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変わる端末戦略 ファーウェイ「P10」の魅力と死角 佐野正弘のモバイル最前線

2017/6/17

その結果、より優れた性能を持つスマホを利用したいとして、P9やMate 9など、高価格帯のモデルを選ぶ人が増えてきた。そこでP10 Plusを投入することによってハイエンドモデルを強化し、高価格帯の端末販売拡大を狙うのだそうだ。

■日本でも大画面へのニーズは高まりつつある

呉氏によると、日本におけるコンパクト志向の強さにも変化が見られるという。1つはユーザーが、動画など幅広いコンテンツを利用するようになったことで大画面へのニーズが高まっている。第三者機関の調査を見ても大画面を求めるユーザーの数が増えているほか、16年P9を販売した際も、より大画面となるP9 Plusの投入を期待する声が多く上がっていたそうだ。

そしてもう1つはメーカー側の変化だ。ディスプレー技術の向上などによってスマホのベゼル幅が狭くなっており、大画面を搭載しながらも従来より片手で持ちやすいサイズを実現できるようになった。

P10 Plusはディスプレイサイズが5.5インチながら、ベゼル幅を狭くすることで幅を抑え、片手でも持ちやすいサイズ感を実現している

ファーウェイはそうした2つの変化を受け、徐々にディスプレーサイズの大きな端末を投入する方向へとシフトしているとのこと。それがP10 Plusの投入へとつながっているのだそうだ。

■ローカル市場への対応には弱さも

P9の実績、そしてP10とP10 Plusの機能・性能を見れば、両機種ともに好調なセールスを記録する可能性は高いと筆者は見る。大ヒットモデルとなっている「HUAWEI P9 lite」の後継となる「HUAWEI P10 lite」とあわせて、盤石のラインアップをそろえたといえそうだ。

それでもなおファーウェイに弱点があるとするならば、それは日本のローカル市場に向けた機能の対応への弱さであろう。

中でも最近重要となってきているのが、auのVoLTEへの対応である。auのネットワークは3Gの通信方式が他社と異なる方式を採用している影響から、SIMフリースマホがauのネットワークに対応するには、LTEのネットワークで音声通話をする「VoLTE」に対応する必要がある。最近ではUQコミュニケーションズの「UQ mobile」など、auのネットワークを採用する格安SIMが増えていることから、SIMフリースマホを手掛けるメーカーにとっても、auのVoLTEに対応することが重要となってきているのだ。

だがファーウェイは、auのネットワークへの対応にはあまり積極的ではない。今回はP10 liteのみ、後日ソフトウェアアップデートでauのVoLTEに対応するとのことだが、フラッグシップの2機種は非対応だ。呉氏もauのVoLTE対応に関して「可能性を否定することはない」としながらも、明確な回答は避けている。

uのVoLTEに対応し、auのネットワークを用いたMVNOで利用できるのはミドルクラスのP10 liteのみ。後日ソフトウエアアップデートで対応する形となる

また、モバイル決済で用いられているFeliCaに関しても、「技術的に対応することは問題ない」(呉氏)としながら、やはりP10シリーズには搭載されていない。呉氏は、中国でアリペイやWeChat PayなどQRコードによる決済が広まっていることを挙げ、FeliCaに限らない決済に関する技術トレンドを見極めた上で、どのような決済サービスを搭載するか検討する考えを示している。

日本での販売が急伸しているとはいえ、ファーウェイのビジネス全体からしてみれば日本市場の規模は小さい。日本のローカル市場の要求に積極的に応えるのはまだ難しいということなのだろう。だがそれは他のメーカーに足をすくわれる原因にもつながりかねない。

実際ファーウェイは大手スマホメーカーの中で日本でSIMフリースマホの販売を始めたのは早かったものの、当初の評価は低かった。NTTドコモが地方や山間部をカバーするのに広く用いているが、海外ではほとんど使われていない800MHz帯になかなか対応しなかったためだ。そのため、後発ながらも800MHz帯にいち早く対応したASUSの台頭を許してしまった。

今後SIMフリー市場は一層大きくなることが予想されるが、それに伴って日本市場にカスタマイズされた大手キャリアのスマホを使っていた人たちがSIMフリースマホを使うようになり、日本ならではのローカル要素に応えることは一層重要になってくるだろう。現在の勢いを止めることなくシェアを拡大し続けるためには、ラインアップの充実だけでなく、日本ならではの機能や要素への積極的な対応が求められるところだ。

佐野正弘
福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。

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