竜星涼 いつかは買いたい、数百万円の巨大本
2017年春、NHK連続テレビ小説「ひよっこ」とTBS日曜劇場「小さな巨人」という2つの高視聴率ドラマで好演を見せ、一躍脚光を浴びている竜星涼(りゅうせい・りょう)さん。6月10日には映画『22年目の告白-私が殺人犯です-』の公開も始まる。現在24歳、デジタル世代の竜星涼さんが熱く語ったのは、アナログの「雑誌」や「写真集」だった。
本や雑誌を見るのが好き
「僕は、雑誌が好きなんですよ。もともとファッションが好きなので、一番見るのはファッション誌。『VOGUE』や『Numero』は日本版だけでなく、海外版も見ますし、関連する写真家の写真集も買うことがあります。
アナログの本は、紙質で、インクの発色が違うところなどが面白い。本の匂いも好きです。あと、大きな判型の雑誌は、その大きさでちゃんと見る良さっていうのがあるんですよね。そういう臨場感は、デジタルな液晶の画面では伝わってこない。
それから僕は、ものを集めるのが好きなのかもしれません。撮られるのが仕事だし、撮る方も好きなんですけど、何より、完成した雑誌や本を見るのが好き。囲まれているとホッとするので、部屋にはいっぱいありすぎて、床が抜けるんじゃないかっていうぐらいになってます(笑)。
でもその雑誌が、仕事に役に立つこともけっこうあるんですよ。例えば取材で写真を撮られるときに、『こういう光のあて方をすると、きっとあの写真のような雰囲気になるんだろうな』と想像できる。『だったら、こういうポーズをしてみよう』と考えて工夫できる。
役者としての役作りにも生きています。演技の基本は、まねだと思うんです。モデルとする人や、ほかの人の芝居にインスピレーションを受けて、まねる。でもそこで、そのまままねるのではなく、『これとこれを重ねてみよう』というふうに、かけ算や足し算をすると、自分の個性になっていく。そこで、どれだけ自分が情報を持っているか。引き出しの多さが、演技の幅につながると思いますね。
だから時間があると、洋書がある本屋さんに行くことが多いです。ただ、僕は立ち読みが苦手なので、雑誌でもフォトアルバムでも、とりあえず『いいな』と思ったものは買う。ほとんど『ジャケ買い』です。でもそうやって買うと、『中身はそうでもなかったな』ということがあって。その点、カフェでコーヒーを飲みながら本を選べる蔦屋書店は、すごく良くて(笑)。よく行ってますね。
最近できたギンザシックスの蔦屋書店が、特に良かったんですよ。アート系の本も多いし、ビンテージ系の古本もある。松田聖子さんを篠山紀信さんが撮った表紙の雑誌とか、古本屋さんに行ってもなかなか見つからないような本が、普通に置いてあるので楽しい。
あと、手を広げて見なきゃいけないくらいの、大きな雑誌やフォトアルバムも置いてあるんですよ。それがもうすさまじい値段で、何百万円というレベル(笑)。なぜそんなに高いんだって思いますよね? 高いんですけど、『いいなあ、手に入れたいなあ』って思っちゃう(笑)。
俳優として上に行っても、あれは簡単には買えないはず。でも、ちょっとは考えられるくらいのレベルまで、早く行きたいなと思います(笑)」
「ナメられたくない」眉にこだわる
そんな竜星さんの最新作は、17年6月10日に公開される映画『22年目の告白-私が殺人犯です-』。演じたのは、正義感に溢れる、情熱的な若手刑事・春日部信司だ。藤原竜也さんとダブル主演をつとめる伊藤英明さんとの共演シーンも多い重要な役だ。
「この役は、オーディションに行ってまでもやりたいと思いました。観客の視点に一番近い存在だと思いましたし、春日部の無鉄砲な若さというか、まっすぐなエネルギーが好きだったんです。
そういうルーキー感みたいなものが目に宿るといいなと思って、監督の入江(悠)さんに衣装合わせのときに『マル暴(組織犯罪対策課)の若手でヤクザにナメられたくないという気持ちも強いと思うので、眉を剃ってもいいですか』と言ったんです。そしたら『あ、いいね』ということだったので、今までにないほど眉を剃って、細くして演じています。
伊藤英明さんからも、すごく学ぶものがありました。僕はそれまで、主役のときも、そうでないときも、『その役を全うすればいい』という感覚だったんです。でも伊藤さんは、自分の役だけでなく、作品全体がどうなるかをちゃんと考えていて、どうしたら周りのキャラクターが立つかも考えている。だからこそ、誰に対しても『ここはこうした方がいいんじゃないか』とすごく熱いんです。作品の真ん中に立つ人間の姿勢とか、気の配り方とか。その背中がとても勉強になりました」
竜星さんは俳優として活躍する一方、16年、17年と2年連続で「Yohji Yamamoto」のモデルとしてパリ・コレクションに出演するなど、活動の幅を広げている。
「もともと僕はYohji Yamamotoの服が好きだったし、演じるだけが自分の仕事だとも思ってなかったので、オーディションの話を聞いて受けに行ったんです。
そして去年の1月に初めてパリコレに出たんですけど、『この刺激を上回るものは、もうこの1年はないな』と思うくらい、大きな刺激を受けましたね。まだ1月なのに(笑)。出ることもそうだし、そこに行ったこと自体が、自分の生きる経験として、とてもプラスになったなと思います。
そういう挑戦が自分を成長させてくれるし、輝かせてくれる。ターニングポイントじゃないですけど、そういうものを自分から作っていくことは、とっても大事だなと思いました。受け身になっていたら、何も始まらない」
パリで買った印象的なものを尋ねると、「エンジェル」という答えが。オペラ座で買った、陶器でできた天使像だという。
「なんでエンジェルだったんですかね(笑)。まあ、キレイだったし、自分の感覚ですよ。あと僕、造形美がすごく好きなんですよね。
スカウトされてこの仕事を始める前、実はパティシエになろうと思っていたんです。それはケーキづくりが好きだからではなく、ケーキを食べるのが好きだからでもなく。ケーキのあの、作られた造形の美しさが好きだったんです。
小学生のときから、そういうところがある。だから本をジャケ買いしちゃうんですよね(笑)。で、中身も見ずに買って、失敗してきた。
靴もそうですよ。『この飾りが好きなんだけど、飾りが足に当たって痛い』みたいなことがよくありますね(笑)。かといって、飾りがない靴にしようとは思わないんですよ。形が好きだから、どうにかして履こうとする(笑)」
1993年生まれ、東京都出身。2010年、ドラマ「素直になれなくて」でデビュー。13年、「獣電戦隊キョウリュウジャー」でドラマ初主演を果たす。その後の主なドラマに「GTO」(14年/CX)、「ひよっこ」(17年/NHK)、「小さな巨人」(17年/TBS)。映画に「orange-オレンジ-」(15年)、「シマウマ」(16年)、「泣き虫ピエロの結婚式」(16年)など。10月28日には「先生!」が公開される。モデルとして16年、17年と2年連続パリコレの舞台に立った。
『22年目の告白-私が殺人犯です-』
時効を迎えた連続殺人事件の犯人だと名乗る男・曾根崎が突如姿をあらわし、殺人の告白本「私が殺人犯です。」を出版。被害者遺族への公開謝罪、サイン会、ニュース番組への生出演と、世間を挑発していく。それは、日本中を巻き込んだ新たな事件の幕開けにすぎなかった……。監督・入江悠 脚本・平田研也 入江悠 出演・藤原竜也、伊藤英明、夏帆、野村周平、石橋杏奈、竜星涼、早乙女太一、仲村トオル 6月10日(土)全国ロードショー
(文 泊貴洋、写真 吉村永)
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