反論するとき 日本人がバカにされかねない3つの英語
デイビッド・セイン「影の英語」(33)私のせいではない
ひとつの言葉は様々な顔を持っています。日本人の言葉が意図していない意味合いで伝わることもあります。日本人向けの英語教育で豊富な経験を持つデイビッド・セインさんが、日本人が使いがちな言葉から「影にある意味」を紹介します。今回は反論したいときの場面です。
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仕事をしていくうえでは、理不尽な場面に出合うこともあります。「あなたが何も言わなかったからこんなことになってしまった」と根拠なく責められるような場面で「あなたの言い分には根拠はないですよ」と自分の立場を果たしてきちんと説明できるでしょうか。
You should have said something. This is your fault.「あなたは何か言うべきでした(それなのに言いませんでした)。あなたのせいですよ」。こう言われて反論したいとき、どう言えばいいでしょう?
正しい訳:それは私の落ち度ではありません。
影の意味:それ、私は悪くないもんね。
とにかく「自分の落ち度ではないことをいきなり主張する」ことは非常に子供っぽいと取られます。
正しい訳:それ、ジェーンの落ち度です。
影の意味:(私のせいじゃない)ジェーンのせいだもん。
実際、あなたの落ち度ではなくジェーンの責任であったとしても、いきなり人のせいにするのは社会人として、成人としてのやり方ではありません。
正しい訳:私を責めないでください。
影の意味:私のせいにしないでよ。
Don't … は「~しないでください」という命令文です。命令文がぴったりくる場面もありますが、「私のせいにしないでよ」はただ防御にまわっているニュアンスがあり、理論的なニュアンスはがありません。
これなら「影の意味」はない!
非難し合うことはやめましょう。
play the blame gameは「非難合戦をする、責任をなすり合う」。Let's not …は「~しないようにしましょう」。冷静な言い回しになります。
怒っている理由は分かりますが、私がこの問題の原因ではありません。
cause this problemは、この問題を起こす、この問題の原因となる。
このような場面では明確に否定することがベストです。ただし、責める相手は事実を確認する以前にとにかく怒りをぶつけることもあります。I know why you're angry,「あなたが怒りをもっている理由は理解できますが」は自分の怒りをいったん収めて相手の気持ちを理解しようとする姿勢を示す表現です。
これがどうして私の落ち度であるのか説明していただけますか?
いきなり弁解をせず、まず相手の言い分を聞こうとする姿勢がよく分かります。反論、弁明はそれからでも遅くありません。Could you …? はどんな場面、どんな相手にも安心して使える丁寧な依頼表現です。
あなたが知らない本当の使い方―― fault
・I can't fault him for being late. He didn't even go home last night. 遅刻したことで彼を責めることはできません。昨夜は家にも帰っていないのですから。
*This isn't my fault.で分かるようにfault は「名詞」として使われることの多い単語ですが、ここでは「動詞」として使われています。fault … for ~:~で…を責める
・Instead of finding fault, let's think about how to solve this problem. あら探しをするのではなく、この問題の解決法を考えましょう。
* instead of finding faults:あら探しをするかわりに
how to solve this problem:この問題の解決方法
・My boss is generous to a fault. He'll do anything for his staff. 私の上司は失敗に対して寛大です。スタッフのために何でもしてくれるでしょう。
・Excuse me, but there's a fault in your reasoning. 失礼ですが、あなたの論証には欠陥があります。
*faultには「(性格上の)欠点、短所、欠陥、きず、誤り、過失、失策、落ち度、(過失の)責任、罪」など様々な意味があります。その中で文の意味に合うものを選ぶようにしましょう。
・My memory is faulty about that night. I had too much to drink. あの夜についてわたしの記憶は曖昧です。飲み過ぎていました。
*faulty:欠陥がある、不完全な(形容詞)
・I made a faulty assumption about him. He's actually really smart. 彼について、私は誤った推測をしていました。彼は実に聡明です。
*make a faulty assumption:誤った推測をする
・This is nobody's fault. It just happened. これは誰の間違いでもありません。たまたま起きてしまったことです。
*nobody's fault:誰の間違いでもない、誰を責めることもできない
・Sally likes to blame other people. She's a faultfinder. サリーは誰かを咎めるのが好きです。彼女はあら探し屋なんです。
*faultfinder:あら探しをする人、難癖をつける人
・I don't think you can put the fault on me. I did exactly what I was told to do. あなたは私のせいにすることはできないと思います。私は言われた通りのことをきちんとやっただけですから。
*put the fault on:~のせいにする
・It wasn't very smart to build a factory on top of an earthquake fault. 地震の断層上に工場を建設するのは賢いことではありませんでした。
・If you default on your loan, the bank will take your house. もしあなたが借金の債務を履行しなければ、銀行はあなたの家を押さえるでしょう。
*faultでもdefaultには「義務を怠る(動詞)」の意味があります。この場合のdeは接頭辞で「強調」を表します。de + fault「過失を犯す」で「債務の履行を怠る」となります。名詞であれば「債務不履行」「財政破綻」となります。defaultはこの場面のように、「経済的」なことや「法律的」なことを言う場合によく使われます。
しかし、場面変わってIT分野でdefault と言うと「元の状態で」「標準装備」「工場からの出荷状態」の意味で、「標準」「基本」の意味があります。
ちょっと専門分野のdefaultも若者にかかれば「それってデフォでしょう」という気楽な若者言葉に早変わり。これは「基本」から「普通」「当たり前」「あり」と言うことになります。この意味のdefaultを使うとき、多くのシチュエーションでeveryone knows you have toとするとうまく訳せます。
「飲んだ後のラーメンはデフォでしょう」Everyone knows you have to have ramen after drinking. また「まつ毛のエクステなんて、現在じゃデフォでしょう」とであれば、Everyone knows you have to have your eyelashes done at a beauty shop. で言いたいことが表せます。
経済場面とIT場面でまったく違う顔を見せるdefaultはなかなか面白い言葉だと思いませんか?
Try and try again!
:D セイン
※デイビッド・セインの「ビジネス英語・今日の一場面」は木曜更新です。次回は6月29日の予定です。
米国出身、20数年前に来日。 翻訳、通訳、執筆、英語学校経営など活動は多岐にわたる。企業や学校の人気セミナー講師。英語関連の出版物の企画・編集を手掛けるAtoZ(http://www.atozenglish.jp)・AtoZ 英語学校代表。