「僕はもともとアナログ人間なので、デジタルとか新機軸の技術とかが、そんなに得意じゃないんです。でもなぜか、そういう話がくる。

たぶんホラーは、安い製作費でできるんじゃないかと思われているんですよ。有名な俳優が出ていなくても、『そうとう怖いよ』と言われたら、見る人は多いから。『これくらいの予算でできない?』と軽く言われて、『簡単に言うよなあ!』と思ったことが多々あります(笑)。

だから3Dや4DXの話も、最初は興味がなくて、断っていたんです。ただ、いろいろプレゼンされているうちに、アナログ人間だからこそ、『こういう人がいてくれると、ありがたいんだよな』と思えてきて、『やってみようか』と。

実際にやってみると、大変ですけど、面白かったです。

例えば3Dは、僕が初めて撮ったとき、まだ日本に1台も3Dカメラが入ってきていなかったんですよ。だから35ミリのカメラを2つつなげて、即席3Dカメラを作って、工夫して撮りました。

4DXは、撮った映画を韓国の4DX社に送って、雨風や振動などの効果を付けてもらうんです。僕が発注をした時、たまたま韓国に行く機会があったので、4DX社に乗り込んで『もっとこうして、ああして』と細かく何度も注文をしていたら、その後、『注文は2回まで』というルールを4DX社が作っちゃった。世界中の映画会社に、『俺のせいでごめん』という気持ちでいっぱいです(笑)」

スペインで「俺の映画は嫌われている」。劇場を抜け出すと…

新作は、滝沢秀明を主演に迎えた『こどもつかい』。随所に童話や絵本的なエッセンスが盛り込まれ、ファンタジックなホラー映画となっている。

「もともと『MOE』を購読していたくらいだから、たぶん好きなんですよね、ファンタジックな世界が。そして、僕が年を取ってきたからでもあるんでしょうけど、今回は心情描写に力を入れて、ドラマをしっかり固めたいという気持ちもありました。

滝沢さんが演じる『こどもつかい』のモチーフは、ハーメルンの笛吹き男です。男が持っている笛をどこから出したら面白いかと考えて、お尻に付いている黒猫の尻尾を、変形させるというアイデアにしました。その尻尾が、笛にもなれば、長いロープにもなって、武器にもなる。そんなふうに、モノから発想して、脚本やお芝居に反映した部分もあります」

神出鬼没な子どもたちにゾッとするような瞬間って、現実でもあるじゃないですか。飛行機の座席に座ろうとしたら、腕にグニャッとした感触を感じて、見たら知らない子がいたとか。そういう一歩間違えると笑っちゃうようなことが、僕は好きなんです

ホラーというと『怖い』が大前提。しかし清水監督は、恐怖と笑いのはざまを狙っているところがあるという。その姿勢は、出世作『呪怨』からのものだ。

「怖いシーンでビクッとした後に、『あーびっくりした』と笑っちゃうことがあるじゃないですか。特にアメリカ人は、『うわっ!』と怖がった後に、大笑いするんですよ。あのリアクションの大きさは、作る側からするとうれしいんです。

映画祭でスペインに行ったら、スペイン人はもっとすごかったですね。スクリーンに向かって怒号を飛ばすわ、モノも飛ばすわ(笑)。『俺の映画は嫌われている』と思ったので、早めに劇場を出たんですよ。そうしたら外にも人が大勢いて、身の危険を感じました。

でも彼らは『おお、監督がいるぞ!』と大盛り上がり。本当は、スペインの人たちはみんな、喜んでくれていたんですよ。お祭り騒ぎで映画を楽しんでいただけ。

日本人は、空気を読んだり、周りの目を気にしたりするから、「ここで笑っちゃいけないかな」と自制したり、せっかく感動したのに、泣くのを我慢しちゃったりする。知らない人の名前が流れる英語のクレジットを最後まで見るのも、日本人ぐらいじゃないですか? アメリカの劇場だと、ラストシーンが終わる頃には「もう終わるか? もう終わるな。よっしゃ!」という感じで、みんな出て行きますから。

今回の『こどもつかい』も、面白いと思ったら、笑ってもらっていいんです。こっちは『びっくりさせたい』と思って、ニコニコしながらホラーを作っているので。お祭り状態でホラーを楽しんでもらえたらうれしいです」

日本人は、空気を読んだり、周りの目を気にしたりするから、「ここで笑っちゃいけないかな」と自制したり、せっかく感動したのに、泣くのを我慢しちゃったりする。知らない人の名前が流れる英語のクレジットを最後まで見るのも、日本人ぐらいじゃないですか? アメリカの劇場だと、ラストシーンが終わる頃には「もう終わるか? もう終わるな。よっしゃ!」という感じで、みんな出て行きますから
清水崇
 1972年生まれ、群馬県出身。シャイカー所属。大学で演劇を専攻し、ドラマや映画の助監督を経て、2001年『富江re・birth』で劇場映画デビュー。03年に『呪怨』『呪怨2』がヒット。04年にはUSリメーク版『The Grudge』(邦題『THE JUON/呪怨』)でハリウッド進出。日本人監督として初の全米興行成績1位を獲得した(実写映画)。以降、『ラビット・ホラー3D』(11年)、初の4DX限定映画『雨女』(16年)などを手がけ話題に。近作に『魔女の宅急便』(14年)などがある。

『こどもつかい』

子どもが突如失踪した3日後、怨(うら)まれていた大人が謎の死を遂げるという事件が連続発生。取材を始めた新人記者は、恋人が子どもに怨まれていると知り、奔走する。そんな2人の前に、謎の男「こどもつかい」が現れた。監督・清水崇 脚本・ブラジリィー・アン・山田、清水崇 出演・滝沢秀明、有岡大貴、門脇麦、西田尚美 6月17日(土)全国ロードショー

私のモノ語り「清水崇監督」
 前編 清水監督が米版『呪怨』で配ったカワイ怖い台本カバー
 後編 清水崇監督 ハリウッドで大事な個性、ユーモア、下ネタ

(ライター 泊貴洋、写真 藤本和史)