 個人がオーダーする自由なロケーションでの撮影を、私は最近「ロケ撮」と呼んでいます。私自身も先日、ピアノの発表会でプロのカメラマンに撮影をお願いしたことから、実際にロケ撮を経験された方、撮影されたカメラマンの方にぜひお話を聞いてみたいと思いました。どんな状況での撮影をお願いできるのか、撮影はどのように行われるか、自分の希望にかなうプロをどのように探したらいいかについてもお伝えしたいと思います。

 さらに、感動の一枚はやはり目にふれる形にして、日々の暮らしで楽しみたいものです。家庭用プリンターで手軽にプリントもできますが、ここでもやはり個人の要望にこたえてくれるプロにお願いすれば、愛着のある写真がインテリアの主役になったり、大切な人への最上の贈り物になります。プリントのプロの方にもお話を聞きました。

■新しい仕事へ踏み出す自信になった写真

 Nasimさんは首都圏でベリーダンスの講師として活躍されている女性です。3年ほど前、まだ趣味の一つとしてベリーダンスを習っていたころに、プロカメラマンの藤田努さんに撮影してもらったのが冒頭の写真。撮影地は「ここ以外考えられなかった大好きな場所」という神奈川県の葉山の海岸です。

 「あるイベントで藤田さんの撮影された写真を見て、絶対にいつか自分の写真を撮ってもらいたいと思い、藤田さんのホームページを検索して連絡をしました。最初、カメラマンに撮ってもらうと家族に言ったときには『プロのベリーダンサーでもないのに』と笑われたのですが、あのとき撮ってもらって本当によかったと今でも思います」(Nasimさん)

 いつかはプロになって自分の教室を持ちたいと考えていたNasimさんですが、葉山で撮った写真は大きな力になったといいます。

 「撮影した写真でフライヤー(チラシ)を作ったら反響がとてもよくて、スポーツジムで教室をスタートすることになりました。レストランなどからも出演依頼がくるようになりました」。その後、思い描いていたとおりに自分のスタジオを持って教室を開くことができたNasimさん。「生徒さんにうちの教室を選んだきっかけを聞くと『写真がすてきだったから』という人が多いです。撮っていただいた写真は自信につながっていると思いますし、写真に負けないようにもっと向上しなきゃという思いもありますね」

冒頭の写真とともに、葉山海岸で撮影 (写真:bozphoto & styles)

■プロは準備に時間をかける

 実際に、Nasimさんのロケ撮はどのように行われたのかをお聞きしてみました。Nasimさんの希望は「大好きな葉山の海と夕日をバックに撮ってほしい」というもの。自分で考えた候補地も伝えてありましたが、実際に現地を訪れてみると撮影条件があまりよくなかったといいます。「夕日の当たる角度があまりきれいではなかったのと、よさそうな角度から見ると背景に電線がいっぱいありました」(カメラマンの藤田さん)

 しかし藤田さんは事前に第2、第3の候補地も用意していました。夕日が徐々に沈んでいく中、藤田さんは車を走らせてベストなロケーションに到着。「自分が考えていた以上の場所を見つけてくださって、想像以上の写真ができあがり、びっくりしました」(Nasimさん)。プロは準備に時間をかけ、背景も含めて全部計算して撮影してくれます。それが、出来上がった写真に明確に表れるのでしょう。

 藤田さんは普段、結婚式の撮影を多く手がけています。米国で写真を学び、フォトジャーナリストとしてキャリアを積んだ藤田さんは、ウェディングの撮影にもドキュメンタリーフォトの手法を持ち込み、支度中の花嫁さんや控え室の家族の自然な表情をとらえて撮影します。現在受けているロケ撮の多くは、結婚式の写真を手がけた顧客からの継続依頼だといいます。

 「子供が生まれて毎年の家族写真とか、七五三、入学式や卒業式、そして毎年の年賀状写真などですね。お祖母さんの米寿のお祝いの記念写真などもありました。結婚が間近なカップルの依頼もあります」(藤田さん)

 ほかにも、海外赴任から5年ぶりに帰国した夫を迎えての夫婦の記念写真、祖父が所有していた土地の売却が決まり、思い出のその場所で家族の記念撮影という依頼もあったそうです。もちろん、継続的な依頼だけではなく「ネット経由で、初めて連絡してこられて『撮ってください』という依頼もあります」(藤田さん)。

 ロケ撮を依頼する際のコツをお聞きすると「その方自身について詳しく教えてください、とお願いしています」という答えが返ってきました。「その人を知ることによって、どんな写真がいいのかが想像できてくるので、その人を知るために時間をかけますね。結婚式の写真のご依頼のときも、必ず事前に直接お会いしますし、メールでのやり取りもたくさんします」(藤田さん)

ある結婚間近のカップルから、現在の二人を撮ってほしいという依頼を受けての撮影 (写真:bozphoto & styles)
私のピアノの発表会の写真。ヤマハホール(東京・銀座)にて。このような制約の多い環境での撮影もプロならではです (写真:bozphoto & styles)

 昨年12月、私もピアノの発表会を藤田さんに撮影していただきました。その際は、数十年ぶりに弾く発表会であること、会場であるホールがとても気に入っていること、撮ってほしい方向といったことを事前にお伝えしました。実際に弾いている短い時間の間に、望遠や全景などさまざまな構図で撮ってくださいました。もちろんマナーとしてシャッター音も消しての撮影です。そのときの写真は、小さいころに習っていたレッスン室の写真と並べて自宅に飾っています。

 ロケ撮をお願いしたいと思ったとき、カメラマンをどう探せばよいかと聞かれることがあります。現在ではネット上のサイトに作品を公開しているカメラマンがたくさんおられるので、すてきだなと感じる写真を撮っておられる方や、自分が撮ってほしいジャンルに強そうな方を選ぶのがいいと思います。

■プリントと額装でさらに写真が引き立つ

 お気に入りの一枚は、美しく仕上げて普段から目にふれるところに置きたいですね。それをかなえてくれるのがやはりプロの技です。

 今回、Nasimさんの写真のプリントをお願いしたのは、アトリエマツダイラ(東京都江東区)の松平光弘さん。メインの業務は、ギャラリーや美術館などの写真展向けのプリントと額装ですが、個人の方からの依頼も受けています。松平さんに、プリントを依頼する際の流れをお聞きしました。

 「ご依頼を受けたら、直接お会いするかお電話で、撮影したときのお話やいきさつ、写真への思いなどをお聞きします」(松平さん)。そこから被写体の本質やカメラマンが伝えたいメッセージを引き出し、より意図が伝わるようなさまざまな調整を行って、写真の魅力がさらに引き立つように仕上げます。

 サイズの大きなプリントを依頼する場合は、飾りたい場所の周囲の様子が分かる写真や、周囲のサイズなどの情報を伝えれば、仕上がりイメージがより鮮明になります。額装する場合は、フレームの材質や色、マットのサイズなど多様な選択肢がありますが、コンピューターの画面で実際の額装イメージをシミュレーションすることができます。

 価格は、写真表面に厚さ数ミリのアクリルを貼り付けるアクリル加工がA4サイズで1万3000円、フレームの色や材質などを個別に選べる額装が1万5000円ほど(共に税別)。これはコンサルティング、調整、印刷、パネル仕上げを含む標準的な価格です。ちなみに、卓上に飾るのに手ごろなA5サイズもほぼ価格は同じとのことです。

 実際に打ち合わせを経てプリントまで確認したNasimさんは「いろいろお話を聞いていただいた後に、より意図が伝わるような調整で写真がさらに引き立って驚きました。自分の大好きな場所で撮っていただいた記念すべき第1号なので、本当に感激です」と話します。モダンなアクリル加工で仕上げた葉山の写真は、Nasimさんのご自宅の玄関ホールに飾られることになりました。

念入りな打ち合わせで、プリントのイメージを明確にしていきます。アトリエマツダイラにて松平光弘さん(右)とNasimさん (写真:都築雅人)
完成したNasimさんの写真。美しさとインパクトが空間の印象を一変させます

 「先日はあるご家族から、『海外に住んでいるおばあちゃんが来日した際の家族の写真を、帰国するまでにパネルにして渡したい』というお急ぎのご依頼がありました。普段なかなか会えないお孫さんたちの何気ないシーンをとらえた写真でした。受け取られたおばあちゃんは涙を流して喜ばれたとお聞きしました」(松平さん)。常に身近に置いておけるように美しく仕上げられた写真を通じて、きっとご家族の気持ちが伝わったことでしょう。

 写真を日常の暮らしで積極的に楽しむ文化が、日本は欧米ほどには浸透していないのではないでしょうか。プロの技術を個人も気軽に利用して写真を楽しむ機会がこれから広がっていくと思います。

津田千枝
 大手外資系通信社でセールスマネジャーを務める。シンガポールで8年の勤務経験がある。現職では、インバウンド向けの地方観光や企業向けの海外広報コンサルティングも担当。2年前に小型船舶免許を取得、国内旅行業務取扱管理者資格も持つ。ゴルフはホールインワン2回とイーグル1回経験。趣味は料理とピアノ。香川県出身。

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